アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
二人分の焼きそば(5)にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
二人分の焼きそば(5)
-
「さっき龍広くんを待ってたとき、不安だったんだ。もしかしてボクに友達なんていなかったかもって。……頭おかしくなってたらどうしようって。そんなことないって分かってるのに……、すごく怖くて……」
「ひび、き……」
辛い目に遭わせた上にそんなことを考えさせてしまったなんて。
深く頭を下げようとしましたが、それよりも先に響の手が伸びてきて、龍広の腕をぎゅっと握りました。
「龍広くんは、ここにいるよね?」
痛いくらいに、強く。
「大丈夫だよね? いなくならないよね?」
「当たり前だ。幽霊じゃあるまいし」
それほどに心配なのでしょう。
当然です。やっとやっと叶った夢なのですから。
「ずっと、これからも友達でいてくれるよね?」
「離れる理由が無いからな」
「ううっ……」
その瞬間、安心したのでしょう。弾けたように泣き出しました。
今度は大声をあげて、激しく嗚咽をもらし、今までの悲しみを涙に変えていく。
苦しそうに震えている背中をさすりながら、龍広は目を閉じて思い出していました。
去年の今頃、自分が何を考えていたか。
高校受験にむけて厚いテキストを開き、勉強に励みながら、ふと考えてしまったこと。
――この先、きっと自分にはプールや花火や夏祭りへ行く友達はできない。きっと、一生。
清々としながらも、心のどこかではたまらない虚しさを感じていました。
自分の人生の面白味の無さに、失望するようでした。
誰にも打ち明けられない――そんな機会すら無い――小さな小さな感情。
そんな自分が今こうしていられるのは、きっと響のおかげです。
龍広が信じられなかった分、響が信じ続けてくれから――。
だから、二人は出会えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 51