アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
景品 1にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
景品 1
-
九条が突然学園を去り、クラスメイトたちは何があったのだろうと不思議な顔を浮かべていた。
そんな中、どうやら留学するらしいという噂にみんな納得の顔をした。
学園を退学になっただなんて家の面子が保てない、そう思い九条家が慌ててそんな話を出したんでしょ。
そう相楽先輩が言っていた。
新歓から1週間たち、新歓が終われば次に待ち構えるのは宿泊研修。ホームルームでは今、行動を共にする班分けが行われている。
九条が抜けて19人となり、俺は行かないので全部で18人。4人の班が3つ、3人の班が2つ。
「白川は行かないのか?」
亮平、純、そして委員長の吉沢が同じ班になったみたいだ。
亮平と純には事情を話したから事情を知ってるけど、吉沢は知らないから不思議そうに聞いてくる。
「あぁ、ちょっとね」
言葉を濁すと、吉沢はそれ以上聞いてこなかった。
授業も滞りなく進み、昼休み。いつものように亮平たちと学食へ向かう。
二人とも松葉杖をつく俺のスピードに合わせて歩いてくれた。
食堂の前につき、そしていつもならこのまま一緒に食堂に入って、一緒に食べる。
だけど、しばらくは別行動。
なぜなら、今日から逃げきった1年に対する景品、¨生徒会全員と学食ランチ¨があるから。
ということは、リュウと一緒にご飯を食べなきゃいけないわけで。
前ならば、リュウと一緒にご飯を食べるなんてとんでもない、顔見ながら食べたらご飯がまずくなる、などと毛嫌いしている理由で拒否したいところだったんだけど。
今は違う意味で気が重い。
「じゃーな。俺たちは行くな」
「またね、聖夜」
ヒラヒラと手を振り、食堂の中へ入っていく二人。あぁ、俺も一緒に行きたい。
二人を見送り、扉の横に立ち 待つ姿勢をとっていると、俺の前で足を止めた生徒が三人。
「白川くん、待った?」
「いえ、今来たところです」
相楽先輩、木宮先輩、そして──リュウ。
三人が食堂に入ると、途端にざわめきが広がる。チラチラと気にするやつ、ガン見してくるやつ、中には携帯で写真を撮ろうとするやつ。
希少なものを見るように注目している生徒が大勢。それもそのはず、この三人は食堂に来る機会が極端に少ない。
現に俺は、今まで一度も三人を食堂で見たことがない。
わーきゃー騒ぐ所で食べたくないらしく、生徒会室で昼食を取っているとか。
足を進める三人の後について行き指定されている席に近づくと、そこには一人の生徒が座っていた。
「待たせちゃってごめんね、澤村くん」
「いっいえ!」
顔を赤くし立ち上がるこの生徒は、逃げきった生徒のうちの一人。
「さ、お昼食べようか」
相楽先輩の言葉に、それぞれ席につく。
「僕、幸せです~!」
そう言って体をくねらせる…澤村っつったか?に若干引き気味な俺。
正直キモイんです。だって行動と容姿が伴っていない。
こいつの見た目は30歳つっても信じてしまいそうな老け顔に、体格だっていい。
そんな奴が甘えた声を出し、体をくねらせている姿は正直鳥肌が立つ。
頑張れ、俺。食事に集中だ。……いやいやこっち見んなよ。
何故か澤村の横に座らされた俺は、時折横からの射殺さんばかりの視線を浴びている。
なんでお前が隣なんだよ。席変われよ。
と澤村の目が語ってる。俺だって嫌だっつーの。
俺の右に澤村がいるが、左にはリュウが座っていて、妙に左だけ緊張する俺。
リュウに助けられた日から、リュウをまともに見られない。
いくら弱っていたとはいえ、まさかリュウの胸に縋り付き泣いてしまうなんて。
しかも、頭を撫でてなんてお願いしてしまうなんて。
改めて考えると……恥ずかしすぎる。
¨白夜¨の時にされた行為に腹を立て、関わりたくないと思っていたのに。
なんて自分勝手で傲慢な奴だと嫌っていたのに。
あんな優しいリュウを見せられたら、戸惑ってしまう。
相楽先輩は、俺をなるべく一人にしないよう気をつけていた、と言っていた。
つまりは、新歓の日、体育館で純が来るまでずっと俺の横に居たのは、ありえないと思った俺の考えそのままだったってことだ。
なんなんだ。なんでそんなに俺を気にかける。そんな疑問を持ったところで、俺はハッと気づく。
もしかしてリュウは、白夜と俺の間になにかあると疑ってる…?
