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犯人にしおりをはさみました!
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犯人
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「あのさぁ、お前らは、犬が好きだからこの学校に入ったんだよな」
低くて静かな声。俺は今までに拓斗のこんな声を聞いたことがない。
「トリマーってさ、グルーミングも健康状態の観察も接客も、いろんなこと全て欠かせない仕事だろ。それになりたいお前らがなんでそれに必要な道具わざと紛失させたりできんの?」
鋭い視線が2人に向けられる。
佐倉は今度は拓斗の方を見ていたが、横井はやはり俯いたままだった。
「…謝ってなんとかなるものじゃないってわかってます。私は…本当に軽い気持ちだった…。あさみが保坂くんに近づければって……。でも、たまごちゃんのことは、あんなことするなんて……っ」
「なによ…」
「え……?」
泣きそうな声で話した佐倉に、この部屋に入って初めて横井が口を開く。
その声は少し震えていて、でも表情は、とてつもなく険しかった。
「全部私のせいにするの!?沙那だってやったくせに!!なんで私ばっかり」
「いい加減にしろ!!」
「っ!!」
バンッ!!
机に思い切り拳を叩き付け、激しい音と共に拓斗が立ち上がる。部屋の中は一気にしんと静まり返った。
俺は何もしゃべることができず、拓斗を見つめているだけだった。
「道具を無くすのも理解できねぇし許さねぇけど!お前らトリマーになりたいとか言ってるくせに犬に危害加えたってことわかってんのかよ!!犬に危害加えるやつがトリマーになれんのかよ!!」
2人は何も言わず、佐倉も俯いてしまった。
拓斗は心底軽蔑しているという目で2人を睨み付けていたが、俺は軽蔑の念よりも、ショックの方が大きすぎた。
俺を拓斗から離れさせるために、そんなことのためだけに、たまごはあそこまで怯えさせられたなんて。
その後、2人はこの学校の規則に基づき、動物に危害を加えたとして、横井は退学処分に、佐倉は停学処分となった。
「薫、おいで」
自室に戻って、いまだ浮かない顔をする俺に、拓斗が優しい声で名前を呼ぶ。
ソファに座る拓斗の隣に腰かけると、抱き寄せられた。
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