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第17章―天上の刃―10にしおりをはさみました!
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第17章―天上の刃―10
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「一体誰が殺しやがった! まさかあいつか…――!?」
ハルバートの脳裏にジャントゥーユの顔が過った。
「あの野郎なら殺るかもしれねぇ! いや、そうに決まっている! でなきゃ、あいつがこんな事をするはずが…――!」
ハルバートは脳裏にクロビスの顔が過った。でも、あくまでも彼は否定した。そうでなきゃ、この現実を受け入れることは難しかった。床から立ち上がると、そのままオーチスの方に歩いた。彼が椅子の上で死んでいる事をあらためて確認した。表情は恐怖に怯えているようにも見えた。ハルバートは、頭の上に被されている帽子を手に取るとそこで絶句した。オーチスの頭は切り開かれていて脳がなかった。その衝撃的な光景を目にすると思わず吐き気に襲われた。
「うぐっ…! っ…――! なっ、なんてひでぇ有り様だ……!」
彼のあまりにも無惨な姿を目の前に、口を手で押さえて吐き気を抑えた。
「オーチス…――。俺はアンタが嫌いだったが、そんな風に変わり果てちまったんじゃ同情するぜ。せめてもう一度生きていたアンタと話ができれば良いのに」
ハルバートは彼の無惨な姿に同情した。動揺しているとそこにケイバーが部屋に訪れた。
「ちょっとお邪魔するぜ。ははっ、こりゃスゲーな」
扉をノックして部屋に入るなり、笑いながら死体を観察した。
「これまた派手にやったもんだなぁ。やっぱり殺しちまったんだアイツ。まあ、やるとは思っていたが、まさかここまで酷いとはな――」
ケイバーはオーチスの死体を興味津々な顔で眺めた。彼は驚く事もなく、飄々とした口調で話した。
「で、頭の中身はどこにいった? やっぱりアイツは本物だぜ。マジでイカれてやがる。クククッ」
そこで嘲笑うように誰かの事を呟いた。ハルバートはカッとなると思わず右手で胸ぐらをグッと掴んだ。
『やっぱりテメェらか…――! こんなイカれた事をするのはお前らしかいねぇと思ってたぜ! それでも同じ人間かっ!?』
ハルバートはやり場のない怒りをぶつけた。ケイバーは胸ぐらを掴まれると、フンと鼻で笑って言い返した。
「アンタ、誰と間違えてるだ? 俺は殺しが好きだが、生憎こいつを殺ったのは俺じゃねー。確かに俺はこいつをブッ殺そうと思ってたけどな。こいつを殺ったのは俺じゃなくてアイツだ。テメェの方こそ、何が本当か見えてないんじゃないのか?」
ケイバーはそう話すと掴んできた手を振り払った。
「何だと…!? じゃあ、誰がこいつを殺ったって言うんだ!」
目の前で惚ける彼にハルバートは怒鳴って質問した。
「何だよ。何そんなに熱くなってるんだ? どうせアンタもコイツが嫌いだったんだろ? 前からムカついてたって言ってたよな。嫌いな奴が居なくなって清々した気分だろ?」
ケイバーはそう言い返すと、椅子に座っている死体を足で蹴飛ばした。
「こいつを殺ったのは俺でもギュータスでもジャントゥーユでもねぇよ。こんなイカれたことをするのは、アイツしかいないだろ?」
「なんだと…――!?」
「それとも信じられねーってわけか? ああ、違うな。信じたくないんだろ? ホント何もわかってないんだな。アンタはあいつがこんな残酷な事をするはずがないって心の中で信じてるのか? いや、それにすがりたいんだろ。違うか? だったら本当の事を言ってやる。それで絶望すればいい」
床に転がったオーチスの死体を片足で踏みつけると、ニヤリと笑いながら事実を伝えた。
「こいつを殺ったのはクロビスだ。アンタの大好きな、お坊ちゃんだよ――」
ケイバーは彼に残酷な事実を告げると皮肉混じりに笑った。ハルバートは衝撃的な事実を聞かされると足下から崩れた。
「じょ、冗談だろ…? アイツが…――! うっ、嘘だ…! アイツがそんな事…――! そんなことするはずがないっ!!」
膝から崩れて床に両手をつくと、絶望した表情で俯いた。彼にとっては衝撃的な事実だった。余りの辛い真実に思わず叫んだ。慟哭に嘆く彼を前にケイバーは鼻で笑って上から見下ろした。
「これが現実だ。アンタはただアイツの本性を知らないだけだ。アイツはアンタが思っているよりも残酷な男なんだよ。それが受け入れられないなら、さっさとこの牢獄から立ち去るんだな」
ケイバーは彼に一言そう告げるとズボンのポケットに両手を入れて部屋を出て行った。クロビスの冷酷な一面に衝撃を受けるとハルバートは塞ぎ込んだ。もうそこには、彼の知っている少年の面影はどこにもない。少年はいつの間にか残酷な少年になってしまった。その事実が彼の心を嵐のようにかきみだした――。
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