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その後 ~朝霞編~ 39にしおりをはさみました!
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その後 ~朝霞編~ 39
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そこで僕は、はっとした。
そうだよ。
いくら颯君が強いと言っても、彼はまだ中学生だ。
しかも3年生なんて、進路や色々な悩みもあるはずだ。
そんな彼が『顔を背ける』といった行為をどのように写すのか。
よく考えれば分かることだったんだ。
僕は、また失敗してしまった・・・
やっぱり、僕なんかが誰かの心を支えるなんて、無理だったのかな・・・?
・・・なんて、今までならきっと諦めてた。
でも!
今は、違う。
「っ・・・颯君」
僕は颯君の腕を掴んで、名前を呼んだ。
びっくりしたのか、顔を俯けていた颯君は、しばらくして顔を上げた。
泣きそうな顔で僕を見つめる颯くんに、心臓が ギュウッ と音をたてたきがして、胸が痛む。
それでも・・・っ逃げちゃ、駄目なんだ・・・
僕の心は決まっていた。
「颯君、ありがとう」ギュッ
目の前に、柔らかな金が写る。
・・・僕は、颯くんを抱きしめたのだ。
「へ・・・? 朝霞さん・・・?」
温かい鼓動が腕から伝わる。
久しく感じていなかった純粋なぬくもりで、僕の不安や恐れも静かに消える。
でも・・・
ビクッ「っ・・・」
颯君の体が、一瞬震えた。
そして、同時に気付く。
ああ、やっぱりこの子、強い訳じゃない。
『強くあろうと』しているんだ・・・
と。
・・・その想いの、どれほど愛おしいことか
「僕は、自分の望んだ仕事に就いたはずだったんだ。けど、思ったよりも負担が大きくてね、目的を失ってしまったんだ」
みっともない自分をさらすせいで、口が渇いていく。
これ以上言いたくないと、拒否反応を起こしているんだ。
・・・ああ、怖い、なんて忘れていたのに・・・
すると。
僕の背に彼の体温を感じた。
っ・・・
・・・温かい・・・
そして、僕は語る。
「・・・でもね。颯君の姿をみて、新しい目標ができたんだ。だから僕は、ココに君を連れてきた。・・・僕の、恩人だから。だからね、颯君」
彼の背に回した自分の腕が、自然ときつくなった。
余裕ぶってもみても、やっぱり緊張してしまうものなんだなあ・・・。
これで、彼がどう思うか。
それはもう、賭けでしかない。
僕は、ゆっくりと口を開いた。
「自分に自信を持っていいんだよ、颯くん。何があっても笑っていられる、今のままの君で十分強いから」
「ね、だから大丈夫だよ」
「っ・・・」
・・・
その瞬間を、きっと僕は忘れない。
僕の体に顔をうずめるように、ぎゅっと抱きついてきた颯くん。
その頬の上を一瞬、一粒の綺麗な宝石が流れ落ちたことを・・・
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