アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
新入生歓迎会 6にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
新入生歓迎会 6
-
今までは威勢良く、穴が開きそうなぐらい睨み付けてきたそいつは、九条麻斗。
うつむく姿からその表情は確認出来ないけれど、おとなしい所を見ると少しは牽制できたようだ。
普段の様子と違う九条を見て、亮平も純もチラっと視線を送ってくる。
1階につきエレベーターを降りたら、九条が足早に去っていった。
その背中を見送っていると、九条との距離が離れたところで亮平が聞いてくる。
「なぁ、九条となんかあったか?いつもだったら敵視バシバシで睨んでくんのに、なんか違った」
その横で純もうんうんと頷いている。
「んー、ちょっと注意しただけ。喧嘩売るなら次からは一人で来てねって」
「注意…?って、喧嘩?!次からって、なんかされたのか?!」
喧嘩、のところで慌てた様子の亮平と純に大丈夫、と返す。
「何もされてねーよ。怪我とかどっこもないだろ?」
「でも九条くんの取り巻きって、ケンカが強そうな先輩ばっかだよ…?」
あー、確かに見た目は強そうか。ま、一般生徒相手なら強いかもな。
「大丈夫だって。俺、これでも強いから。合気道習ってたし、師範代レベルぐらいあるから」
「え」
「マジ?」
「マジマジ。ちょっと反撃して牽制しただけ。これで大人しくなってくれると平和なんだけどなー」
あーでも九条が大人しくなっても他が煩いか。
「聖夜って…何者…」
つぶやくように言った亮平に笑いかける。
「ただの一般人だよ」
ここにいる白川聖夜はね。
続々と生徒たちが集まる体育館内。俺達生徒会役員は今舞台袖にいる。
時間になったところで相楽先輩が壇上に立ち、まずは逃げきった1年が舞台に呼ばれた。
1年が壇上に上がるたびに所々から聞こえる、声。
¨町田…捕まえたかったのに…¨
¨あ~、高遠くん…君にお願いしたかったのになぁ¨
¨一色くんに捕まえて抱き着く予定だったのに!¨
そんな声を送られている三人に目を向ける。
背の高い二人は笑みを浮かべながら、間に挟まれている背の低い一人は引き気味に生徒たちを見渡していた。
隣のクラスの奴らだな、何度か見かけたことがある。
そいつらを含め、逃げ切った生徒たちはみんな賞金よりも昼食を選んだ。
ということは俺は6回もリュウと昼食を共にしなければいけない。
…最悪だ。
俺のテンションが落ちている間に相楽先輩は1年を下がらせ、次に1位から3位だった先輩たちを舞台に呼ぶ。
1位から景品を選ぶ権利があるので、相楽先輩が1位の先輩に何にするか聞いた。
「生徒会役員1名とデート権」
にこりと言い放ったその人を、相楽先輩も木宮先輩もリュウも¨えっ¨という顔で見ている。
不思議に思いながらも、まぁ俺には関係ない話だろう、と思っている─ーと。
「相手は白川聖夜くんで」
何故か俺が指名され、ざわつく体育館内。え、なんで俺?と疑問。
相楽先輩は俺以上に疑問に満ちたかおをしていたけど、とりあえず先に進むべく生徒たちを制した。
結局、2位の人が1日生徒会役員、3位の人がクルーズ。
その後1年を捕まえた鬼たちを並ばせ、その他の生徒は解散させ鬼たちの要求を聞いていく。
¨昼食を食べる¨
¨ハグをする(してもらう)¨
など、まぁかわいらしい要求は許可。
¨キスをする(してもらう)¨
¨部屋に泊まる¨
などは却下。そんなことに戦利品を使うな。
中には¨家に行く¨なんて、魂胆丸見えの要求もあった。
友達でも何でもない奴が家に行ってどうするんだよ。
両親に挨拶ってか?媚び売る暇あったら勉強しろ。
