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お兄さんにしおりをはさみました!
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お兄さん
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菅谷に借りた本はミステリー小説で、意外とおもしろかった。
読むのに没頭していると、俺のスマホが震える。
電話のようだ。
俺の膝でスヤスヤと眠る会長を確認し、あまり動かさないように頑張って机の上のスマホをとった。
画面に表示された名前を見ると、急いで電話に出る。
「もしもし宗吉です。」
『あ、夜遅くにすまない。私だが...』
「いえ、大丈夫です。起きてたんで。」
電話の彼は『そうか...』と言うと、すぐに話を始める。
『薫にかけても繋がらなくてね。
元気かい?』
「はい。今もぐっすり寝てますよ。」
俺がそう言うと、『だから繋がらなかったのだな』と苦笑する。
「起こしますか?」
と言うと、君が伝えておいてくれればいい、と返ってきた。
帰省の話だな、と思ったとき、案の定彼がこう言った。
『夏休みだけど、絶対に帰ってくるよう薫に言ってくれないか。
話したいことがあるから、と。』
やっぱりそうだ。
言われなくても薫は実家に帰るだろうに、去年も電話をしてきた。
でも今年は"絶対"と言っている。
大事なことなようだ。
「わかりました。伝えます。」
『頼むよ、宗吉くん。
久し振りに君の声が聞けて良かった。
君も...一緒に来るだろう?』
「たぶんそうなりますね。」
俺が苦笑してそう告げると、電話の向こうの彼は嬉しそうに『楽しみに待っているよ』と言った。
『それじゃあ、おやすみ、宗吉くん。』
「おやすみなさい。悟さん。」
そう言って電話を切った。
...話し方とか、ホント似てるよな。
会長に。
それもそのはず。
電話の相手は会長の実の兄・高平悟さんだったから。
高平家の三人兄弟の長男、悟さんは、八歳年上の社会人で、昔から俺のことも弟のように可愛がってくれた。
とても紳士的で、会長をそのまま大人にした感じの人だ。
まあ、変な趣味についてはまだ伏せておこう。
......悟さんが話したいこと、とは会長の進路のことだろうか。
深く詮索するつもりはないが、どちらにせよ俺も知ることになる。
俺は膝の上で無防備に寝ている会長を見下ろした。
.........そういえば会長と進路の話、しないよな。
どこの大学行きたい、とか何を学びたい、とか。
考えてる俺が早すぎるのだろうか。
まだ2年の5月半ば、だもんな。
そう思うと、俺は読書の続きをした。
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