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18歳以上ですか?
目覚めにしおりをはさみました!
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目覚め
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――おい。
変だな。増村の声が聞こえる。
――おい!
まただ。
「おい!」
「うわあっ!!」
強く握り締められた手の感覚と、君の声で目が覚めた。
「あ、増村、起きたんだ。」
寝ぼけた頭で、ここに俺がいる経緯を振り返れば思い出す記憶。増村はと言えば、俺の方を向いてベッドに寝転がっている。しかも、ちゃんと手を握って。
「今、何時だよ。」
近くにあった窓から、オレンジ色の光が差していた。咄嗟に腕時計を見る。
「あ、18時だ。」
そう告げれば、大きくため息を吐く君。
「マジかよ。」と呟くと、カラカラと笑い始めた。
「どうしたの?」と訊ねれば、残念そうな顔をしてこっちを見てきた。
「だって、今日初デートだったのに……」
そうか、君はこの日を楽しみにしてたんだね。
ベッドに置きっぱなしにしていた手帳に目をやる。君も、その視線に気づいて手帳を見る。
「お、お前! また見たな?!」
「うん。」
「ニヤニヤすんな!!」
やっぱり、頬を赤らめる君を見てると楽しい。
「タイムスケジュールとか、相変わらずマメだね?」
にっこりとそう言えば、目をそらされた。
「ば、馬鹿!! 見んな! 恥ずかしいから!!」
そして直ぐにタオルケットで全身を覆い尽くす。
「拗ねないでよ。」
「拗ねてねえ!」
タオルケットが声を荒げた。
「デートは出来なかったけどさ、手。」
握られたまま隠しきれていない手をギュッと握り返す。タオルケットから、恥ずかしそうに出てくる君。
「マジで信じらんねえ! リストまで見るとか!!」
半分顔を出す姿は、巣穴から恐る恐る顔を出しているうさぎのようだ。
大丈夫だよ。君を採って食おうとか、そんなこと考えてないよ。
安心して。
そう目で呼びかけながら、空いている手の方で君の手を優しくさする。
「出ておいで。」
「ばか。」
照れながらも、顔を出してくれる君。
「木曜日までまだあるし、大学も同じなんだから、互いに空いてる時間を見つけて図書館に行こう。」
「……。」
「お弁当も、今日の分は今から一緒に食べればいいよ。今日はお家デートって思えばいいんじゃないかな?」
まだ何も話してくれない。
「さ、ご飯食べよ?」
と言いいながら、ベッドに横たわっている君を抱き起こすと「一人で起き上がれる!」っと俺から逃げるようにすごい勢いで立ち上がる。手が離れて、ぬくもりが消える。
「増村?」
俺に背を向けたたまま突っ立っている君に問いかければ、顔が見えるか見えないかの位置まで振り返えられる。
「――守れよ?」
「え? 聞こえな「守れよ。てめえーが言ったんだ! 図書館デート、約束だ。」」
「な?」と言う。漸く見えた君の表情は、嬉しさと怖がりが詰まった、そんな複雑なものだった。
「え、あ、うん。」
そんな表情をされてしまっては、そう答えるしかなかった。
あれ? なんやかんやで俺は君のペースに巻き込まれていないか?
ちょっとだけ過ぎった疑問。だけれど、嬉しそうにお弁当を開いてみせる君の姿を見ているとそんなのがどうでもよくなる。
今度はまた、どんな作戦を立ててくるのかな?
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