アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
新入生歓迎会 5にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
新入生歓迎会 5
-
「待ちやがれっ!」
ただ今校内を全速力中。この日ばかりは廊下を走っていいんです。
やっぱり鬼がいない訳ないよな。
目的地に向かう道すがら鬼に遭遇。
これでえーっと…10人目ぐらい?いや、もっとかな、なんて考えていると、前方から別の鬼が現れた!
「うわわっ」
挟まれたぁ!
前方にいた鬼に腕を捕まれる。
「いっただき…」
「すいません」
俺を捕んでいる手を軽くひねる。
この鬼ごっこのルールは、¨腕章を盗られたらアウト¨。
タッチされただけじゃ、捕まったことにならない。
ということは、腕章を盗られないように自己防衛してもオッケーなワケだ。
「うぉっイテ…っ」
痛みに手を離した隙に逆に先輩の腕を掴んで俺の後ろへ投げる…と、後から追いかけてきた鬼とごっつんこした。
「すいませーん!」
その隙に俺は一目散に逃げ、しばらく走ったところで速度を緩める。
「はぁー、しんど」
全速力はやっぱ疲れる。
しかし、俺はまだ追いかけてくる鬼は少ない方だろう。
捕まえると要求を聞いてもらえるオプション付きのこの鬼ごっこ。
見た目のいい奴や、メリットの多い奴(財閥など権力がデカイ奴とお近づきになれるとか)が、一番狙われる。
現に、俺を見かけてもスルーする鬼はちらほらいた。
「純とかヤバそうだな。もう捕まってたりして。
はぁ…やっと着いた」
迂回しまくって、ようやく目的地までたどり着く。携帯で時間を見ると、10時35分。
ちょいちょい隠れながら走って逃げて、ここまでたどり着くのにかかった時間は1時間。マジ疲れた。
やっと落ち着ける、と俺は¨生徒会室¨のドアを開け中に入った。
生徒会室には一般の生徒は近寄らない。なので、ココに鬼が来ることはまずないだろう。
生徒たちにとってここは、踏み入れてはいけない¨聖域¨らしいからな。
終了時間まで仮眠室とやらで昼寝でもしよう。まだ昼じゃないけど…などと思いながら、初めて仮眠室のドアを開けた──ら。
「案外遅かったな」
中からありえない奴の声がした。
そこにいたのは、俺が最も近寄りたくない人物。
「さて、腕章をもらおうか」
ベッドから立ち上がり、ニヤリと笑う。
「…っ…!」
なんっでここにリュウがいるんだよっ!
すぐさま踵を返し、逃げの態勢に入る。
が、背後から右腕を捕まれ、腰に腕が周り、足の間にリュウの片足が入り…逃げることが叶わなくなった。
呆気なく腕章を奪われて、うなだれる、俺。
腕章を外したリュウは俺を解放し、ククっと笑った。
「さぁて。お前にはどんな要求を聞いてもらおうか」
…嫌な予感しか、しない。
とぼとぼとリュウの後をついてもどってきた体育館、今は壁にもたれて座ってるんだけど。
「…捕まえにいかないんですか」
何故か俺の横に座るリュウ。
「行かん。景品として生徒会が入ってるんだ、俺が捕まえても仕方がないだろう。
それに目的は達したしな」
意味深な笑顔で俺を見てくる。
…やっぱり、嫌な予感しかしない。
はぁ、とため息をついてぐるっと館内を見渡すと、半数以上の1年が捕まっていた。
思ったよりも捕まった人数が多い。
しっかりしろよ、1年。
…まぁ、俺が言えた義理じゃないんだけど。
「…なんで生徒会室にいたんですか」
ふと気になったことを聞いてみる。
「このゲームは鬼ごっことはいっても、うまく隠れることが有利だからな。
お前ならきっと生徒会室に来るだろうとふんでいた。一般生徒はあまり立ち寄らないからな」
「…そうですか」
完全に行動を読まれていたってわけか。
まさかリュウが俺を捕まえに来るとは思ってなかったし…。
あー、嫌だ。絶対アレを要求するよ、コイツ。
んで別に無茶な要求ではないから相楽先輩も木宮先輩もオッケーを出すだろうし、そもそもこの人会長だし。要求を通すに決まってる。
あれ以来何も言ってこねーから、諦めたと思ってたのに…。
などと考えていると、体育館に先輩に連れられた純が入ってきた。
先輩と先生の元に行き、氏名とクラス、誰が捕まえたかなどを話している。
話が終わったのか、先輩は他の1年を捕まえるべく再び走って出入り口へ行き、純は辺りをキョロキョロと見渡した。
「友達が来たので行きます」
勝手に横に座っていたんだ、別に声をかけなくてもいいとは思ったが、同じ生徒会しかも自分は後輩なので一応声をかけ立ち上がる。
純の方へ歩き出すと、純がこっちに気付いた。
「聖夜っ。もう捕まってたんだ」
「あぁ、さっきな」
「誰に捕まったの?」
「…会長」
そう言うと、純は驚いた顔をした。
「なんか…意外。こーいうのには参加しないと思ってた」
「ハハ…」
うん、俺もそう思ってたんだけどね。目的とやらがあったみたいデスヨ。
「大丈夫だった?」
「なにが?」
「ホラ、会長が聖夜を捕まえたんでしょ?ここに戻ってきたとき何もされなかった?」
純にそう言われ、俺は気づく。
確かに誰かしら突っ掛かってきそうなものだ。
だけどリュウと共にここへ来たとき、確かに視線やささやく声はしたが、誰ひとり突っ掛かってはこなかった。
それは、隣にずっとリュウがいたから。
リュウはだから、俺の横にいた──?
