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腐れ縁。にしおりをはさみました!
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腐れ縁。
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さてさて。
銀司さんの一言で昼食にすることになったんだけれども。
銀司さんに腹減ったとせがまれたフジさんがはいはいと溜め息をついている傍ら、なぜか席を立つマコト。
どうしたのかと目で追っていたら当たり前のようにマコトはカウンター内に入って、フジさんと一緒に仕切りの奥(厨房だと思われる)に入っていった。
もしかして手伝うのかなって思って俺も行こうとしたけど壱也さんに止められて、大人しく待つことになったんだけど。
じーっと厨房があるであろう仕切りを見ていたら、いつの間にか近くに来ていた銀司さんが壱也さんを挟んでのぞき込んできた。
「リョウチン気になるの?」
「え、だって手伝わなくていいんですか?」
だって俺たちしかいないのにお客様状態とかちょっと申し訳ない。
初めて来たお店の厨房に入るのも気が引けるのだけれども、家で培われたお手伝い精神のせいで落ち着かないのだ。
何となくソワソワしていたら、銀司さんにふふっと笑われた。
「大丈夫だって。手伝いに行ったら逆に邪魔って怒られるよ」
「えっ」
「俺、前に怒られたことあるもん」
「え、そうなんですか?」
「うんうん。だから大人しく待ってようねー」
小さい子どもに言うように銀司さんはニコニコと笑って言った。
子ども扱いされてる感は否めないが、あえてそこは触れずに頷いた。
「あ、マサも呼ぼうっと」
やっぱり銀司さんは自由人。
むくれる俺を放って銀司さんはケータイを取り出して有言実行とばかりに早速電話をかけている。
ふと横からの視線に気付いて壱也さんを見るとバッチリと目が合った。
じっと見つめられてちょっと恥ずかしい。
どうしたんだろうと小首を傾げると壱也さんが口を開いた。
「無理してねえか?」
「え?」
「さっき熱っぽかったから」
ああ、成る程。見られていたのは心配してくれていたからなんだ。
そう思ったら自然と頬が緩んでしまう。
さっきのは恥ずかしくて顔が熱くなってただけなのに。
「大丈夫ですよ」
「ほんとかよ」
「ほんとですよ。ほら」
まだ心配そうな顔をしている壱也さんの手をそっと握って自分の額にくっつけた。
壱也さんは俺の行動にびっくりしたみたいだけど、熱がないとわかったのかすぐに表情を柔らかく崩した。
「大丈夫ならいい」
「はい」
俺のおでこから手を離した壱也さんは髪を梳くように俺の頭を撫でる。
それが気持ちよくてうっとりとされるがままになっていたら、突き刺さるような視線を感じた。
ちょっとだけ壱也さんから視線をずらすと、その視線の主と目が合った。
盛大に肩が跳ね上がったのは言うまでもないでしょう。
「またイチャついてる…」
「銀司、」
耳元から聞こえてきた低い声にさすがの壱也さんもちょっと驚いていた。
そりゃそうだ。真横だもん。
「もう俺の存在忘れんなよ~」
恨めしそうに俺たちを見てくる銀司さんに俺も壱也さんも苦笑が漏れるばかりだった。
それからしばらく経って厨房からいい匂いがしてきた。
思ってたよりお腹が空いていたのかその匂いに反応して、お腹がぐーぐーと鳴ってしまうもんだから壱也さんと銀司さんに笑われてしまった。
あんまり笑う二人に誰だってお腹はなるでしょうと顔を真っ赤にして反論していれば、カランと入店を知らせる鐘の音が響いた。
「よーっす」
「あ、マサ早かったじゃん」
振り返ると銀司さんが呼び出した雅宗さんが入ってきた。
と、もう一人。
見慣れない銀髪の人がマサさんに続いて入ってきた。
「馨まで連れて来たの?」
「さっきそこで会ったんだよ」
「んだよ。来ちゃ悪りいかよ」
「別にそんなこと言ってませんー」
べーっと銀司さんが子どもみたいに舌を突き出してる。
どうやら銀司さんたちの知り合いらしい。
どうもこの人たちの周りには非凡人が多いらしく、その銀髪の人もモデル並みにイケメンだ。
こんなに美形が揃っているとだんだんと悲しくなってくるのはなぜだろう…
見慣れない人に目がいくのは自然なことで無意識にその人を見ていたら、不意に目が合ってしまい思わず竦み上がった。
射るような視線。
今まで感じたことのない威圧感に眼光だけで人を殺せるってこういうことだと何故か直感した。
でも、それは一瞬だけで俺の頭上からかけられる声にその人の視線もすぐにそっちに移った。
「久しぶりだな、馨」
「お前が最近顔出さないからだろうが」
「確かにそうかもな」
壱也さんも銀髪の人と知り合いらしい。
その銀髪の人がこっちに来たかと思ったら何故か俺の隣に腰を降ろした。
俺を挟んで座る二人の会話が頭上で飛び交っているけど、さっきの眼光の恐怖とちょっと気まずいのでビクビクとしていたら、何故か会話の内容が俺へと向いた。
「こいつが噂のリョウタか」
さっきみたいな鋭さはないものの、じっと見てくるその人に、目を逸らすことも出来なくて引きつったような笑みを浮かべていると不意に視界が遮られる。
耳元で聞こえる声に思わず肩が揺れた。
「あんまジロジロ見んな」
「ああ?別にいいだろ減るもんじゃねえし」
「減る。つーかお前に見せるのもったいねえ」
「…お前がデレるとかねえわ」
銀髪の人の呆れたような声が聞こえる。
ついでに言うと俺は恥ずかしくて顔が熱いです。
視界を遮っていたのは壱也さんの手で、おずおずと掴むと悪いって言われて手が離れていった。
「稜太、こいつは馨。まあ、腐れ縁みたいなもんだ」
「違いねえな」
「あ、森川稜太と言います」
とりあえず頭を下げると馨さんはちょっと笑って、よろしくと言ってくれた。
意外にもその表情が柔らかくて、笑うと雰囲気が少しだけ壱也さんに似てるなって思った。
「つか、悪かったな。さっき」
「え?」
「視線感じると睨んじまうんだよ。反射だから気にすんなよ」
「あ、はい」
意外といい人なのかもしれない。
しかし、なるべく馨さんを見るのはやめようと心に誓ったのでした。
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