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新生徒会役員⁈ 1にしおりをはさみました!
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新生徒会役員⁈ 1
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最低だ。最悪だっ。なんっで俺が!
「分からないところがあったら、遠慮なく聞いてね?」
「…はい…」
相変わらずエセくさい柔和な笑顔を浮かべる相楽先輩に、覇気のない返事をする俺。
なにがどーして、こうなった!
俺は今不本意ながら──生徒会室に、いる。
ここの生徒にとってはなんら新鮮味のない入学式だろう。
理由は、大多数はみんな顔見知りのように見えるから。
金持ちの家ってーのは、案外世界は狭いのか。
すでにあちこちでグループが出来上がっている。
その中、ひとり毛色の違う新入学生の、俺。
すでに俺の存在は、ほとんどの生徒が知っているようだった。
その証拠に、方々から視線を感じる。
あの入学試験をクリアした奴が現れた、一体どんな奴だ、と噂が飛び交ったらしい。
が、実物(俺)を目撃した奴らは、それはそれは一様に同じ反応をした。
¨アレが特待生…?¨
¨うわ~根暗っぽい¨
¨つーか、オタク?¨
¨勉強できても、アレじゃーなぁ…¨
どうやら俺は、¨勉強しか取り柄のない、根暗でオタクな一般庶民¨として認識されたようだった。
それは俺にとって都合がいい。
そのイメージでいれば、俺の正体はバレないだろう。
まさか学生が俺の正体を知ってるはずがないと思うが…用心に越したことはない。
…アイツのように、例外もある。
まとわりつく、視線。
囁かれる、言葉。
それらを全てスルーをして、壇上を見つめる。
入学式で判明したこと。
あの相楽先輩が副会長で、木宮先輩が会計とは聞いていたが、他に生徒会役員はいないようだ。
生徒会役員はアイツが会長で、アイツを含め3名しかいない。
そして彼らが登場すると、男子校なはずなのに、黄色い悲鳴が上がる。
どうやらあの3人は、この学園ではすげぇ人気だってことか。
ますます関わりたくない。
名前を呼ばれ壇上に上がり、それなりの挨拶を述べさっさと壇上から去る。
その間もまとわりつく視線を感じた。
そして、滞りなく入学式も終盤にかかり、あとは会長であるアイツの挨拶で入学式は終了らしい。
アイツが壇上に立つと、今までのざわめきが嘘のように静まり返り、誰一人声を発さず、アイツの話に聞き入っている。
俺はただ、アイツの話を聞き流していた。
だが、その挨拶で、アイツはとんでもない爆弾を落とす。
「最後の通達だ。
特待生の白川聖夜を、生徒会書記に任命する」
その瞬間、静まり返っていた体育館内にざわめく声が響く。
俺は何を言われたのか理解できずに、壇上を見た。
すると、目が合う。
「あの入学試験をパスした学力を見越し、理事長が下した判断だ。
白川、この後生徒会室に来るように。
以上、解散」
その言葉に生徒たちは体育館を出ていく。
──俺にチラチラと好奇な視線を寄越しながら。
なんで俺がなんで俺がと心の中でつぶやきつつ、俺も生徒の波に乗りとぼとぼと教室を目指す。
すると、肩をトン…と指先で叩かれ、振り返った先に居たのは、俺より少し背の低い、真っ直ぐな黒髪をサラっとなびかせる可愛らしい顔付きをした生徒。
「えーっと、白川くんだよね?
僕、矢追純(ヤオイジュン)。同じクラスなんだ。
噂の特待生と同じクラスだなんてうれしいな!
一緒に教室まで行かない?」
ニコニコと邪気のない笑顔に、思わず警戒心が薄れる。
「あぁ。うん。俺は白川聖夜。
よろしく」
「聖夜って呼んでいい?僕も純でいいから!」
「あぁ。いいよ」
話しながら教室を目指す俺たち。
その間、ずっと好奇の視線と囁かれる声。
──さすがに、居心地が悪い。
そんな俺の心情を読み取ったのか、純が苦笑いをした。
「一時的なものだと思うよ。
あの試験をパスした生徒はいなかったから。
僕もすごく驚いたし」
「純もあの試験受けたことあるのか?」
「うん、受けさせられた。
たぶんほとんどの生徒がやってみたことあるんじゃないかなぁ?」
「なんで?
別に、試験なんて受けずに入学出来るんだから、わざわざ試験なんてする必要ないだろ?」
素朴に思ったことを投げかけると、純は少しバツの悪そうな顔をした。
「う…えぇっと…」
言いにくそうに、言葉をまごつかせる。
その様子から、なんとなくピン…ときた。金持ちならでは…の発想なら。
「一般庶民に負けてられるか。息子にだって、それぐらいの問題は解ける!
って感じでやらされるか?」
すると、もともと大きな目を更に大きく開く純。
目玉こぼれそうだな。
「なんで分かったの…?」
「んー?
純の言いにくそうな感じと、金持ちの発想?
