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熹微にしおりをはさみました!
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熹微
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伯岐の小さな体を抱き締めて、その暖かさに歓喜する。愛をささやき、私は伯岐に尋ねる。
「君は、私をあいしてくれているのかな」
伯岐はなぜか苦しそうな顔で、それでも首を縦に振ってくれた。抱き締め返す弱弱しい手がとても愛おしい。私の、私だけの伯岐。愛おしい子。それでも私の中の何かはこれは違うと否定を繰り返す。
何が違うというのか。私はやっと伯岐を手に入れられたのに。何故だろうか。私は伯岐をあいしているし、伯岐もそれに応えてくれているというのに。どうしてだろう。そっと唇を寄せたが、伯岐は頑なに拒んだ。それに、苛立ちを覚える。むりやり掴んで、無理に唇を奪う。
「っ……!」
鋭い痛みがはしり、鉄臭い味が口に広がる。どうやら唇を噛まれたらしい。どこまで伯岐は私を苛立たせれば気が済むのか。
思い切り頬を張った。じわりと伯岐の目に涙が浮かぶ。声なく泣く伯岐を前に、感情の制御がうまくいかない。罪悪感と凶暴な獣とが葛藤している。
「何故、抵抗するんだ。君は受け入れてくれたじゃないか……」
伯岐の泣き顔など見たくない。なのになぜか私は伯岐を傷つけるようなことしかできていない。ずっと笑っていて欲しいのに、なぜ私は……
何をすることもできず、振りかぶっていた手を力なく降ろす。伯岐はこちらを気遣わしげに見ている。ふと動いたかと思うと、私の手をそっと持って、頬にあてる。そのまま頬を撫でれば、すこしばかり嬉しそうに口元を緩めている。
「伯岐……あいしているよ」
口からこぼれた愛の言葉が力なくてむなしくて、自分の心も締め付けられる。何故だか、とても疲れた。溜息とともに俯く。伯岐の肩に顔を埋めて、静かに涙を流す。もう、いやだ。これ以上伯岐を傷つけるくらいなら。
「ずっと、君を初めて見た時から、君だけをあいしていた」
懐から、丸薬を取り出した。鈍く光るそれは思い切り苦しんで死ぬことができるという毒。傷つき苦しむ伯岐をこれ以上見ないように。傷つけ苦しませないように、私自身が消えてしまおう。一応私に何かあったら、伯岐のことは季丹殿に頼むように書簡を残してある。
「ごめんね、伯岐。でも、これで君は私から解放されるんだ」
思い切って丸薬を口に運ぶ。目を瞑り、覚悟を決める。
飲み込もうとしたらいきなり、その手を掴まれた。
「仲影様、だめ…!」
悲痛な叫び声に目を開けると、涙を溜めた目で私を見ている伯岐がいた。
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