兄弟や従兄弟、血縁を聞かれたってことは、俺がイコール本人とは思ってないんだろう。
だけど、白夜と俺が繋がっていると思っているから、俺から何か聞き出そうと優しくしたのか…。
でも、白夜のことを知ってどうする?
何がしたいんだ?
あー、わかんねぇ。
ぐるぐる考えを巡らせていると、左肩を掴まれた。
「白川、どうした。具合でも悪いのか?」
「え、いえ…。考え事をしていただけです」
大丈夫、大丈夫だから肩から手を離して。
隣からだけじゃなく、食堂のあちこちから睨まれてますからね、俺。
「そうか」
肩から手を離し、再び食事を続けるリュウ。
俺も目の前にあるハンバーグランチを食べることに専念しよう。そう思ってナイフを手に取った瞬間、食堂内に沸き起こる歓声。
「ちっ。嫌な野郎が来た」
本当に嫌そうにつぶやくリュウ。
俺は声の中心に目をやる。思った通り、そこには6人の生徒を引き連れた鷺ノ宮先輩が。
1年を捕まえた多くの鬼たちは、学食ランチを要求した。
なのでここ最近、上級生とお昼を食べる1年をよく目撃する。
この鷺ノ宮先輩も同じく、学食ランチ。
しかも一人一人じゃなくて、捕まえた1年全員と一緒に。
ハーレムみたいでしょ?と笑う鷺ノ宮先輩に対して、木宮先輩は苦笑い、相楽先輩とリュウは無視を決めこんでいたことを思い出す。
鷺ノ宮先輩からは、リュウの部屋から帰ってきた土曜日の夜に電話がかかってきていた。
デートは翌日の日曜日の約束だったが怪我を説明すると、じゃあ怪我が治ったらにしよう、と言われた。
早く済ませてしまいたかったが、怪我をしてしまったのは俺。
ハイ、と返すしかなかった。
鷺ノ宮先輩が俺たちのテーブルに視線をよこす。
俺を見て、軟派な笑みを浮かべてヒラヒラと手を振った。とりあえず俺は頭だけでペコッと挨拶を返す。
「鷺ノ宮とはいつデートするの?」
円形テーブルの俺の向かい側に座る相楽先輩が聞いてきた。
「あー、怪我が治ってからです」
「ふーん。まぁ、その方がいいかもね」
「なんでですか?」
相楽先輩はニーッコリと笑う。
隣で、か、かわいい…という声が聞こえた。幸せだなお前。
俺には、かわいいとは思えない。
「その方がいざって時に反撃できるでしょ?急所蹴りあげちゃえばいいんだし。
使い物にならなくなっても、自業自得だよね」
ね?と同意を取るように笑いかけてくる相楽先輩。
…蹴りあげたこと、あるんですね…?
俺はとりあえず笑顔でソウデスネ…と返しておいた。
授業も終わり、今日は月曜日のため生徒会がある。
亮平と純に別れを告げ生徒会室へ行くと、そこには相楽先輩と顔に見覚えがあるガタイの良い生徒が一人。
「あ、白川くん」
「こんにちは、白川くん」
相楽先輩に続き笑顔で挨拶をしてくるこの人は、新歓の鬼ごっこで2位だった…誰だっけ?
