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【蔵謙】どんな貴方も愛おしいにしおりをはさみました!
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【蔵謙】どんな貴方も愛おしい
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土曜日は部活も午前中に終わる
午前中だけの部活とはいえ、全国大会出場校の練習はかなりキツい
夏場の暑い時期だから、余計に体力を奪う
疲れた身体を、クーラーの効いた涼しい部屋で休ませる
ここは謙也の部屋。静かな時間が流れている
「謙也」
「んー。なんやー白石」
「疲れとるん?」
「そりゃなあ。さっきまで部活しとったんやから、疲れとるわ」
「なあ、謙也…疲れとるんはわかっとるんやけど、少しは構ってや…」
「アホか。疲れとるゆーたやろ」
「せやから、わかっとるゆーたやん。せやけど、謙也とイチャイチャしたいんやー。なぁ、ええやろ?」
「お前は小学生か」
「けんや?」
今、謙也が一緒にいるのは、白石蔵ノ介は、同じ中学校に通い、同じクラスで、同じテニス部に所属し、テニス部の部長をしている
そして、謙也の親友でもある
と…言えたならば、何の問題もないのだろうが、白石と謙也は恋人同士である
いうまでもないが、二人とも正真正銘の男である
「そんな犬みたいな目で見たってアカンでー。疲れすぎて、イチャイチャする気になれんっちゅー話や」
「謙也のケチ…ドアホ…」
「なんとでも言いやー。全くなんでこないな奴が、学校一モテるんやろ」
白石は完璧人間である。全国大会出場校の部長を務め、成績優秀。運動神経も万能。しかも、誰もが認めるイケメン
そりゃあ、モテないわけがないのだが、それは外面だけであって
実際はものすごく甘えん坊で、寂しがり屋。そして変態
まぁ、変態っていうのは、普段から、エクスタシー(ちなみに絶頂と書いて、エクスタシーらしい)と訳のわからない口癖を連呼しているため、大体の人が知っていると思うが、この甘えん坊と寂しがり屋な面は、恋人である謙也しか知らない
「謙也…可愛い恋人の頼み聞いてくれへんの…」
「はぁ?何が可愛い恋人や。自分でゆーてて、恥ずかしくないんか? つーか、誰が同い年の、しかも同性を可愛いと思うんや。アホか」
「でも、俺は謙也が可愛くて仕方ないで」
「ちょっとまじで、お前黙っとけや」
疲れて帰ってきたのに、白石のせいで余計に疲れてしまっている
あー。家に連れて来るんじゃなかった
ていうか、無理にでも来るのを阻止しておけばよかった
そんなことを考えていると、白石がうるうるした目で謙也を見つめていた…
あぁ…またその目か…本当に勘弁してくれ
「けんや?。お願いやからイチャイチャさせて…謙也不足で、このままじゃ部活がんばれへん…」
「アホか。部活と俺は関係ないやろ。とにかく、いーやーやー」
「…もうええもん!謙也なんか…謙也なんか大嫌いや!」
そういって、脚を腕に抱え込み、顔を伏せて泣き出した(つまり体育座り状態)
なんで泣くねん。お前は中3やろ…
親友としての、白石蔵ノ介は心から尊敬できる人間だったが、恋人である、白石蔵ノ介は尊敬なんてできたもんじゃない
ただの女々しい、めんどくさい奴だ
泣いてる白石を見ていたら、段々うざったくなってきた。このままにしておくと余計に疲れてしまう
「あぁ!もう!うざいわ!わかった! ほら、白石、こっちにきいや」
両手と両足を広げて、白石を呼ぶ
すると、泣いていた白石の顔が上がり、嬉しそうな顔で、謙也の元へやってきた
白石は広がっている、謙也の足の間に座り、謙也は後ろから、白石を両手で包み込んだ
「ホンマにお前は甘えん坊やな。とても中3には見えんわ」
「やって、謙也がだいすきすぎて、甘えたくやるんやもん。