いやいや、まさかな。
まさかあのリュウにそんな優しさ、あるわけない。
俺はちらりと後ろを振り返る。
さっきまで座っていた場所に、リュウは居なかった。
──偶然だ。そう、たまたま。
アイツはただ体育館に居たかっただけで、決して俺のためなんかじゃない。
さっきまでリュウがいた場所を見つめながら、自分に言い聞かす。
「聖夜?なにかされたのっ?」
純が慌てた口調になったので、俺はハッとじて純に向き直る。
「あ、いや。なにもされなかったよ。大丈夫」
「そっか」
安心したように笑う純。
体育館の隅っこに行き、純と二人でつかまえられてくる1年を眺める。
純が他愛のない話をふってくるけど、俺は話半分でリュウの行動をずっと考えていた。
そして、残り5分。
「亮平、まだ捕まんないね」
「そうだな。全力で逃げてるか、いい隠れ場所でもあったかな」
多くの1年が体育館に帰ってきたが、まだ亮平の姿はない。
制限時間の3時間が経ち、12時になる。
「わ、亮平逃げきった!」
「ゲームが買えるって大喜びだろうな」
そう純と笑いながら話していたのに、15分経っても亮平は帰ってこなかった。
「亮平…どうしたんだろ…」
純が心配そうな顔をしていたんだけど。
「バカだね」
「バカだな」
「言うなよぉ~」
純と俺は呆れた視線を亮平に送る。
今は午後1時半。
鬼ごっこの結果はというと無事逃げきった1年は80名中わずか6人。
もっと残るかと思ったのになー。
そして鬼側は、3位は3人捕まえた2年のなんか真面目そうな先輩。
2位は4人捕まえた3年のやたらガタイのいい先輩。
1位は6人捕まえた2年のめちゃめちゃチャラそうな先輩。
リュウも相楽先輩も木宮先輩も、お前かよ…という感じで1位の人を見ていたのがちょっと気になった。
結果を発表したところで一度解散。
昼食を取ったあと再び体育館に集合となっている。
なので今、食堂でお昼を食べているワケだけど。
「ほんと、図太いというか、マヌケというか。ちょっと心配した僕の気持ちを返して」
「ゴメンって~!」
「寝てさえなかったら賞金もらえてたのに。残念だったな、亮平」
「うぅ~…俺のバカ…」
そう。亮平はずっと寝ていたらしい。
亮平が隠れていたのは、美術倉庫の彫刻や絵画が置かれた隙間。
生徒会室の真下だ。
人が来る気配もなく、だんだんと瞼が下りていき…寝こけていたらしい。
「終了の放送、入ったよね?」
「全然知らなかった…」
「どんだけ寝てんだよ」
解散の号令がありぞろぞろと出て行く生徒の中、バタバタと走ってくる奴1名。
そして俺を見つけるなり、すんごい勢いで両肩を掴んできて。
「聖夜の力でセーフにできねぇっ?」
必至の表情。
できるわけねーだろ、と言った後の亮平の落胆ぶりといったら。
次々とゲームソフトの名前を挙げて嘆いていた。
「携帯あったら電話してあげたんだけどね」
「聖夜が携帯の持ち込みを禁止にしたのかっ」
ホームルームの時に、生徒は全員携帯を担任に預けていた。
「いや?会長だけど」
携帯で情報を交換してはつまらない。目当ての1年がいるのなら自力で探せ。利器に頼るな──らしい。
「いつまでもウジウジしないっ。寝てた亮平が悪いんでしょ」
「まぁ、そうだな」
「うぅ…ハイ」
ご飯を食べ終わる頃には亮平もいつも通りに戻り、俺達は再び体育館に向かおうと席を立つ。
閉まりそうだったエレベーターを亮平が走って止めた。
「セーフ!わりーね!二人とも早くっ」
エレベーター内にいた生徒に声をかけた亮平が俺と純を促す。
中に入ると一人と視線が合い、そいつは慌てて目をそらした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 102