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新入生歓迎会 1にしおりをはさみました!
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新入生歓迎会 1
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新入生たちが新しい生活に慣れ始める、4月下旬。
2日間に渡って、新入生歓迎会とやらがあるらしい。
1日目は、なにか催し的なもの。
そして2日目は、スポーツ大会。おぉ、爽やかだね。
スポーツの内容はバスケ・フットサル・バレーボールなど最高でも出場する人数が7名までの種目じゃないとダメなんだと。
これは一クラスの人数が関係していて、一日でトーナメント戦をやるからほぼ試合に出ずっぱりになる。
人数が多い…例えばサッカーとかだと、クラス全員交代なしでフル出場だ。
体力バカでも死ぬ、確実に。
そして今、一日目に何をするか生徒会と2、3年の各クラスの委員長と副委員長が集い、会議を開いている最中だ。
新入生歓迎会とあって、1年は会議に参加していない。とそこで、思う。
そういえば俺のクラスの委員長とか知らねーや。
「他に意見は?」
進行役の相楽先輩が会議室内を見渡す。
円形に広がった机、そこに座る面々は誰も手を挙げなかった。
「んー…ない、か。なんだか毎年似たような意見だね…」
俺は意見が挙がるたびにパソコンに打ち込んでいった画面を見た。
パソコンに打ち込むと自動的に俺の後にある大画面へと文字が転送されるというハイテクさ。
ホワイトボード使わないんだね。
画面に並ぶのは、金持ちらしい発想のダンスパーティーやらクルージングやら茶会やら…。
ダンスって。マイムマイムしか知りません。クルージングってなんですか。カジキでも釣るんですか。茶会の作法とか知りませんけど?
うーわ。参加したくねぇ。
そんな風に思っていると、くるっとこっちを向いた相楽先輩が俺にふる。
「ねぇ。白川くんは何か意見ない?」
「は?」
相楽先輩を見ると、にこやかに笑っていた。
…何でも言いから、意見出せ、的な圧力を感じる。無茶ぶりっすね…。
意見…ねぇ。
「…鬼ごっことかどうですか?」
人数が多くても、なんとかできる遊びだろ?ただなんとなく思いついて、言ってみた。
まぁ、金持ちの坊ちゃん達が鬼ごっこなんてするわけないか。
ってか金持ちの遊びなんて知りませんから。
なんて心の中で突っ込んでいたら、相楽先輩は更に俺に質問をぶつけてきた。
「具体的に、この人数でどうやるの?」
え…食いつくの?鬼ごっこに?…んじゃまぁ、大人数だと…
「…何人か逃げる人を選抜して、それを残りが追いかける…って感じですかね。
あ、新入生歓迎会なら1年全員を逃げる側にして、逃げきったら何か景品がって感じにしたら必死になるんじゃないですか?」
思いつきのまま、言ってみる。
ふむ…と、考えるそぶりを見せた相楽先輩が更に続けて聞いてくる。
「2、3年もメリットが欲しいよね」
「じゃあ、1年を数多く捕まえた鬼にも景品を与えたらどうですか?」
俺の意見に、相楽先輩はニコリと笑う。
「うん、面白そう。俺は鬼ごっこに賛成」
「え…。」
マジですか?鬼ごっこですよ?金持ちの…いやこの際金持ち庶民関係ねぇ、男子高生がやりますか?
と、思っていたのに。
「みんなも面白そうだと思わない?」
キラキラと効果音が付きそうなスマイルに、反対意見を出す奴は……うん、いなかった。
…相楽スマイル、すげぇ。
景品を何にするかまた明日に会議を開くことになり、解散。相楽先輩と二人で生徒会室に向かう。
「隆盛と明良には俺から伝えておくよ。あ、もっと具体的にどうするかルールみたいなの考えてくれる?」
「あ、ハイ」
…そう。
今日の会議に、アイツと木宮先輩は不参加だった。
アイツは家の仕事の都合らしく、授業には出ているものの放課後は忙しく動いているらしい。
木宮先輩は、まぁただのサボり。
リュウと再び会ったあの日から、俺はリュウと顔を合わせていない。
あの日、目を覚ました俺は自分の失態に頭をかかえた。
そして気を失っている間に、またもや風呂に入れられた事に噛み付くと…
『だったら、気を失わずに起きていればいいだろう?気持ち良くなりすぎて堕ちたお前が悪い』
などとのたまいやがった。
言い返せない自分が、悔しい…!
