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ドアの閉まる音で、目が覚めた。部屋は小さな灯りで照らされているけれど、薄暗い。今何時だろう。
「起きたのか?まだ早いから、もう少し寝ていろ。」
その声で意識がはっきりする。勢いよく起き上がると、体が鈍く痛む。
「無理をするな。」
ペットボトルを渡され、冷たい水を一口飲む。そしてまた、ゆっくりとベッドに寝かされた。こんな風に彼に優しくされたのは初めてで、嬉しさよりも戸惑いの方が大きい。固くなる体に彼は苦笑しながら、ベッドに入る。横になり、 お互いの顔を見つめる。
「俺といる時、君はいつも泣きそうな顔で笑っていたな。」
「え?」
彼は何か考えている様だった。
「正直に言うと、始めは、君の事が鬱陶しくて仕方なかった。」
分かっていた、でもそれは仕方のない事だ。彼は拒否した。それを僕が無理矢理に押し退けた。
「冷たい態度で、適当に相手しておけば、君はその内あきらめようとするか、俺との約束を破るかするだろうと思っていた。なのに、」
彼の言葉が詰まる。大きな溜息が漏れ、彼の手が僕の目元に触れた。
「いつからだろうな。君の本当の笑顔が見たいと思うようになったのは。」
彼が微笑む
「君と話してみたいと思った。でも、今更どうやって君と話せばいいのか分からなかった。話し掛けても、君はいつもの笑顔を崩さずに、僕を見つめて返事をするだけだった。あれだけ酷く扱っておいて勝手だと思うだろうけど、寂しかった。君の声が聴きたかった。」
「僕の、声?」
彼がそんな風に思ってくれていた。驚きと、喜びで、今僕の顔はきっと酷い事になっている。
「可愛いな。」
彼が僕の額にキスをする。
「君に惹かれていた。でも、認めたくなかった。君の我儘に付き合って抱いてやってるだけだ、それだけだと言い訳し続けて、その気持ちを紛らわせる為だけに、他の女も、男も抱いた。」
でも無理だったよ、彼は笑って言った。
「そんな事をしても無駄だった。それが分かって遊びも止めた。指輪も外した。そしてすぐに、離婚を申し出た。」
僕の顔が曇るのが分かったのか、彼が僕の手を握る。
「言っただろう?お互いに愛なんてなかった。君と出会って後悔したよ。あんな風に結婚を決めた事を。そして、君に会いに行こうと会社を出た時、君を見た。」
僕を見たと言った後、彼は苦い顔をした。
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