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第18章―虚ろな心―15にしおりをはさみました!
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第18章―虚ろな心―15
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「やっぱりお前、酔ってるだろ?」
「うるさい!」
「聞いても言いか? お前、何本ワインを飲んだんだ?」
「フフフッ。誰がお前みたいな奴に答えるか…――」
ケイバーはクロビスの酔ってる姿に少し驚いた。フと足下を見るとソファーの下に空いたワインボトルが2本転がっていた。それを拾うと口笛を吹いて苦笑いした。
「お前、2本も飲んだのか?」
「フフフッ。ああ、一人で全部飲んだ…――。ジャントゥーユの奴は酒は飲まないらしい。本当に面白くない男だ。で、お前は飲める口か?」
「ああ、酒なら何杯飲んでもいいぜ。とくに強い酒ならもっとな」
ケイバーはザクロを食べると赤ワインを一口飲んだ。窓の外は未だに雨が降り続けていた。時おり雷が不気味に光った。そんな中で2人は酒を飲みながら話をした。雨のせいか、部屋の気温も少し下がっていた。ケイバーは辺りを見渡すと部屋の中に暖炉を見つけた。
「おっ、暖炉があった。俺は寒いのは苦手なんだよ、つけてもいいか?」
「暖炉……? ああ、あの暖炉か…――。使いたきゃ使えば良い。でも、私は手をかさないからな」
クロビスは彼にそう話すと酔いながらワインを飲んだ。彼は手慣れた手つきで暖炉に火をつけて暖まった。暖炉に火が灯ると2人はソファーの上でワインを飲みながら話をした。
「――と言うわけなんだよ。あいつ相当オーチスの死体にビビってたぜ。アンタがそんな事しないって、言い張ってたっけな?」
ケイバーはハルバートの話をしながら、ウイスキーが入ったお酒をガブガブ飲んだ。クロビスはその話を聞きながら鼻で笑った。そして、話を聞きながら赤ワインを全部飲み干すと今度は白ワインを飲み始めた。
「おいおい、そんなに飲んで大丈夫か? あとでぶっ倒れても俺は知らねーぞ?」
「黙れ、貴様に心配されたくはない! 私は恐怖の支配者だ! 恐怖の支配者がワインを飲み過ぎただけで、無様な姿をさらすか…――!」
クロビスはケイバーにそう言い返すと、ワインを片手に顔を火照らしていた。どうみても酔いつぶれるのは、時間の問題だった。ケイバーは彼に絡まれながらもお酒の相手をした。ホロ酔い気分になると白ワインを片手に彼の膝の上に大胆に乗った。
「いいか、ケイバー私はな。私は…私は…私はここの恐怖の支配者だ…! どうだ参ったか…! ひっく…!」
クロビスはケイバーの膝の上に座ると、前を向いて彼に話しかけた。近くで顔を見ると白い肌は赤く火照っていた。膝の上に座られるとケイバーは少し驚いた顔をしながら言い返した。
「なんて言うか…――。お前って酔うと凄いんだな。膝の上に座ってもいいが、あとで怒るなよ?」
ケイバーはそう言い返すと顔を僅かにひきつらせた。クロビスは目の前で話す、彼の顔を軽くペチッと叩いた。
「なっ、なんだよ……?」
「人の話を聞け!」
「わかったよ。わかったから叩くな、顔が変形するだろ?」
「うるさい…! 恐怖の支配者に楯突くな…! 私は怒ると怖いんだぞ…! ひっく…!」
「なんつーか。今の説得力にかけるのは何故だ?」
ケイバーは酔っぱらった彼の話しに耳を傾けながら、まじまじと観察した。クロビスは酔いながらさらに絡んできた。
「私は恐怖の支配者だ! お前も恐怖に怯えろ!」
「へ? 俺が?」
「なんだ…? 私に口答えする気か……!?」
「いや、口答えはしないけど……。この状態でどうやって怯えるんだ? ああ、わかったよ。やればいいんだろ?」
ケイバーは絡まれながらも無難に対応した。
「わぁああああああっっ!! 目っ、目の前に恐怖の支配者様がいるぅっ!! ひぃいいいっ!!」
彼の前で一芝居するとわざと驚いて怯えたフリをした。クロビスはそれを見るとクスクスと笑った。
「どうだ怖いか?」
「ああ、目の前でアンタを見るだけでチビりそうだよ。恐怖の支配者さん。すげぇ、こえー」
「フフフッ……」
クロビスは彼の怯えた顔を見るとフとニコッと笑った。酔っぱらっているせいなのか、そこにはいつもの彼がいなかった。ケイバーは初めてみる彼の笑った笑顔に、そこで思わず拍子抜けした。
「…なんつっーか。お前、その笑った顔は反則だぞ? 本当に大丈夫かよ? その笑った顔、他の奴には見せられないな。恐怖の支配者さんはもっと怖い感じの顔にならないとダメだぞ?」
「フフフッ…。そんなこと知ってるさ、私は人を恐怖に陥れるのが好きなんだ。そして人が私を見て恐怖に怯えた顔を見るのも好きだ。フフフッ…ハハハッ……」
クロビスはそこで酔いながら笑うと、彼の胸に頭をトンとつけて寄りかかった。
「おいおい、酔っぱらってるのか……?」
「なあ。私がオーチスをどうやって殺ったか知りたいか?」
「あっ?」
ケイバーはその言葉に彼の顔をジッと見た。クロビスは両手で彼の頭に触れた。そして、指先で彼の頭を怪しくなぞった。
「ここの所からここまで頭を切り開いてやった。その間、奴はどうなってたと思う?」
「さ、さぁな……」
「喚いて苦しんでたぞ? 奴の断末魔の叫び声ときたら、それは愉快で堪らなかった。私はあの時、命を奪う事に高揚感を感じた。私の体には残酷を好む血が流れているんだ。残酷で残忍で冷血非道の血だ。オーチスだけじゃなく、他の奴も殺してきた。それこそ気にくわない奴を何の躊躇いもなくな……。不思議な事に私の心は何も感じないんだ。人を殺した時の罪悪感とか後悔とか後ろめたさも。きっと私の心は、あの時にすでに感じなくなったのかも知れないな…――」
「クロビス、お前……」
「ふふふっ、どうだ。それを聞いて私が怖くなったか? 今なら本当の事を言ってもいいんだぞ?」
クロビスは彼にそう話すと、顔をそっと一撫でした。
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