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呼び捨てがしたくて。にしおりをはさみました!
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呼び捨てがしたくて。
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「っ…と、とりあえず、弁当まだあるから…食おうぜ」
「あ、ああ…」
「………」
「………」
沈黙が続く、さっき孝介さんは何を言いかけた…?
そんなんどうも思わない…?
確か、そんなことを言いかけてた。
オレって、孝介さんにとってなんなんだろう。
恋人って言ったり、オレのことほっといたり、この人の気持ちが、よく、わからない。
「さっきの…」
「?」
「さっきの質問の答えだけど」
「あ…ああ……」
どうも思わないんでしょう?わかってる。
「そんなんどうも思わない…」
「うん…」
やっぱり、そっか
「って言おうとしたけど、全然、そんなことなかった。」
「え…?」
「ハルが兄貴とあんなに仲良いだなんて思わなかった…家庭環境が悪いっつったって、兄弟同士が仲悪いとは限らないのにな…」
「それって…」
「…結構、嫌なもんだな。」
そうやって哀しそうに笑うから、居ても立っても居られなくなって、孝介さんに抱きついた。
「うわっ」
「嬉しすぎる…」
「ん…?」
「孝介さんも…やきもち焼いてくれるんだ…」
「そう、みたいだな…俺も初めて知ったよ。」
「そうなの?」
「晴臣限定でしか、こうならないらしいから…」
「っ…!」
なにそれ…オレを殺すつもりか…!
「ハル。」
「ん?…んっぅ」
ちゅうっ
「俺は、ちゃんとハルのこと見てるから、そんな不安そうな顔するな?」
「う、うん…///////」
初めて孝介さんからキスされた…!
「言いたいことがあるならすぐ言え。もう、こうやって1人で不安にならなくて良い。」
「わかった…じゃあ、」
「なんだ?」
「あ、の…あのね孝介さん…」
孝介さんの胸にうずくまりながら話す、足は横に出してるけど、オレの体をすっぽり収めてくれる。
体、やっぱり大きいな…細いのに…
「ん?」
頭上から優しい返事が聞こえる。
「オレさ…孝介さんと、もっと近づきたくて…」
「?」
「それで…"孝介"って、呼び捨てにしても、いい…?」
「は…?」
「ず、ずっとそう呼びたくて、なのにあのおっさんが…オレよりも先に呼ぶから…」
「ばかたれ」
「なっ…ちが!」
「そんなの…気にしてたのか…」
「悪いかよっ…」
「……悪いな。」
「はあ!?」
「最初から俺に言えばよかっただろう?」
「できないからこうなったんじゃん…」
「は、そうか…」
「孝介さんの方がばかだよ。」
「なっ……………まあ、そうだな。」
「!?」
「俺は…お前が呼んでくれるんだったら、なんでもいいよ。」
「そっ、そう…」
オレのこと、愛しいみたいな目で見る孝介さんは初めてで、胸の中が、くすぐられてるみたいな気持ちになった。
「他に、なんかあるか?」
「えっ…?」
「さっきも言ったが、なんか悩みがあるなら言ってくれ。解決できるとは断言できないけど、力になろうとは、思うから。」
「じゃ、じゃあ……孝、介に、もっと会いたい……もっと…触って、ほしい…です。」
孝介さんの匂いのする、白いシャツに顔をぐっと押し付けて、肌の赤さを隠した。
「っ!」
言った瞬間、孝介さん…じゃなくて孝介が、ぴくっと動いたのがわかった。
「……いやだ?」
「嫌なわけ、あるか…」
そのままぎゅっと抱きしめられて、より一層安心する香りに包まれた。
「ふっ…良かった…」
「なあ…お前…」
「んー?」
「そんなにかわいかったか?」
「ふぇっ」
「俺がおかしいのかな…」
「なっ、何言ってんだよ!」
「俺は未だかつて、こんなに人を愛おしく思ったことはないよ。」
「えっ…ばっ、ばか!!」
やめろよ…!そんなこと言うなよ…!
もうなんか…泣きそ…
「…もう、名前呼んでくれないのか?」
「ななっ…!」
真面目な答えをひとつも返せていないのに、この人はどんどんとオレの心を揺さぶってゆく。
「ほら、晴臣。」
「あっ…ずりぃ!ずりぃよ…」
普段そうやって呼ばないくせに!
目に涙が溜まるのが自分でわかった。
「ん?誰が?」
珍しくいたずらな顔で笑えば、オレはこの人が大好きなんだと、再確認するしかない。
「…こう、すけ。」
「もっかい。」
「こうすけ…孝、介…孝介…!」
もう良いだろって顔で睨んだつもりなのに、この人は満面の笑みで。
「愛してんだよ。分かれ。」
って言って、またオレにキスした。
溜まりに溜まった涙が溢れ出て、それを拭ってくれる手が優しくて、本当の意味で初めて、恋が実った気がしたんだ。
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