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薬 (拓斗)にしおりをはさみました!
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薬 (拓斗)
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部屋を飛び出してすぐに食堂へ向かった。
この寮は食事がつかないから共有のキッチンがあって、そこにはもちろんテーブルもあるし、大きいテレビもあるから、ご飯を食べる時じゃなくてもみんなでよく集まっていた。
まだ寮の全員としゃべったってわけじゃないから、知らない人もいるけど、それでも誰かは食堂にいるんじゃないかって思ったんだ。
思った通り、食堂には何人かの学生が集まっていた。
「誰か、解熱剤持ってないか!?」
やっぱり全然関わったことのない人も何人かいた。だけどそんなの構わずドアを開けた瞬間叫んでいた。
あんな苦しそうな薫は昔だって見たことなくて、心配でたまらない。
「おー、保坂!俺持ってる!」
「山木…!後で金払うからさ、それくれないか?同室のやつがすげぇ苦しそうで…」
「まじか、俺冷えピタ持ってるし、取ってくるよー!」
「っ、ありがとう、えっと…」
「三浦咲哉。よろしくー!」
「あ、俺は保坂拓斗。よろしく…」
授業が一緒で知り合った山木と、三浦咲哉と名乗った男が部屋の方へ走っていく。
自己紹介なんてしてる場合じゃないなんて思っていたけど、薬を持っている人がいたことへの安堵から、ふっと息を漏らした。
2人はすぐに戻ってきて、薬と冷えピタ以外にも、ペットボトルの飲み物を持ってきてくれた。
「こんだけあれば大丈夫っしょ。保坂の同室って誰だっけ?」
「城田薫。金髪のやつだよ。これ、まじでありがとう。今度買い物行くとき買って返すから」
「あー、なんかすっげきれいな人か!あ、薬は保坂が返したければ返してくれればいいやっ」
笑いながら言う山木に焦っていた心が落ち着いていくのを感じる。
まだ薫が回復したわけではないけど、焦ったって何も始まらないんだと、山木の明るい笑顔にそう思わされた。
「ほら、早く行ってやれよ~」
「おう、まじでありがとな!」
2人にお礼を言って、俺は小走りで部屋まで向かった。
部屋を出て行く時、薫は眠ったみたいだったけど、もし目が覚めていたら、また痛みに苦しんでいるかもしれない。
そう思うと、走らずにはいられなかった。
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