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巡り逢う1にしおりをはさみました!
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巡り逢う1
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「よう、改めまして、久しぶりやんけ、響」
どうして、あなたがここにいるんですか。
「んな浮かへん顔すんなや、久しぶりにこの俺に会えて嬉しないんか?」
正直あなたとはもう二度と会いたくなかったーーー。
「お疲れ様でしたー」
「お疲れー!」
二校のレストランでの打ち合わせは、結局夜の九時頃に終わった。
途中色々と話が脱線したせいでかなりの時間ロスはあったが、長引いたお陰で成徳の書記や会計にも対面することが出来たから、それはそれで良かったのかもしれない。
「あれ、響は乗っていかないの?」
挨拶をしてから店を出、そのまま駐車場を突っ切ろうとすると背後から会長である観堂先輩にそう声をかけられた。
「歩いた方が近いくらいのところに家があるので私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
「そっか、そういえば響の家ってこっちの方面だったもんね。じゃあ今日はお疲れ様!気をつけて!」
「ありがとうございます。お疲れ様でした」
そう言って頭を下げれば観堂がにこっと笑いながら手を振ってくれた。
(本当に、我らが会長ながらよく出来た人ですよね…)
穏やかだし優しいし。それであって言うべきところではちゃんと言える人だし。
自分には絶対無理だ。
(まあ、人と自分を比較したところで、仕方ないですけど)
人は同じ人間にはなれないんだから。
そんな風に考えながら、店から数メートル離れた交差点を曲がろうとした時。
「よう」
背後からかけられた、振り向かなくとも誰かがわかるほど聞き慣れたその声に、響は大きくため息をついて振り返った。
ーーーそして、冒頭に至るのである。
「…一体何の用ですか」
嫌悪感を隠そうともせずそう尋ねた響に、目の前の男・須田芳士はニヤリと口角をあげた。
「相変わらずその喋り方は変わっとらんねんな、お前」
「…いいから私の質問に答えてください。何しに来たんですか」
「何や、何しにもなんも、ついさっきまで同じレストランにおったやんけ」
呆れたようにそう言う芳士に、響の鋭い切れ長の目がさらに細められる。
「私はそういうことを訊いているんじゃありません!……あなたは、大学までエスカレーター式であがれる中学に通っていたはずだ」
「その通りやけど?けど、俺がそのままエスカレーターであがるか外部進学するかなんて、俺が決めることであってお前にぐちゃぐちゃ言われるようなことちゃうやろ」
「…それは」
「何、それともお前、まだあの時のこと気にしとんの?」
そう言って、芳士はニヤニヤと笑いながら近付いてきた。
(逃げたら…負けだ…)
響は思わず後退りしそうになる足を叱咤してその場に立ち尽くす。
握りしめた拳が震えているのが自分でもわかった。
「なあ?響ちゃん」
黙って立ち尽くしていれば、芳士はそう耳元で囁いてくる。
「馬鹿にするのもいい加減に…!」
「なんて口では強いこと言ってても手ぇ震えてんで?」
思わず殴ろうと拳を振りあげたものの、その手を逆にやすやすと掴まれ。
「お前ん家、ほんまは歩いて帰ったほうが近いような距離ちゃうやろ。嘘ついてでも一人になりたなるぐらい、俺と会って動揺してたんや?」
掴んだ腕を引き寄せてまた耳元でそう囁かれる。
「や、め」
「なんなら今日俺ん家連れ帰ったってもええけど?あの時みたいに」
そう言って芳士の手が腰をまさぐってきた、その瞬間。
「ふざけるのもいい加減にしてください!」
響は力一杯芳士を突き飛ばすと、そのまま夜の街を自宅まで全力疾走した。
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