この完璧な俺をこんな風にしたんは、謙也なんやからな! ちゃんと責任とってやー」
「 責任転嫁すな!」
「けんやくんこわいー」
「白石…一発殴ってもええか…」
「殴るて…このエクスタシーな顔に傷付いたら、どないすんねん!」
「エクスタシーな顔って…お前ホンマにナルシストやな…
もう、ついて行かれへん…海に突き落としたい…」
はぁ。と謙也は大きなため息をついた
本心でここまで大きなため息をついたのは、何回目だろうか
もちろん白石のことでしか、こんなため息はつかない
「さっきから謙也が虐めてくる…蔵りん傷付く…」
「何が蔵りんやねん!お前まじで死ねや」
「冗談でも死ねなんてゆーたらアカンで…しかも可愛い恋人に向かってなんて、以ての外やで…」
「あー。もうお前とおると気が狂うわ。ダメやもう疲れた、寝る」
「謙也寝るん? せやったら、蔵りん子守歌を歌ったるで!」
「要らん!」
そう言って、両手で包んでいた、白石から離れ、ベッドへと潜り込んだ
「けんや?蔵りんも一緒に寝る?」
「寝たかったら、床で寝てや。ベッドで二人で寝るとなると狭いわ」
「やや…けんやと一緒に寝たい…」
今にも泣きそうな声で、何度も名前を呼んでくる
このままじゃ寝れたものじゃない
「はあ…変なことせーへんならええで」
「おん!せーへんで!けんやと同じ布団に入れるだけで幸せやで!」
その声は本当に嬉しそうで、そんな嬉しいそうな恋人を見ていると、自分も幸せになってしまうのだから、不思議なものだ
どんなにうざくたって、ウンザリしたって、やっぱり白石のことがだいすきで、傍にいて欲しいと思うし、笑っていて欲しいとも思う
どんだけ白石に惚れとんねん。思わず苦笑してしまう
「ホンマ、甘えん坊やな」
優しく白石の頭の撫でて、小さくつぶやいた
すると、小さな寝息が聞こえた
「なんや、寝るの早いなぁ。まぁ、疲れとるやろな。ホンマにお疲れさん」
そう。いつも白石は誰よりもがんばっている。テニス部のために、自分を犠牲にすることだって、何度もあっただろう
勝ったモン勝ち。このスローガンの元に、白石は楽しむテニスを捨てた
基本に忠実なテニス。聖書と呼ばれるテニスをすることを選んだ
毎日、ノロマ以上の練習に励む。誰よりも先に学校へ行き、誰よりも遅く学校に残り、練習をする
それでも勉強も疎かにしない
尋常じゃない努力をしているのだろう
そんな白石が時々心配になる
白石は弱さを見せない。どんなに辛くたって、一人で抱え込んでしまう
本当は無理しているのではないか、今も苦しんでいるのではないか
「俺、白石のために何かできてるやろか…」
自分にできること…それは恋人が甘えてきたとき、思いっきり甘えさせてやることかもしれない
さっきも甘えてきたのに、冷たく突き返してしまった
今日だけじゃない。何度もあった
今更の後悔だということは、十分わかっているが、どうして甘えてきたときに、素直に甘えさせてやらなかったのだろう。という後悔が一気に謙也を襲う
もしかしたら、思いっきり甘えてくるときは、何が辛いことや苦しいことがあったときかもしれなかったのに
「堪忍な…最低な恋人で…」
小さくつぶやくと、
「け…んや…」
いきなり呼ばれた自分の名前に、一瞬驚いたが、寝言だったようだ
「なんや、驚かすなや…なんや、お前かわええ顔してるな…」
綺麗に整った顔は、誰もを魅了する。それはきっと女だけじゃなくて、男をも…
「黙ってれば、完璧なんなけどな…特に俺の前ではイケメンの要素なんてどこにもあらへんもんなぁ…まるで別人や」
でもそんな白石が愛おしい
自分しか知らない白石蔵ノ介が、たしかにここにいる
普段の白石蔵ノ介からは、想像できないような、甘えん坊で、寂しがりや屋な白石は自分だけのもの
起きたらたくさん甘えさせてやろう
そう決めて謙也も瞳を閉じた
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