俺は脱ぎ散らかした服をひっつかみ、急いで着替えると…逃げるように部屋を出ていった。
真吾さんの所へ荒々しく乗り込むと、中にいた面識のあるメンツが驚いた顔。
真吾さんが声をかけてきたが、寝る、と一言告げると早々に2階へと上がった。
俺の不機嫌オーラを察したのか、誰も2階に上がってこなかった。
あぁぁ、ダメだ、思い出しただけでムカつく。
モンモンとしたものを抱えたまま、生徒会室に着く。
とりあえず、今は仕事だ──と、意識を切り離した。
「ちょっとお茶にしようか」
ファイルを机に置いた相楽先輩は簡易キッチンに向かおうとする。
うん、キッチンあるんだよ、ここ。簡易って言ったけど、ごく普通の家のキッチン並みの設備だけど。
俺より背の高い冷蔵庫あるし、IHコンロだし、オーブンあるし、食器棚には食器が揃ってあるし、調理器具もある。
ここ、生徒会室ですよね。
「あ、あの、俺がやりましょうか?」
いつも先輩に入れてもらっているのはちょっと気が引ける。なので自分が入れようかと申し出て見たのだが。
「ふふっ、いいよ。
紅茶を入れるのは俺の趣味みたいなものだから。気にしないで」
「あ、はぁ…」
趣味…か。
うん、ナチュラルな笑顔だし、本人が楽しんでいるのなら、いい…か?
15分程して戻ってきた相楽先輩は、俺の前に紅茶を置いてくれる。
うん、いい香り。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
紅茶を一口。うん、やっぱり美味い。
紅茶の香りと味を存分に楽しんでいた俺は、前から気になっていた事を思い出した。
「あの、先輩。あそこって、会長室ですよね?
って事は、会長は普段あそこで仕事するんですか?」
一番最初にここを訪れた時に、そこから出てきた相楽先輩。会長室のプレートがあるそこだ。
「あぁ、会長室?あそこ、隆盛は使ってないんだ。
役員が違う部屋にいたら、仕事を回そうとしたりするときに呼んだりするのが面倒くさいってね。
仕事は同じ部屋ですることにしたんだって」
…会長室でやってればいいものを。そうだったら仕事中に視界に入ることもないのに。
「あそこは今仮眠室になってるよ。簡易ベッドが置いてあるんだ」
「仮眠室…ですか」
「隆盛は不規則な生活だからねぇ。たまに寮に帰らずにそこで寝てたりするよ。
制服の予備もそこに置いてあるしね」
「…そうなんですか」
「あ、隆盛専用ってわけじゃないから、白川くんも疲れたら寝ていいからね?
もちろん制服だって学園の予備だから、サイズ色々あるし」
「あ、ハイ」
会話がひとくぎりした俺達は、仕事に取り掛かる。
今日の会議の内容をまとめ、明日決めるべき内容のリストアップ。そしてこれからあるレクリエーションの確認。
新入生歓迎会が終われば次は5月末には宿泊研修なるものがあり、生徒、教師全員で、1週間どこかの国に行くそうだ。
…そう。国。つまりは海外旅行。
スケールがデカすぎる。
海外旅行なんて誰が払えるんだ、そんな旅費。というか、行きたくない。
1週間もここを離れるわけにはいかない。母さんに何かあったら、困る。
今度理事長に頼んでみよう。行きませんって。
考えている間も、手を休めずに動かす。
全て入力し終えた俺は、相楽先輩に声をかけた。
「終わった?じゃあもう白川くんは帰っていいよ。お疲れ様」
「それじゃ、先に失礼します。お疲れ様でした」
生徒会室を出た俺は、携帯を取り出し、時間を確認する。
18時半を過ぎたところ。
早足で寮に向かい、急いで着替え、亮平の部屋のベルを鳴らす。
「お疲れぇ」
「お疲れさま~」
「あんがと。ご飯いこー」
出てきた亮平と純とともに、並んで食堂へ向かう。
「で?新歓は何になった?」
「あ、気になる気になるー!」