とまぁ、全員聞き終わりようやく解散となった。…他の生徒たちは。
「さて。俺の要求だな」
そう、まだ俺に対するリュウの要求が残っていた。
生徒会役員以外誰もいなくなった体育館内。その舞台袖、俺の前に立つ三人。
リュウは笑みを浮かべながら、予想通りの言葉を放った。
「顔を見せろ」
「思ってたより遅かったな」
「あぁ、ちょっと仕事してたから」
「そうなんだ。お疲れさまぁ」
先に帰っていた二人と合流して食堂に向かう。
「明日、僕を捕まえた先輩とお昼食べることになったよ」
どうやら解散した後、鬼たちは許可がおりた要求を1年に伝えにいったみたいだ。
「聖夜は会長に何を要求されたの?」
「そうそう!純に聞いてビックリした。何だったんだ?」
俺はハハ…と笑う。
¨顔を見せろ¨
リュウがそう言った後、相楽先輩も木宮先輩もただ俺を見ていただけだった。
やっぱ却下しないよな、こんな簡単な要求。でも俺にとっては簡単じゃないんだよ。
固まっていると、リュウが再び要求を口にする。
「顔を見せろ」
逃げ道がない。
俺は仕方なく前髪を上げ、視線を下に向けた。リュウが一歩踏み出したかと思うと、眼鏡を取られる。
いきなりの行動に、俺は思わず視線を上げた。
驚くリュウ。木宮先輩も口を開けていた。相楽先輩だけは、にこやかに笑みを浮かべている。
「…もういいですか」
「あ、あぁ…」
「眼鏡ください」
前髪を下ろしてから、珍しく動揺しているリュウに手を出して眼鏡を受け取りかける。
「えー!もったいねー!しろっち、すっげー美人じゃん!何で隠しちゃうの?」
「ね。俺もそう思う」
騒ぐ木宮先輩に、頷く相楽先輩。そして、俺を凝視するリュウ。
「…お前、兄弟は?」
「…いませんけど?」
慌てるな、俺。ごまかせ。
「外国の血が混ざっているんだろう?従兄弟かなんかに銀髪はいるか?」
「…何で知ってるんですか?外国の血が混ざってるなんて」
ハーフだなんて、一言も言ってない。
「祐輔が調べた」
チラリと相楽先輩を見ると、ゴメンね?と笑った。
一体、どこまで調べたんだろうか…。ってかその笑顔、全然悪いと思ってませんよね。
「で、どうなんだ。いるのか?」
「いません」
これは本当。父も母も一人っ子。俺に従兄弟はいない。
まだリュウは俺を凝視している。
「…要求は聞きました。帰ります」
俺はそう告げ、舞台から下りる。
呼び止める声もなかったので俺は足早に体育館を去り、現在に至る。
リュウとのやりとりを思い出しながらも、適当にごまかす。
「いや、別に。仕事まわされただけ」
「それだけ?」
「うん」
二人はふーん、とつまらなさそうにしていた。何を期待してたんだか。
食堂についた途端、こっちを見てザワザワとざわめき出す生徒たち。
なぁんかまた良くない視線だなぁ。めんどくさ。
俺はため息をひとつつき、食堂の中を進む。
席に座り注文を済ませると亮平と純が俺を見た。
「なぁ、聖夜。お前さ、鷺ノ宮先輩に素顔見せたことあんの?」
「鷺ノ宮?誰だそれ」
「今日鬼で1位だった人だよ。2年の鷺ノ宮綜史(サギノミヤソウシ)先輩」
あぁ、あのチャラそうな奴か。そういや名前言ってた気がするな。
リュウの要求のことばっかり考えてて上の空だったから、あんまり話聞いてなかった。
「いや?接点もなんもないぞ?」
「んー…。じゃあ何でだろうね?」
「ハンターの勘か?」
二人顔を合わせて首を傾げて考え込んでいる。
「ん?何なの?」
状況がつかめず二人を交互に見ると、亮平が苦笑いをしながら説明した。
「あの人は無類の綺麗なもの好きなんだよ。綺麗だったら老若男女問わず手を出すんだ」
「は?」
「だから、綺麗な奴に手当たり次第手を出すんだよ。恋人がいようがいまいが関係なし」
「…見た目通りな奴なんだな」
チャラそう、じゃなくてチャラいのか。
