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不安にしおりをはさみました!
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不安
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犬舎へ戻りたまごをケージに入れたものの、鍵が見当たらない。
ケージと扉の両方から出た穴のあいた部分に南京錠を掛け、数字を設定して閉めるタイプのものを付けていたはずだった。
「ね、ねぇ……」
これじゃあケージに戻した意味がないと、どうしようか考えていると、佐倉が声をかけてきた。
「あ、あのこれ、私いつも予備持ってるから、使っていいよ…」
横井の発言に乗って俺のことをいろいろと言ったからなのか、遠慮がちにそっと南京錠を差し出してくる。
2人の世話にはなりたくないのが本音だったけど、それ以外に今のところ方法はないため、それを受け取る。
「さんきゅ」
顔を上げると、わずかに笑った佐倉とは別に、ものすごく怒ったような顔をしている横井が目に入った。
部屋に戻ると拓斗の後にシャワーを浴びて、ベッドの方へ行った。
拓斗に手招きをされて、まだ頭の中がぐるぐるとしたままの俺は、甘えたくなって拓斗の胸に抱き着く。
拓斗は無言のまま俺を抱き寄せベッドに行き、一緒にふとんの中へもぐりこんだ。
胸に抱き着いたままの俺の背中を優しく撫でてくれて、だけど無言のままの拓斗に俺は不安になる。
俺に呆れただろうか、俺のことを好きだという気持ちは薄れてしまっただろうか。
拓斗は俺と同じで本当に犬が大好きだから、たまごが危険にさらされたことを、怒っているかもしれない。
結局その日はキスも何もせず、そのまま眠ってしまった。
次の日の授業は、俺が道具を片づける日だった。
「先生、お願いがあるんですけど……」
俺が片づけをしている間、拓斗は先生のところに行ってなにやら話をしている。
真剣な顔して先生が頷いていたから、きっと頼み事を受け入れてもらえたんだろう。
授業の合間も、放課後も、夕飯を食べている時も、俺はたまごの事件のことや、また道具がなくなるんだろうかという不安でいっぱいで、拓斗とあまりしゃべることはなかった。
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