確か聞いたはずなのに、名前が思い出せない。
…なんか笑顔が嘘くさい人だな。
「こんにちは」
とりあえず俺は挨拶を返す。
「知ってると思うけど、この人は3年の北浦さん。今日一日、生徒会役員だからね」
覚えてませんでした。ありがとうございます、相楽先輩。
「はい。よろしくお願いします、北浦先輩」
「よろしくな」
本人爽やかな笑顔を浮かべてるつもりなんだろうが、目が笑ってねー。
ツメが甘いなぁ、相楽先輩見習えよ。ほら超ナチュラル笑顔。
「北浦先輩、今日会長は不在なんです。だから来て下さって良かった。
白川くん、俺明良探してくるから、北浦先輩に説明頼めるかな?」
「…はい。」
俺達にニコリと笑いかけると、相楽先輩は生徒会室を出て行った。
あんまり二人きりになりたくないなぁ、めんどくさいなぁ…と思っていると、案の定態度が豹変した先輩。
「なぁ、お前どうやって本田達に取り入ったんだ?」
さきまでのエセ爽やかはどこいったのか、卑下た笑を浮かべ俺を見下ろしてくる。
「…別に、取り入ってませんけど」
「ハッ。嘘つくなよ。入学していきなり生徒会入りとかありえねぇし。
何だよ?あいつらの弱みでも握ってんの?教えろよ俺にも」
ドサっとソファに踏ん反り返る先輩。いやいや、態度変わりしぎじゃね?
呆れながらも俺は自分の席に座り、パソコンを起動させた。
「何も弱みなんか握ってませんよ」
「もったいぶんなって。
弱みでもちらつかせなきゃ、お前みたいなモサい奴が生徒会に入れるわけねーだろうが。
な、教えろよ」
人の話聞けよ。知んねーっつってんだろ。
「…弱み握ってどうしたいんですか?」
「あ?そんなもん、利用するに決まってんじゃねーか」
お前バカ?などと言いながらケラケラ笑う先輩…いやもう先輩なんて呼ばなくていいか。
弱みを利用とか最低な奴だな。
「俺は本当に知りません。仕事の説明しますから、ここに座って下さい」
横の椅子を引くと、なぜか睨まれる。
「あぁ?だれがお前の指図なんか受けるかよ。
ちっ。お前使えねーなぁ、弱みのひとつでも探しとけよ。
あーあ。今日は本田もいねぇってゆーし。昼はいたから会えると思ってたのによぉ。
何のために生徒会役員なんてオイシイもんゲットするために頑張ったんだっつの」
あれか?この人はあわよくば会長に近づき、媚びを売ろうとしていたのか?
その頑張りを違うことに向けたほうが有意義だと思います。無駄になると思います。
媚び売られて絆されるなんこと、絶対ありえないと思うぞリュウは。むしろ神経逆なでしそう。
「ま、相楽のゴキゲンでも取るかなぁ今日は。さっきだって笑顔見せて出てったし、ちょろそう」
ふふん、なんて自信満々に笑ってるけど、アンタ痛い目見るぞ?
たぶん相楽先輩はお前の魂胆見え見えの思惑は理解してると思うぞ?
ちょろそう、なんて俺は口が裂けても言えない。
相楽先輩は笑顔で武装してんだよ。あーこわい。
「あー、早く戻ってこねーかなぁ。…と、そうか」
一人つぶやき、何を思ったのか北浦は俺が引いた椅子に腰掛けた。
…ひょっとして仕事する気になったのか?なんて一瞬思ったがどうやら違ったようだ。
椅子にもたれかかって座って、携帯を取り出してゲームをやり始めやがった。
なんでわざわざ移動?あっちでやってろよ邪魔。
イライラしながらも、俺は仕事を始める。
15分ほどして、ドアが開く音がした。と、その瞬間、俺は椅子をぐっと押されキャスター付きの椅子はスラーっと横に移動、俺がいた位置に北浦が納まる。
北浦の手はキーボードに、視線は画面に。その姿は、仕事してます!という感じ。
「明良、早く来る」
「へいへい」
木宮先輩を連れ帰ってきた相楽先輩が、俺達へと視線を向けた。
「先輩、どうですか?」
「白川くんが教えてくれたんで、順調だよ」
「そうですか」
相楽先輩は笑いかけると、お茶を入れるのかキッチンのドアに向かった。
「先輩、紅茶は飲めますか?」
「あぁ、ありがとう」
相楽先輩がドアの向こうに消えると、木宮先輩はソファにごろりと寝転んだ。
木宮先輩を気にするように視線だけで様子をうかがっている北浦に。
うわ~、小賢しい。だから横に座ってきたのか。ってか満足そうに笑ってるけど、相楽先輩気がついてると思うよ。
じっと見ていると、小声で呼ばれる。
《オイ、お前。今のうちに続きやれ》
とワイヤレスのキーボードを渡された。
なんかもうめんどくさいので、言われた通りに打ち込んでいく。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 102