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明星にしおりをはさみました!
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明星
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ふと、溜息をついた。
未来は見えているが、これを言ってしまっていいものか。どちらにも与しないと決めたはずの小生が随分肩入れしてしまっている。これはよくない傾向だ。
だが、あの二人をどうにかして救ってやりたいと思っているのもまた事実だ。
血雲殿が攫われていることは星宿を占っていたので知っている。だが、それと同時に急速に仲影殿の兄君……鄭伯陽殿の星が、仲影殿から離れようとしているのだ。一時期は、このまま飲まれてしまうのではないかというくらい近づいていたというのに、一体これはどう言う事か。
「季丹殿、仲影殿はまたいないのかな?」
私に声をかけてきたのは、我々六部の長官の上司にあたる、周長官だ。真面目な仕事人間だから、仲影殿が出仕してきていないことにすこし不満を覚えているのだろう。もともと、仲影殿は能力はあるもののあまり仕事をしたがらないからよく周長官に尻を叩かれて嫌々出仕して仕事をしていた。
「ああ、周長官。どうも。……今日も休みのようだよ。それどころではないだろうから」
「何か見えたのか?」
「ああ。愛妾を賊に攫われたらしい。だが、不可解な星の動きが多くて小生にもわからないことが多い」
人の心とはわからないもので星が告げる運命すら捻じ曲げてしまうから、星の動きだけで全てが分かるとも思ってはいないのだが。それでも大概の事はわかる。
「気になる星がひとつあるのだが、あれは一体誰の星か……」
伯陽殿の星の横で輝いていた星が、昨日突然光り方を変えたのだ。それは妖しく恐ろしく、伯陽殿の傍らで異質な光をみせていて、見ていて寒気が止まらなかった。一体、あれは誰の星で何を目的としているのか。
「……仲影殿に、事が済んだらなるべく早く出仕するように伝えてくれ。どれだけ仕事が溜まっていると思っているんだ。全く」
憤慨する周長官に苦笑した。しかし、彼は彼なりに仲影殿を案じているようだ。事が済んだら、を条件につけるあたりが本当にそれらしい。
あの伯陽殿の傍らで輝く星が、なにかしでかしてしまうような悪い予感を覚えたが小生にはなにもできない。あくまで小生は星を読み未来を予測する傍観者であらねばならない。
血雲殿と仲影殿の星は現在の彼らの距離に関わらずぴったりと寄り添うようにして輝いていた。あの二人はきっと、何があっても引きはがされることはないのだろう。
ならば、小生の心配は無用。何があっても彼らの心は必ずお互いの傍らにある。
ひっそりと笑うと、何が可笑しいのかと大真面目に周長官に問い詰められてしまった。こういう馬鹿が付くほど真面目な人間はどうも苦手だ。
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