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お誘い。にしおりをはさみました!
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お誘い。
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『稜太』
優しく俺の名前を紡ぐ唇に、慈しむように細められる目元。
ギュって抱きしめられて、あったかくて、それだけで俺の心は幸せでいっぱいになる。
『好き』
無意識に呟いていた。
壱也さんは嬉しそうに笑って、ゆっくりと近づいてくるその整った顔に俺は自然と瞼を閉じていた。
「・・・・あれ?」
ぼやける視界に広がるオレンジ色に染まった天井。
パチリと瞬きをひとつ。
ぼーっとする頭で天井を見上げていれば、だんだんと思考がクリアになってくる。
あれ?俺いま何してたっけ?
壱也さんと…
って思った瞬間、ありえないくらいの羞恥が襲ってきた。
いつの間にか眠っていたらしい俺は壱也さんとキキキキキスっ…しようとしている夢を見ていたのだ。
自分の想像というか、妄想というか、素晴らしすぎて泣けてくる。
誰に隠すわけでもないけど、真っ赤になった顔を覆い隠すように両手を顔に押し付けた。
ひとしきり恥ずかしさに悶絶したあと、ふとここが見知らぬ部屋だと気付いた。
まったくもって見覚えのない部屋だった。
ベッドの上から一体どこなんだろうと視線を巡らせているとふわりと鼻を掠めるよく知った香りに再び顔に熱が集まった。
…壱也さんの匂いだ
体に掛けてある布団も、枕も、この部屋全部が壱也さんの匂いがする。
自分がどこにいるのかわかって、でも起き上がるのがもったいないと思ってしまった俺は肌触りのいい掛け布団にくるまった。
壱也さんの匂いに包まれてるせいか、壱也さんに抱きしめられてるような錯覚に、だから変な夢を見たんだと妙に納得してしまう。
思わずにやける口元をそのままにイモムシみたいな格好のまま部屋を見渡して、綺麗に片付けられている部屋に壱也さんらしいなって小さな笑みが零れた。
しかし部屋の主が見当たらない。
部屋の外にいるのかな。
名残惜しいと思いながらも壱也さんを見つけるべく、そっとベッドから抜け出した。
ゆっくりと戸を開けば、見覚えのある部屋にやっぱりって変に安心している自分がいた。
寝室から出て目に入った金髪にほっと胸を撫で下ろしていると、俺に気付いた壱也さんが振り返った。
「おはよう」
「お、おはようございます」
何だかこのやりとりが恥ずかしい。
ちょっと俯きがちに視線を泳がせる。
「稜太」
ソファに座る壱也さんを見ると手招きをされて、呼ばれるがまま壱也さんの近くに行けば、隣に座るように促された。
よしよしと俺の頭を撫でて入れ替わるように壱也さんはキッチンへと向かった。
どうしたのかとじっとその背中を見つめていればすぐに戻ってきてくれた。
はいってよく冷えた麦茶を手渡されて、ほんとにどこまでも優しい人だと改めて思った。
「ありがとうございます」
「ん。よく寝てたな」
「ぅ、すいません」
よく寝過ぎていた自覚があるだけに申し訳なさ過ぎて謝れば、何で謝るんだって頭を撫でられた。
それが気持ちよくてされるがままになっていれば、優しく細められる目に頬が熱くなった。
「…壱也さん」
「ん?」
「俺、途中から覚えてないんですが」
そうなのだ。
ご飯を食べ終わってみんなでダラダラしてたところまでは覚えているんだけど。
途中からぱったりと覚えていない。
や、寝ちゃったからなんだけど。
悶々としている俺に壱也さんがくすくすと微笑った。
「起こしても起きなかったもんな」
その時の俺を思い出しているのか壱也さんが肩を揺らした。
どんだけ爆睡してたんだと昼の自分を叩き起こしてやりたくなった。
「送ってもよかったけど俺んちのほうが近かったから」
お持ち帰りしたって。
さらっと言われて顔が真っ赤に染まったのが自分でわかった。
ていうか、俺どうやってここまで運ばれたんだろ。
おんぶとか?まさか世に言うお姫様抱っこじゃないよね。
自分で想像して更に恥ずかしくなって壱也さんの顔が見れなくなってしまった。
一人あわあわとしていたらソファがゆっくりと沈んで壱也さんが動いたのがわかる。
少し顔を上げれば近くなった距離に心臓が跳ね上がった。
さっき見た夢が脳裏に浮かんだ。
だけど想像とは違う場所にキスは落とされて。
優しくおでこに唇が触れて、それはすぐに離れていく。
ちょっとだけ残念に思う自分に気づかないふりをするので精一杯な俺に壱也さんは口元を崩した。
「稜太」
「はっはいっ!」
「明日バイト休みだったよな」
「え、はい」
首を傾げてまだ至近距離にある壱也さんの顔を見上げれば、壱也さんの口角が少し釣り上げられた。
「泊まって行けよ」
「………えっ!?」
壱也さんのお誘いに更に赤面したのは言うまでもない。
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