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第17章―天上の刃―3にしおりをはさみました!
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第17章―天上の刃―3
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「クソッ、目がっ!! テメェ、目眩ましの技を使いやがったなっ!?」
ハルバートは視界を塞がれると、気の流れだけで攻撃をかわした。
『ヴァジュラ、奴に黒の波動をお見舞いしてやれっ!!』
かけ声と共にヴァジュラは口から黒い息を吐いた。その息に触れるとバンダナの男は一時的に行動不能になった。
「Ёγе、бηЙ£……!?」
男の体は神経がマヒしているようで動けなかった。攻撃の手が止まると、ハルバートはその隙に体勢を立て直した。
「ざまぁみろだ! 鳥野郎共、よくもやってくれたな!? ヤられた分は倍返ししてやる! 覚悟しやがれぇ!」
ハルバートは斧を向けると、真っ向から勝負を挑んだ。敵の隙をついて斧から雷撃を放つとバンダナを巻いた男は、自分の翼で雷を瞬時に跳ね返した。
「チィッ! もう回復しやがった! 奴には黒の波動が効かねえのか……!?」
バンダナを巻いた男は不敵な笑いを浮かべると、両腕を組んで話しかけた。
「――|人間《ヒューマ》の割りには大した腕だ。この俺に果敢に攻めてくるとは度胸が良い。せめてお前に礼儀で葬ってやろう」
「テメェ、一体何者だ!? 俺達に何の恨みがあるって言うんだ!? 質問に答えろっ!!」
「答えるつもりはない。答えた所でお前達の命は、ここで潰える運命だ」
「なっ、何だと…――!?」
「さあ、いくぞ!」
バンダナを巻いた男は雄々しく叫ぶと大きな鳥の姿に化身した。その大きさは他とは明らかに違う大きさだった。鳥の姿に化身すると、大きな翼を広げて突進しにきた。大きな翼で強烈な風を扇いだ。ハルバートはヴァジュラと共に、後方へと弾き飛ばされた。鳥の姿に化身した男は、そのまま彼らに向かって攻撃しにきた。雄叫びをあげると、風切りの刃と呼ばれる特殊攻撃を放った。ひとたび翼で風を扇ぐと風は|忽ち《たちまち》強烈な嵐の様な突風を引き起こし、それは刃のような鋭い威力を秘めていた。かまいたちのような風を直撃で喰らうと、ハルバートは風の中で体を無数に切りつけられた。
――一方、リーゼルバークの方も彼と同様に苦戦していた。鷲に化身した男が手を休める事もなく攻撃を仕掛けた。何度も体当たりしてくると氷結界には大きな亀裂が入り、今にも氷の壁が破壊されそうになっていた。だが、リーゼルバークはこの状況でも冷静に考えていた。氷結界を解いて、一瞬の隙に勝負を決めようと思いついていた。しかし、その間。気を失っているユングの身の安全の保障もできない。彼はそこでギリギリの選択肢を迫られた。あと二三回体当たりされたら氷結界は崩れる。彼は剣を手にかけると、額から緊張の汗を流した。鷲は旋回すると、彼らの方に向かって猛スピードで突進しに行った。
最大のピンチを前にユングはハッと目を覚ますと、無意識に行動に出た。鷲に化身した男が勢いよく体当たりしてくると、ついに氷結界が砕かれた。その瞬間リーゼルバークに緊張が走った。剣を手にかけたその時、ユングは弓矢を構えると、矢をとっさに撃ち放った。砕かれた氷の破片が宙に散乱した。矢はその隙間の間を僅かに通り抜けると一直線に向かって敵に命中した。放たれた矢は正確に敵を捉えていた。鋭い矢が翼に突き刺さると、鷲を大きな悲鳴を上げて真下に落ちて行った。バンダナを巻いた男はその光景を目にすると、慌てて化身を解いて人の姿に戻った。
『イデヤっ!!』
彼は部下の名前を叫ぶと、ハルバートのもとから飛び去って行った。翼に矢が突き刺さると、男は化身を解いて人の姿に戻った。辛うじて死には至らなかったもの、深傷を負った彼は完全に戦闘不能に陥った。バンダナを巻いた男は急いで駆けつけると話しかけた。
「イデヤ大丈夫か…――!?」
「ッ…! |迂闊《うかつ》でした……。 私としたことが敵に矢で射たれるとは、これでは王子の足手まといになってしまいます」
「もういい。イデヤ、お前は下がるんだ! その傷ではマトモに飛ぶことも辛いだろう。いいから無理をするな!」
「ラルバ様、もう申し訳ありません…――!」
「こうなったら退却だ! もう用は済んだ。さあ、撤退するぞ!」
「ラ、ラルバ様よろしいのですか……?」
「何を言う、戦いとは常に戦局を見極めることが大切だ。そして今がその時だ。時に身を退くことも大事であろう。さあ、行くぞ!」
バンダナを巻いた男は、そこで部下達に声をかけると撤退を始めた。竜騎兵達は敵に殲滅される寸前に命拾いした。リーゼルバークは一息つくと少年の方に目を向けた。ユングは弓矢を持ったまま、再び気を失った。彼は少年の内に秘めた力を目の当たりにすると、驚愕せずにはいられなかった。ユングはあの状況下の中でも正確に弓矢を放っていた。リーゼルバークは少年の内に秘めた力に興味を抱いたのだった。
「やはりお前には弓手としての素質がある。まだ小さな子供だが、いずれはその力を多くの者達が必要とする時がくるだろう。今はゆっくり休むのだ」
リーゼルバークは独り言を呟くと、彼の頭を撫でたのだった。
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