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邂逅にしおりをはさみました!
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邂逅
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私が血雲……伯岐と呼んだ方がいいだろうか……の部屋に入った時、ちょうど伯岐は目を覚まし寝台で身を起こしたところだった。
私の目は伯岐に吸い寄せられた。銀の髪に紅い大きな瞳。白い肌に華奢で少年と大人の中間の完成されていない不完全ゆえに美しい体つき。
この世のものではないのではないか?まるで精霊かなにかのように輝いて見えた。一目惚れ、といっていい。
「……あの」
伯岐が口を開く。その声は見た目よりも少し低く、それがまたたまらなく愛おしい。男娼を買ったわけではないのだ、私が買ったのは詩人なのだと己に言い聞かせる。それにしても、鼓動がうるさい。
「あなたが、私を買ったのですか」
「ああ、そうだよ。……想像以上だ。気に入ったよ、血雲、いや伯岐」
寝台の傍まで寄ると、見上げる紅い瞳に私を映していることに歓喜を覚える。その瞳は純粋無垢で穢れがないかのように見える。それはもしかして惚れたからだろうか。
「あなたは?」
「私は鄭良、仲影と呼びなさい、伯岐」
「……はい、仲影様」
私が買った主だということをよくよく分かっているのだろう。そう考えると、聡明な子なのだと思う。まあ、あの詩文の才を持った子が愚鈍であるはずがない。
「君は、なぜここに来たのかわかっているのかな?」
「……父に『血雲』として売られました」
「それだけじゃない。君は知らないのだね。商家は表向きは零細貴族、だが実際は王に叛意を持つ者達を始末する暗殺者。……君はきっとここにいたほうが幸せになれるよ、私が保障しよう」
そっと顎に手をあてると、伯岐は怯えたように私を見ている。どうも随分警戒されているらしい。まあ、伯岐にとって私は逆らえない主であり自分の立場は奴隷のようなものだと思っているのだろう。
「この屋敷は好きにつかうといい。ああ、自分を傷つけるようなことはしてはいけないよ?」
美しいその柔肌に瑕をつけることは絶対に許さない。自分でつけるのも、他人につけられるのも。この子は私の所有物だ。
気付けば私は伯岐を抱き締めていた。少し低い体温と鼓動が伝わってきてとても安心する。とても愛おしい。表情は見えないが、肩を震わせしゃくりあげているようだった。泣いて、いる……?
「何を泣いているんだい?」
「わからない、です、でも、仲影様は、あたたかいです」
しがみつき嗚咽を漏らす伯岐を、これから守っていこうとそのぬくもりに誓った。
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