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おでこにちゅう。にしおりをはさみました!
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おでこにちゅう。
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二人で並んでソファに座って、肩がくっつきそうな距離で一緒にテレビを観ていた。
時折壱也さんが俺の髪を撫でてきてなんだかくすぐったい。
少し遅くなった夕飯は壱也さんが作ってくれたんだけど、これまた美味しくてちょっと感動してしまったり。
まったりとした時間に最初に感じていた緊張感もいつの間にか消えていて、不思議なくらい心地良いこの空間に頬は緩みっぱなしだった。
ふと壱也さんの横顔を見ながらこうやって好きな人の生活に入り込んでいるなんてほんとに幸せなことだって思った。
じっと壱也さんを見ていたら俺の視線に気付いた壱也さんがこっちを見た。
「どうした?」
相変わらず優しいその表情に自然と頬が綻んだ。
「なんか、嬉しくて」
少し照れながらそう言うと、壱也さんはふっと息を吐いて口元を崩した。
大きい手のひらで頭を引き寄せられてぐっと縮まる距離に心臓が高鳴り始める。
ゆっくりと降りてくる唇にそっと目を閉じると、またもやおでこに口付けられた。
「あんまかわいいこと言うなって」
思ったままに言っただけなのに。
頬を赤くした俺の顔を見てまた壱也さんは笑って今度は髪にキスを落とした。
更に赤くなる俺を満足そうに見ると壱也さんは風呂を溜めてくると言ってリビングから出て行ってしまった。
パタンと閉じられた扉にちょっとだけ残念なような安心したようなよくわからない溜め息をついていた。
壱也さんが触れたところが熱くて仕方ない。
壱也さんが戻ってくるまでにこの熱は引いてくれるだろうか。
そうやって俺が火照った頬をパタパタと手で仰いでいる一方で、扉の向こう側で壱也さんがやばいなって溜め息とも取れない声を漏らしていることなんて気づくはずもなかった。
湯船に張られたお湯に浸かりつつ、程よい温度にほうっと息を吐き出した。
お風呂の準備ができたのか戻ってきた壱也さんに風呂に入るように促されて、先に入らせてもらってるわけなんだけど。
準備されていたバスタオルと着替えにやっぱりマメな人だと頬が緩んだ。
濡れて額にはりつく前髪を指で弄りながら壱也さんにキスされたことを思い出した。
途端に熱くなる顔にちょっとだけ恥ずかしくなる。
壱也さんが触れたところがまた熱くなってきた気がして、誤魔化すように少しだけ顔を沈めてぶくぶくと息を吐き出した。
実はちょっとだけ、おでこにキスされたことが肩透かしをくらったみたいに感じていて。
もちろん不満なんてない。
でも、ほんとは普通にキスしてほしかった。
せっかく、こっ恋人同士になれたんだし。
でもだからと言ってしてほしいなんて言えるわけがない。
誰かと付き合うこと自体が初めてで、どうしていいのかなんて経験のない俺にはわからない。
何だかこんなこと考えてる自分が欲求不満みたいで嫌になってくる。
「はあ」
盛大な溜め息が出た。
でもせっかくのお泊りなんだ。
変なこと考えてる場合じゃない。
己の邪念を振り払うように、勢い良く湯船から立ち上がった。
濡れた髪もそのままに部屋へと戻れば俺と入れ替わりに壱也さんは風呂場へと向かった。
何だかそわそわして落ち着かない。
それはたぶん、今着ている服のせいだ。
準備してあった着替えは言わずとも壱也さんのもので、当たり前だけど壱也さんの匂いがする。
やっぱり壱也さんが近くにいるみたいな感覚にドキドキとずっと心臓が脈打っている。
それに壱也さんとは体格からして違うから貸してもらった服はかなり大きかった。
半袖のTシャツのはずなのに最早半袖とは言えない状態で、さすがに肩は出てしまうことはないけど鎖骨とか全開でちょっと首の周りがスーッとする。
しかもズボンなんかハーパンのはずなのに膝下どころじゃない。
俺の足が短いのか壱也さんが長過ぎるのか。
いや、ここは後者だ。
だって俺日本人だもん。標準だもん。
ちょっとだけ悲しくなったのは内緒。
そんな悲しい現実から逃げるように、夕方の母さんとのメールのやり取り以来見ていなかったケータイを手に取った。
見ればLINEが3件入っている。
開くとそれはどれもマコトからだった。
『大丈夫かー?』
『本山さんと仲良くな♡』
『何かあったらちゃんと教えろよ』
思わず吹き出してしまった。
口に何も入れてなくてほんとに良かったと心から思う。
大丈夫か、は壱也さんと買い物に行ってたぐらいの時間に来てて、後の2件はついさっきだった。
しかも最後のはニヤリとした絵文字付き。
マコトのヤツ絶対面白がってる。
そう確信した俺はスタンプを連打してやろう。
そう決意したのだった。
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