「恋人に手を出された奴だって黙っちゃいないだろうに」
「それがさ。初めは怒ってても、結局は何もしないんだよ。
鷺ノ宮グループだってそこそこデカイけど、それよりももっと権力の強い家柄の奴だっていたから力で捩じ伏せたってワケでもなさそうなのに」
「へぇ…っつか、亮平詳しいのな?」
入学したばっかでよくそんなこと知ってるな。
「鷺ノ宮先輩は同じ中学出身なんだよ。青学に通う殆どの生徒は、提携を結んでる三つの中学から入学してくるんだ」
へぇ、そうだったのか。知らなかった。
「それに付き合いでパーティーとかに出席させられるから、噂とかは早く回るしな。
あ、ちなみに生徒会メンバーも同じ中学だぞ。
中学のとき相楽先輩は鷺ノ宮先輩に狙われてたな。まぁ相楽先輩は相手にしてなかったけど」
相楽先輩にいくとか、マジで手当たり次第だな…。俺は怖くてできない。
話が一段落したところで料理が運ばれてきた。
「デート権を選んだとき、僕てっきり相楽先輩を選ぶと思ったけど…」
「俺もそう思ったんだけどなー。やっぱ勘だろ。
聖夜、気をつけろよ?喰われないように」
「縁起でもねーこと言うな。勘とかなんだよ。
あー…めんどくせぇなぁ、もう」
何なんだ。
リュウに素顔バレるし、意味のわからん奴から指名されるし。
誰だよ、要求を聞いてもらえるとか言い出した奴は。それにふざけた景品を提案した奴は。
つーか、鬼ごっこなんて提案するんじゃなかった…と今更ながらに後悔。
無意識に出るため息。自分の意見がこんな結果をもたらしたことに落ち込んでいると、突然黄色い悲鳴が。
「うわ、珍しい。ここに来るなんて」
つぶやく亮平の視線をたどる。そこにはあのチャラ男がいた。
「いつもはルームサービスなのに。目的は、聖夜…みたいだね」
純が心配そうな顔をして俺を見る。
チャラ男は真っすぐこっちに向かってきた。
「やぁ、白川くん。木崎も矢追も久しぶりだな」
「…どーもっす」
「…お久しぶりですね」
二人は頭を下げて挨拶をしていた。俺はチャラ男…鷺ノ宮先輩を見あげる。
背は180ぐらいだろうか、モデルのようなスラっとした体型に金に近い髪を無造作に整え、整った顔に笑みを浮かべている。
耳にはピアス、首にはネックレス、指には両手合わせて3個のリング。…つけすぎじゃね?
まぁ確かに、モテる外見はしていると思う。
「白川くん。デートのことなんだけど」
そう切り出し、四人掛けのテーブルの開いていたひとつに座った。
一層周りがうるさくなる。そんな様子を気にもせず続ける。
「次の日曜日、空いてる?」
指名されたからには、デートはしなきゃならない。…早く済ませてしまおう。
「…ハイ」
「じゃあ、日曜日に。部屋は何号室?」
「317です」
「また部屋に電話するよ。楽しみだな。
あ、矢追。しばらく見ない間に綺麗になったね。矢追も今度デートしようね」
言うだけ言って、ヒラヒラと手を振り去っていった。
「…すっげ、行きたくない」
「さりげに純も誘うとこが、さすが鷺ノ宮先輩だよなー」
「…感心しないで、亮平」
夕食を食べ終えた俺たちは、亮平の部屋に集まった。
「明日はバスケかー。聖夜得意?」
「まぁ、好きだな」
「僕も好きだよ」
「え、純バスケできんの?」
「…聖夜、何気に失礼だよ」
ジトーっと睨んでくる純。
「わりぃ、わりぃ」
膨れる純に謝った。
明日に備えて早めに解散となり、自室へと戻った俺はシャワーを浴び、ベッドに潜り込む。
リュウへの警戒、憂鬱なデート。まだまだ突っ掛かってきそうな奴らもいるし、煩わしいことだらけ。
…そのうちハゲそ。
早めにベッドに入ったというのに、俺はなかなか寝付けずにいた──。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 102