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18歳以上ですか?
今度は俺のことだけにしおりをはさみました!
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今度は俺のことだけ
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頬を撫でられるとくすぐったくて、でも、拓斗の温もりを感じて、安心する。
拓斗の肩にもたれると、抱きしめてくれた腕が心地よい。
「この前は、あんまり構ってあげなくてごめんね」
「え…?」
2人きり、久しぶりに寄り添って、今は頭がはっきりとしている。
「たまごがいなくなった日、あの時ケージのそばに壊れた南京錠が落ちてたんだ」
「えっ…!」
あの時拓斗が立ち止まっていた理由が、やっとわかった。
拓斗は俺の目を見つめて頬を撫でたあと、静かに話し始めた。
ずっと横井を疑っていたこと。
たまごがいなくなった日、カードキーがないと出入りできない犬舎からどうやってたまごが抜けだしたのか。
南京錠がペンチのようなもので切断されていたことからも、誰か人間が故意にやったことは明白だったということ。
それを最初に見つけたのも、たまごを最初に見つけたのも横井と佐倉だったことからの怪しさ。
先生には、生徒が道具を片づけ出て行くまで残って、道具が全部そろっているかどうか確認をしてほしいと頼んだそうだ。
たまごの件を話して、2人に疑いがあることも話したらしい。
そしてもしそろっていたら、教室から出てしばらくの間、陰から様子を見てほしいと。
そこで先生は横井が部屋に入るのを確認し、犯人が完全にわかったということだ。
「拓斗…俺のこと、呆れてたんじゃなかったの…?」
「まさか。俺は最初から薫がミスしたなんて思ってなかったよ」
ふわりと微笑まれて、俺は本当に幸せ者だなって思った。
だって、最初からそんなふうに思ってくれていて、困惑している俺の代わりに犯人も捜してくれた。
それに、たまごに、動物に対してもあんなに優しくて……。
「…佐倉も横井がいなければ、きっとそんなに悪いやつじゃないんだろうな……」
「…そうだな。横井は最後まで反省してなかったし」
「………」
正直佐倉に対しても、やっぱり怒りよりショックの方が大きい。
佐倉だって、俺たちと同じように犬が好きなはずなのに、たまごにあんなことを……。
「なぁ、もう終わったから、今度は俺のことだけ考えて」
「へ?あ………」
拓斗の手が、俺の腰に添えられる。ずっと密着していたのに、急にドキドキして、頬が熱くなった。
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