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たまごのケージにしおりをはさみました!
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たまごのケージ
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慌てて犬舎の中に入ると、ビーグルが大声で吠えている。
その反対側にあるたまごのケージは扉が開いていて、中はもぬけのからだ。
さっと血の気が引いていく。校舎のドア自体は全てカードキーになっている学生証がなければ開かないから、まさか外に出てしまったということはないだろう。
だけど、さっき拓斗とここへ来たときに、俺は絶対に鍵を閉めて、チェック表に名前を記入したのに。
「なんなのよ、城田くん…」
「え…?」
怒りの籠ったような声が、後ろから聞こえる。振り向くと、横井が思い切り俺を睨み付けていた。
「また城田くんじゃん!道具だっていつも無くすし、今度は犬まで!なんなのよ!」
理不尽だと思う。俺には道具の時もたまごの時も、ちゃんと全てしまって、鍵をかけて、それからチェックをした記憶がはっきりとあるんだから。
でも俺がチェックをした時だけ道具がなくなるのも事実で、周りから見たら俺がちゃんとやっていないように見えてしまうこともわかる。
拓斗…、拓斗も、俺のこと、そう思ってる…?
ちゃんとやってない、適当な人だって、思われてる?
「保坂くんに迷惑かけないでよ!!だからあの時私が組もうって言ったのにっ!!」
横井がわめきちらすのを、俺は黙って聞いていた。いや、ほとんどは右から左へ流れていたが。
「うるせぇ!今はそんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!」
「っ!!」
佐倉まで一緒になってわめき始めた時、どうしていいかわからずにいる山木と三浦とは別に、拓斗が思い切り怒鳴った。
「薫、捜しに行くぞ!あとの4人は二手に分かれてくれ!」
「お、おう!」
拓斗の呼びかけと山木の返事で、4人は慌てて犬舎を出て行く。だけど、俺は動けずにいた。
「拓斗……俺、俺はちゃんと閉めたんだ…っ!俺は」
「薫、わかってるから、今はたまごを捜しに行こう。この暗い中じゃ、きっと怯えてる」
「…っ、うん……」
拓斗が俺のことをどう思っているのか、焦った表情からは読み取れない。
とにかくまずはたまごが優先だと、俺も立ち上がって犬舎を出ようとするが、拓斗が立ち止まっていることに気が付いた。
「拓斗…?」
「ああ、ごめん、行こう」
声をかけるとすぐにこっちへ来たが、俺は確かに拓斗が見ていたのは、たまごのケージの扉だと思った。
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