なんとなく、金持ちって、一般庶民に負けられるか!ってな感じのプライドありそうだし。
だったら、自分の子供に、試験やらせてみるかなーって。
ってコレは偏見か。わりーな」
ここに通うということは、純も金持ちの仲間なワケだし。
「んーん。その通りだよ。
多かれ少なかれ、そういったプライドはあると思う。
聖夜にとっては、気分悪いプライドだよね…ゴメンね」
こうやって申し訳なさそうに俺の目を見てくる純は、きっと優しい奴なんだろう。
「純が謝る必要ねぇよ。
純はさっき¨させられた¨って言ってたから、純の意志で受けたワケじゃねぇだろ?」
「それはまぁ、そうなんだけど…」
「じゃあ、お互い気にしない!な?」
「…うん」
純はその名の通り、純粋な笑顔で頷いた。
教室に入ると、中にいた生徒が一斉にこっちを見る。
ざっと見回すと、だいたいが興味津々な視線。
そして、ごく少数、煩わしいモノを見る視線。
「あっ!亮平!」
純は誰かを見つけると、俺の手をひいてその方向へ引っ張っていく。
「亮平っ!入学式、サボったでしょ!」
窓際の一番後の机に伏せっている生徒に、純が声をかける。
「んん~?だってダルかったし…」
半分寝ぼけながら顔を上げる、亮平と呼ばれた生徒は、純の横にいた俺に気づく。
「ん?見ねー顔だな?」
「特待生の、白川聖夜くんだよ。さっき友達になった!」
「おぉ、噂の。
オレ、木崎亮平(キザキリョウヘイ)。亮平でいいぞ。
ヨロシクー」
「白川聖夜。聖夜でいいよ。
よろしく」
短い髪をツンツンに立たせ、少し目つきは悪いが笑うと目尻が下がり、優しい印象を与えた。
「っつか、あの試験パスするなんて、どんだけ頭いいんだよ。
俺もやってみたけど、全然ダメだったぞ」
「亮平はね、何でもチャレンジしてみたいタチでさ。
試験も興味本位でしたみたいだよ」
興味本位とか…ただ単に好奇心でする奴もいるんだな。
俺はとりあえず、笑いでごまかす。
立ちっぱなしも何なので、俺と純はとりあえず俺は亮平の隣、純は前にそれぞれ座る。
「それよりさ、聖夜が生徒会役員に選ばれるなんて、ビックリだね!」
純が、俺がさりげに忘れようとした…というか、思い出したくない話題をふってくる。
「生徒会役員って…すごいことなのか?」
入学式の様子から、あの3人の人気はすごいんだとは思ったが…。
「生徒会役員はね、家柄と成績が関係してくるんだよ」
「は?」
成績は、分かる。
だが、家柄?なんだ、ソレ。
「黒沢財閥って、知ってる?」
知ってるもなにも、黒沢財閥なら誰もが知る、日本屈指の大財閥だ。
テーマパークやホテル、ファッションビル、レストラン…黒沢財閥が関わっていない事業はないんじゃないかと言われているぐらい、手広く展開している。
海外にも進出していて、海外からも一目置かれているとか、何かの雑誌に書いてあった。
コクン…と首を縦に振ると、純は話を続けた。
「今の会長、本田先輩はその黒沢財閥の親戚筋でね。
成績だってずっと首席なんだよ」
へぇ。家柄も、成績も、申し分ないってワケか。
厭味な野郎だな。
「それで、副会長の相楽先輩は、この学園の理事長の息子さんだし。
相楽グループはいくつもの学園を経営している大グループだからね」
「成績は会長に次ぐ、次席だしな」
純の説明に、亮平が補足した。
「それから会計の木宮先輩は、家は大学病院の経営。
ほら、中央区にある大学病院知らない?
あそこも木宮先輩のところが経営する病院だよ。
木宮先輩は、相楽先輩に続いて、3位」
そうだったんだ…。あの病院は、木宮先輩のとこか。
「ほんと揃いも揃って家柄も申し分なく、成績優秀者なんだな」
「まぁ聖夜が選ばれるのは、特待生だからだろうな。
あの試験をパスするぐれーだし」
「…拒否って、できないかなぁ…」
ぽつり、とそうつぶやく。
「なんで?
生徒会って特典だらけだぜ?
授業出なくても免除されるし、寮だって特別ルームだし、他にもイロイロ」
「あんまり、人前に立つのは得意じゃないんだ」
それもあるが、本音は関わりたくない!
なんとかして、拒否だ。何がなんでも、断固拒否!
そう思っていると、チャイムが鳴り先生が教室に入ってくる。
席はどうやら自由らしく、俺たちはそのまま座っておくことにした。
「よし、みんな席についたな。
えー、君たちのクラスを担当する、長谷川智哉(ハセガワトモヤ)だ。
一年間、ヨロシクな」
長めの髪を後ろに流し、少しワイルドさのある風貌。
切れ長の瞳に、逞しい体つき。
モテそうな教師だな、というのが第一印象。
じっと見ていると、視線が合う。
「学園初の特待生、白川か。
分からないことがあれば、遠慮なく聞けよ」
「はい」
「そんじゃま、とりあえず、今日はこれで終了。
じゃ、解散」
そう言って担任は教室を後にする。
随分と簡単なホームルームだな。
まぁダラダラ自己紹介とかするよか、いいけど。
幼い頃から交流のあるこの学園の生徒たちにとって、自己紹介とかは必要ないみたいだ。
鞄を持ち、席を立つ俺に、同じように席を立った亮平が話し掛けてきた。
「なぁ、聖夜は寮って何号室?」
「317だ」
「おぉ、隣じゃん。俺、316」
「僕は聖夜の向かい側だよ。307っ」
おぉ、すげぇ偶然だな。この二人が近くで、嬉しい。
「生徒会室寄ったあと、帰ってきたら、俺の部屋来いよ」
「わかった。んじゃ行ってくる」
「いってらっしゃーい」
二人に別れを告げ、昨日に行ったばかりの生徒会室へと向かう。
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