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幻覚か夢ならにしおりをはさみました!
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幻覚か夢なら
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「うっ……」
…駄目だ…目の前がグラグラする。
自宅へと帰ろうと駅まで来たが、足元がふらついて改札口にあと一歩という所で立ち止まってしまっている。
改札を利用する人の迷惑にならないよう、駅のベンチへと移動したがそれもやっとだった。
桐島さんの前では何とか平然を装う事が出来たけど、結構限界だったりする。
「気持ち悪い…」
喉が熱い。体が熱い。
視界がぐにゃぐにゃと歪んで今にも吐きそうだ。
「……っ」
さすがに、初めてのお酒であのアルコール度数はまずかった。
こんなにも体調が悪くなるなんて思ってもみなかった。
「は、…っ、…ぅ」
……にしても、熱い……
熱くて、体が焼けるようだ。息も上がってる。
水が飲みたい……でも今動いたらやばい…
「ゔ、…っ…は、ぁ…」
熱い……
駄目だ…顔を上げてはいけない。
仮にも僕は未成年だ。具合が悪いところを誰かに声を掛けられたら……
駄目だ……駅員の人に知られでもしたら確実に学校に連絡される。
気付かれるな……顔を上げるな…しばらくじっとしていればすぐ楽になる…
「う、っ…ぁ……」
熱い……熱い………
「日野……」
体は熱くて、頭の中はぐにゃぐにゃして、早く家に帰って水を飲んで、ベッドに横になって寝たいのに
「……日野…」
さっきから、日野の顔が頭に浮かぶ。
「…は、…っ、…」
会いたい……顔が見たい……
「っ……」
急に寂しさが襲ってきて、自分で自分を抱き締めてみたけれど、そんな事では収まらない。
息が苦しい。胸がムカムカする。気持ち悪い。瞼が重い。
最悪な状態なのに、それよりも日野の事で頭がいっぱいで。
会いたくて、なんで彼に会いたいんだろうと考えてみると、答えはひとつしか出なくて。
「……」
次会ったら、なんて言ってやろう。
まずは、君のせいで僕は酷い目にあった。とでも言ってやろうか。
駅のど真ん中で、こんな状態になっているんだ。
学校側にこの事がバレたら、退学も免れない。
父さんがなんていうか。
「……ぅ…」
いや、やっぱりやめよう。
僕が選んでした事だ。断らなかったのは僕だ。
日野に言いたいのは、そんな事じゃない。
……なんて言ったら、ちゃんと僕の気持ちが伝わるのだろうか。
日野を引き止めるには、何をすればいいんだろうか。
「…っちゃん…」
「………」
随分遠くで日野の声が聞こえた気がした。
「いっちゃん!」
「………」
どうやら、お酒のせいで幻覚まで見えてきてしまった。
日野にそっくりな人が、僕の両肩を抑えて、日野と同じように、僕の事を「いっちゃん」と呼んでいる。
「おい、分かるか?俺やで!これ指何本か分かる?」
「……?」
目の前で指を数本立てられたが、もうぐにゃぐにゃと歪んで4倍の数に見える。
「日野…」
「あーもう!指はどうでもえい!てか、なんでこんな顔真っ赤なが⁉︎てかお酒くさいで!いっちゃんまさか非行に走ったが⁉︎お母さん聞いてませんよそんな事‼︎」
ぐわんぐわんと肩を揺すられる。
大きな手が、僕に触れている。
「い、いっちゃん?」
「ひの……」
幻覚なのか、夢なのか。
どっちにしろ、目の前に居るのは日野だ。
「ひの……ひ、の……」
どうせ夢か幻覚なら、縋り付いてもいいだろう。
「いっちゃん、人が見よるきとりあえず場所移そう?」
「う、…」
その瞬間、体がふわりと浮いた。
誰に抱き抱えられて、誰の胸にしがみ付いているのかはっきりと分からないが、今、僕を抱き上げてくれているのが日野ならいいのに。
「…いか、ないで……」
「………」
もし、今触れているのが日野なら…
僕を置いて、勝手にどこかへ行ったりしないで。と
そう伝えたい。
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