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お花摘みにしおりをはさみました!
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お花摘み
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キーンコーンカーンコーン。
可愛らしいチャイムが鳴って、三時間目が終わる。
僕はちぃにこそっと話しかけた。
「ねぇ、ちぃ…
トイレってどこ?」
昨日は登下校時に見かけた玄関近くのトイレに入ったけど、まだ学校の地理を把握してなかった。
「あー、いいよ、連れションいこ!」
にひ、と笑って2人で席を立つ。
「こっちだよー、ちゃんと覚えてね?」
そんなことを言いつつ、ちぃは僕の手を引いて走った。
「早いっ、早い!
覚えられないよ…っ!」
ちぃ、足速いっ!!
活発そうな見た目通り、ちぃは運動も得意みたい。
トイレの前に着いたときには、僕はもうはぁはぁと息を切らしていた。
「はぁ、ちぃ、足、速いんだね…」
ウィッグが外れないかどうか心配になっちゃった。
「あはは、元陸上部だからねー!いちおー?」
「そうだったんだ…」
走ったら余計にトイレに行きたくなって、僕はぶるりと身を震わせる。
「じゃあ、行ってくるね」
「わかった。ここで待ってるよー…って待て待て待て待て待て待て!!!!!!」
「わっ!?」
腕を思いっきり引っ張られて、尻もちついちゃった…
「うぅ…痛いよ……
どうしたの?」
立ち上がってヒリヒリと痛むお尻をさすりながら聞くと、ちぃは引きつった笑顔で答える。
「あっははー!奏里ってば冗談きついよ?
男子トイレに入ろうとするなんて…
下手すりゃ痴女だよ? 痴女!!」
「あっ…!」
そうだった…!僕は今、女の子だったんだ…!!
「ごめ…、あの、じゃあ…」
もしかして、僕、女子トイレに入んなきゃいけないの…!?
そ、そんな変態さんみたいなこと…っ!!
僕があわあわしていると、ちぃが思いっきり僕を突き飛ばした。
転ばずに済んだものの、何をするのさ、なんて恨みがましくちぃを睨むと、ちぃは
『入って!』
口パクで僕に伝えて、廊下の方に向き直った。
もう入っちゃったし…。
覚悟を決めて個室に入ると、ちぃの話し声が聴こえた。
「おっ、きたむらー!!
きみもトイレかー!!!」
「一々うるさいな…、トイレくらい誰でも行くでしょうが…」
「北村にここで会えたことが、私にとっての奇跡…っ!」
「バカじゃないの?
通してよ、4時間目始まっちゃうでしょ」
「私を置いていくっていうの…!?
きたむらあああああああっっ!!!!」
「うるせぇな…」
き、北村さんが来たからちぃはあんなに焦ってたのか…。
でも、北村さんの最後の「うるせぇな…」は本気でイラっときてたよあれ!!
声だけで、まるでヤクザか不良みたいな迫力…!
ちぃ、度胸あるなあ…
あ、僕のため…?
北村さんと僕を引き合わせないために、突き飛ばしてくれたのか!
ってことは、北村さんが個室から出る前に出なきゃ!
なんだか複雑な気分でおトイレを済ませて、水道で急いで手を洗う。
でも、間に合わなかった。
「……………チッ、奏里」
僕のことを忌々しげに見る北村さんは、すくみ上がるほど怖かった。
迫力が、違う。
何か、違う。
僕は、震える足を止められなかった。
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