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イライラにしおりをはさみました!
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イライラ
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「ねえねえ、増村くんってさー可愛いね!!」
「は?!」
増村の前に座っている女子が、興味津々でそう言った。君はすごい怪訝な顔になる。
「もー!美菜!! ごめんね。可愛い系男子大好きなんだ、この子。」
どうやら君の前にいる子は、美菜というらしい。合コンが始まってすぐに自己紹介をし合ったが、そんなことは頭に入っていなかった。なにより、”美菜”という子から君を守ることに全神経を使っていたのだ。
「えっと、田辺君だっけ? 今日、何かあった?」
俺の目の前に座っている子が、若干怯えながら俺の方を見ていた。
「え? 何で?」
「だって、すごい顔してる。」
俺の眉間を指差すその子。その仕草で、開始してからずっと眉間に皺を寄せていたことを知る。
「ああ、ごめん。えっと……」
初対面の人にずっと怒っている表情をしているのも失礼かなと思って、無理やり笑顔をつくる。名前を言おうとしたが分からずに困ってしまう。
「はるか。私、はるか。」
「そうか、はるかちゃんって言うんだね。」
「うん、そう。」
しばらく話をしていて知ったのは、はるかちゃんも無理やり合コンのメンバーに入れられていたということだ。だから、俺が不機嫌な顔をしているのを見て、同士なのでは? と思って声をかけてくれたらしい。
「もうさ、美菜って合コンが大好きなんだ。それ以外は本当にいい子なんだけどね。毎回メンバーに入れられるのってちょっと……へへへ」
困ったように笑うはるかちゃん。
「俺も一緒。あの、やたら仕切ってる奴わかる?」
廊下側に座ってテンションの高いそいつを指さす。
「ああ、確か柿園君だっけ?」
「そうそう、あいつも合コン大好き人間なの。もう、付き合わせられるこっちの身にもなって欲しいよなー」
一緒に笑い合った。初めて会うのに、はるかちゃんとは話が弾む。穏やかで優しそうな子だなと思った。
「何? お前らいい雰囲気だなー」
突然右隣にいた竹本がこちらに割り込んできた。
ああ、はるかちゃん、お前が好きそうなタイプだもんな。
それに気づき、ニヤニヤする。
これは、友達の為に人肌脱いでやるか。
「はるかちゃんって、どんな人がタイプなの?」
竹本が知りたがりそうなことを代わりに聞けば、ちょっと嬉しそうな表情を見せたその子。
「うーん、そうですねー」
にっこり笑って言った。
「田辺君みたいな人、かな?」
え?
今、
何と?
竹本の為に聞いたはずが、何か墓穴を掘った気がするんだけれど。
「あ、えっと」
戸惑っていると、ふふふっと笑うはるかちゃん。
「真っ赤になって可愛い。」
いや、俺は可愛いとかいうタイプではないですよ。
「携帯のメアドとか、交換してくれるかな?」
にっこりと微笑むはるかちゃん。そして、動揺しまくる俺。
その時だった。
ギュッ
「え?」
突然左横から俺の手が握り締められたのだ。左を見れば、美菜ちゃんの話を適当に交わしている君がいた。愛想笑いこそしているものの、目は笑っていない。たまにこちらを不安気に見ている。
なにより、手が――
ずるいな。
そう思った。
君にそんな顔されたら、何かな。何もできない。
それでも、ここでアドレスを交換しないのは気まずい空気になってしまうため、一応交換することにする。
「うん、交換しようか。」
「本当? ありがとう。」
柔らかな表情に、俺は一言添えた。
「でも、俺携帯あまり見ないから、連絡来ても返事とかしないかも。」
「え?」
俺の左手を握りしめていた手も、一瞬力が抜けた。
「ごめんね。」
目を潤ませ始めるはるかちゃん。当たり前だ。だって、これって「あなたには興味がありませんよ」って意味だから。
「ちょっと俺、トイレ行ってくる。」
気まずくなって、俺はトイレへと逃げた。握られていた左手は自由になっていた。
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