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名前も知らない後輩にしおりをはさみました!
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名前も知らない後輩
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俺は毎日、あの静かで暗い廊下で食事を済ませていた。
つまらない。つまらない。つまらない。
うるさい場所は苦手だ。
教室にいれば女子が話しかけてくる。
別に嫌いじゃないよ。ただ、気を使うのが嫌なだけだ。
ある日、今まで人がいたことがないあの廊下に人がいた。
茶髪で前髪をピンでとめている、その人は名前は教えてくれなかったが、二年生の後輩ってことはわかった。
その後輩とはよく気が合う。
話してみるとただただ楽しかった。
こんなにも楽しく人と話したのは久しぶりのことだった。
「あれ、いない…」
その日はその後輩の姿がなかった。
「まぁ、約束をしているってことではないし、こんな日もあるよな。うんうん」
そんな独り言をいいながら椅子に座る。
隣が空いている状態は久しぶりだ。
その日は一人でもそもそコンビニ弁当を食べた。
だけれど、その日からだ。
あの後輩は来なくなった。学校で唯一といってもいい楽しみがなくなったわけで、少し淋しかった。
「別に怒ってはいないけどさー、急に来なくなるとさ気になるじゃん?」
これももちろん独り言。
二年生の教室まで行っちゃうとストーカーみたいになるよな…。
んーーーでもなぁ、気になる…。
そんなことを考えて、その日のお昼休みを終えた。
結局教室に行くのはやめて、それからもその廊下で彼を待つことにした。
来ることはなかったけれど。
その日はいい天気だった。
お昼休みの前の授業は移動教室だった。目的の教室に行くため、俺は同じクラスのみんなが通る廊下とは違うところを歩いていた。
そこは二年生の教室の廊下。
実を言うと、あの後輩に会えたらいいなぁー、とか思っていた。
二年生の教室の廊下を歩いていると視線を感じる。
「あれ、白織良佐先輩じゃない?」
「うそ、私初めて見た」
そんな声が聞こえてくる。そんなことはどうでもよかった。あの後輩を見つけて、なぜ来なくなったのか理由を聞きたい。
すると、前の方から三人組の男子が楽しそうに話しながら歩いてくる。
その三人組の真ん中にあの後輩がいた。
「あーー見つけたっ!」
思わず声が出てしまった。すると、その後輩も俺に気がついたらしい。
驚いた顔をしている。
三人組に近づいて行くと、その後輩と一緒にいる二人が
「おい、お前!あれ白織先輩だよな?!」
「白織先輩と知り合いだったのかよ?!」
と彼に聞いている。
けれど当の本人は俺の顔だけを見ている。完全に焦った顔だ。
別に俺は怒ってはいない。本当に理由だけを知りたいのだ。
「久しぶり」
俺が言うと、
「ど、どうも…」
と返した。
「そんな固くなるなよ。怒ってないからさ」
「は、はい…」
「ゴメンな?いきなり来ちゃって…」
「い、いえ!そんな…」
「…あのさ、なんで急に来なくなったんだ?」
「……あ、ああのっ!すみませんっ!!!」
そう言って彼は逃げてしまった。
「お、おい!待てよ!」
彼は振り返ることなく教室に入り、勢いよくドアを閉めた。
「あ、…あー…。俺嫌われたのかな…」
「あのー、良佐先輩、あいつに用事があったんですか?」
そう聞いたのは、あの後輩の友達。
あ、そういえば彼の名前を聞いてなかったな。
「あのさ、彼の名前なんていうの?」
「あいつですか?馬葉霧明っていうんです」
「へぇー…」
よかった。彼の名前がわかった。
それに正直ホッとした。初めて霧明に会ったとき、あんなところで弁当を食べていたから、友達がいないのかと思った。
ちゃんと友達はいるみたいだ。
「うん、教えてくれてありがとうな。さっきのことは気にしないでくれ」
霧明の友達にそう伝えた。
その日のお昼休みにも霧明は来なかった。
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