注文を終え待っていると、新歓の話に。うーん。反応が気になるな。
「…鬼ごっこ。」
「は?」
「え?」
予想外の言葉に、二人が目をパチクリしている。あ、やっぱそんな顔になるよな。
「だから、鬼ごっこ。
1年が逃げる側。2、3年が鬼。で、逃げきったら景品がもらえるシステム」
そう説明すると、二人がへぇ~と頷いた。
「うわ、ちょっと面白そう」
「うんうん。なんか懐かしいし、鬼ごっこなんて」
「なぁ、聖夜の意見?だって今まで、ダンスパーティーとかかたっくるしいのばっかだったし」
「あぁ。適当に答えたら、通った」
夕食が運ばれてきたので、それぞれ食べはじめる。
「なぁ、景品って?」
「それは明日の会議で決めるよ」
「そうなんだ。あ、スポーツ大会は?」
「バスケ」
バスケは木宮先輩ががやりたいって言ったらしく、相楽先輩は会議でみんなの意見も聞かず『バスケでいいよね?』と一言。言わずもがな、あっさり決定。
「今年は楽しみだなー、新歓。俺ぜってぇ逃げ切ろっ」
景品にやる気をだした奴がひとり。
「数多く捕まえた鬼にも景品が出るから、2、3年も本気で捕まえに行くかもな」
「えー。僕走り続けるのは得意じゃないしなぁ」
鬼にやる気をなくした奴がひとり。
「じゃあ純は隠れとけば?」
そう言うと、キョトンとした顔で俺を見る。
「それって…かくれんぼだよね?」
「要は逃げきったらいいんだから、姿隠すのも戦略だよ、純。って言ってもルールは作るから、隠れるにも限度はあるかもだけど」
「なんか奥が深いぞ、鬼ごっこ!益々やる気出てきた!」
景品をもらう気満々の亮平に、笑いが零れる。純はまぁ頑張るよ、と普通のテンションだった。
夕飯を食べ終えたあとそれぞれ部屋に戻り、なんとなくボヤ〜っとニュース番組を見る。
12時も過ぎ、バスルームへと向かった。
いつも、寝る前ギリギリに風呂に入る。
誰かが突然尋ねて来たとき、地毛だと対応できないから。
はぁ。やっぱり寮暮らしだと面倒くさい。
風呂から出て、髪の毛も半乾きのままベッドに寝転がり天井を見つめる。
明日…街に行かなきゃな。
ふと前回街に行った時のことを思い出し、顔をしかめた。
リュウと会った日から2日後、俺はいつものように客に買われ、体を提供した。
ゴム5個を買った客は結局3個しか使わず、俺にとってラッキーな結果に終わった。
なのに…。
「……。」
眉間にシワが寄る。
あの時、思ったこと。
そんなことを思った自分を殴ってやりたい。
今までそんな事を思ったことはなかった。
どこか淡泊だった俺は、客さえイけば正直自分のことはどうでもよかったのに。
その日の客も、自分本意なセックスをする奴だった。
出すだけ出し、もう出来ない…と残りの2個をもったいなさそうに見つめていた。
いつもなら、客がシャワーを浴びるのを待っていたりする。客より早く部屋を出るのはあまり好ましくないから。
だけど、心の中に浮かんだ感情に戸惑った俺は、客に先に出ると伝えホテルを出た。
真吾さんの所へ向かう間、戸惑いとは別にイライラが込み上げる。
俺は、さっき、何を思った?
今までそんな事、思わなかったはずだ。
なんで──…¨足りない¨だなんて、思ったんだ…!
クソっ、なんだよ足りないって。淫乱か?俺は。
快楽の為に売りをやっているわけじゃない。なのに──。
アイツに会ってからの俺は、変だ。
その日も結局、真吾さんの店に着くと挨拶もそこそこに2階へ上がった。
そんな俺に真吾さんも、中にいたメンツも、特に声をかけてこなかった。
朝起きると、真吾さんはいつものようにココアを入れてくれた。
とくに会話もなく、俺はいつもより早くココアを飲みほし店を後にした。
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