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嫌です。にしおりをはさみました!
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嫌です。
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「ごごごごごごめんなさいっ」
ありえない自分の行動があまりにも恥ずかしすぎて飛び上がるように壱也さんから離れた。
いや、離れたつもりだった。
でも実際は逆に壱也さんに密着している状態になってて。
大きな手に頭を抱き込まれて、頬は壱也さんの胸にぴったりとくっついていた。
え。何この状態。
思考は完全にストップしてしまった。
しかし、更に追い打ちをかけるように片方の手を背中に回されて、隙間がないほどにくっついた状態に意識は飛んでしまう寸前。
もはや息が止まってしまいそうだ。
狂ったように暴れ出す自分の心臓がうるさくて、でも耳に直に届く壱也さんの心音がやけに響いてて。
いつまでそうしていたのか。
10秒だったかもしれないし、
1分だったかもしれないし、
10分だったのかもしれない。
もう時間もわからないくらい俺の頭はほわほわと宙を浮いてるような状態で、全く働いてなくて。
そんな俺を知らないだろう壱也さんが大きく溜め息を吐いた。
それから、ようやく彼が口を開いた。
「お前…まじであんま可愛いことすんなよ」
「え?」
何のことかわからずに、首を傾げると壱也さんはまた溜め息を吐いた。
「ほんとはもう、お前に近づくのやめようと思ったんだ」
「え」
思ってもなかった壱也さんの言葉に、ほわほわしてた思考が一気に地に落とされる。
俺の目は大きく見開かれて、身体が強張った。
「今日のこと、原因は俺だ。俺が近付けば妙なヤツらにお前が標的にされることくらいわかってたのに」
「・・・・・」
「お前があいつらに連れてかれたって聞いた時、まじで自分が馬鹿だと思ったよ」
「・・・・」
「お前を巻き込みたくなかった」
ほんとに悪かったって言った壱也さんが力なく笑って、俺を抱きしめる腕に少し力が入った。
壱也さんがそんなこと考えてたとか、俺全然知らなかった。
でも、何て返していいのかわからなくて全然言葉が出てこない。
いやいやと緩く首を横に振ることしかできなくて。
でも、壱也さんはひどいんだ。
もう聞きたくないって思ってるのに、この人はまた口を開く。
「それに、お前が怯えてるのわかったら、余計にな」
きっとあの時のことだとすぐにわかった。
きっと助けてもらった後の、あの時。
「お前が怖がってんのわかってて近くにはいられない」
「い、嫌ですっ!!」
思わず叫んでた。
壱也さんが驚いているのは、見なくてもわかった。
壱也さんの腕から逃げて、ぐっと壱也さんの肩を押してくっついてた身体を離すと滲んだ視界の中、思ってたとおり驚いた表情をしている壱也さんがいた。
「おっ俺いやです!た、たしかに喧嘩の後、ちょっと怖いって思いました、け、喧嘩してる時といつもの壱也さんが、違う人みたいで、でもっ、でもやっぱり壱也さんは優しい人でっ、頭撫でてくれるからっ壱也さんは壱也さんだからっ」
頬をぬるい液体が伝っている。
ぼたぼたと落ちていくそれを手で拭っても拭っても次から次に溢れて、また落ちていく。
自分が何を言ってるのかもわからなくなった。
でももう止まらなくて、
「ぅ、お、おれ、壱也さんがすきなんです、近くにいたいです・・・」
初めて好きになった人と離れたくなくて、嫌だから泣くとか子どもみたいなことしたくないのに。
情けなく泣いてる自分が本当に嫌になった。
嗚咽を漏らしながら止まらない涙を拭った。
当然壱也さんの顔は見れなかった。
どんな顔をしているのか、どう思っているのか。
怖くて仕方がなかった。
でも、ふっと壱也さんが息を漏らした。
それとほぼ同時に頭に乗せられる手。
恐る恐る顔を上げると、優しく口元を崩した壱也さんが目に映った。
くしゃりと髪が乱される。
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