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階段を降り終わると阿川はビルのエントランスへと向かった。そして回転扉の前で立ち止まると、フと後ろを振り返った。
一瞬だけ葛城の姿を瞼に思い浮かべると、自分が入社して間もない頃を思い出した。
会社に入りたてで、まだ何も解らないことを葛城が自分の後輩として色々と面倒見てくれたことを思い出した。それと同時に彼に次第に惹かれていく自分を思い出したのだった。
自分に厳しくて、たまに優しくて、人に弱さを見せない姿を知っていた阿川は、そんな彼にどこか惹かれていた。そしてそれと同時にこの想いが“恋”だということも知った――。
だけど葛城には自分のこの想いを打ち明ける勇気はなかった。話せばきっとこの関係はなくなるだろうと、彼自身も心の中で恐れを感じていた。
だから“先輩後輩”の関係でいようとずっと思っていた。そして遠くから彼のことを見つめるだけにしようと…――。
だけどその関係も自分壊してしまった。その後悔に阿川は、葛城への想いがただ募るばかりだった。
瞼に彼の姿を思い浮かべると、阿川はそこに自分の想いを置いて断ち切った。そして扉の前で頭を下げてお辞儀すると彼は、静かにそこから去って行ったのだった――。
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