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7日目 ひろむにしおりをはさみました!
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7日目 ひろむ
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すーすーと寝息をたてる不良くんを上からじいっと眺める。俺の体はふわふわと浮いていて、なんともまあ、幽霊らしい。最近になってようやく自分が幽霊であることを実感したわけで、こうやってこの赤毛を見つめながらモノ思いにふけることも、自我がなくなった悪霊となったらできなくなってしまうのだという意味もわかってきた。
嘘つきの末路らしいな、なんて、そんな馬鹿みたいなことを考える。ねぇ、俺ってどうして生まれたんだろうね。生まれてすぐ両親に見捨てられて、要らない人間として育ってしまって、社会に貢献とやらもできなくて、女の子はキズつけたし、男友達なんていなかったし、思い返すと散々な人生だった。
どうしてこんなに臭った人間なのか、どこにもぶつけられるアテがない。
勝手にこんな奴になりさがっただけ、死んでもなお、誰かのそばで法螺吹きを続けて、あーあ、あーーあ。
「迷惑かけてごめんねぇ?」
これっぽっちも思ってないような言葉はスラスラとでてくるのに、本音は俺にもよくわからない。
人間をわかった気でいたかったのだけど、俺は俺自身をわかってはいない。イジワル神様、この49日間は試練ですか?
俺はもう死んでいて、もう二度とおなじ人間にはなれないのに。
俺に一体なにを手にいれろというのだろう。この手は熱のないものしかさわれないというのに。俺自身すら、さわれないというのに。
「…冷てぇんだけど。」
ぱちり、
瞼の隙間から茶色い目が見えた。
ベッドで眠っていたはずの、不良くん。俺とまた違った社会不適合者。
「なにがー?」
「お前、何泣いてんの?」
「はい?」
俺は俺自身に感覚がない。幽霊って泣けるんだ、ていうか俺って泣けるんだ。生きてるあいだも泣いたことなんて数えるほども無かったのに。涙なんて枯れてると思ってたのに。いわれて気づいた、ぼたぼたと俺の目から水滴があふれて、それはすべて不良くんの顔に落ちていた。
「あれ、意味わかんないね、俺」
無愛想な顔で俺をみつめる二つまなこは、二、三回瞬きをしてまた瞼の裏にその瞳を隠してしまった。
「はやく寝れば」
そういって布団に顔を埋めてしまった彼に教えてあげたいことがある。
死んだら眠れないんだよ、って。
でもほら、やっぱり俺は嘘つきだから
「そうするよ、おやすみ」
そういって部屋のすみに座り込んだ。
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