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雨のち曇 05にしおりをはさみました!
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雨のち曇 05
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昼時になり、聡は弁当と傘を持って教室を出ようとした。
「あの…!」
後ろから掛けられた声に振り向くと、そこには昨日の昼に声を掛けてきた女子生徒が二人居た。
「昨日はごめんね…」
「あ…いや、大丈夫…。」
弁当の事を謝ってきたのであろう。
すっかり忘れていた聡は、視線を泳がせながら返した。
「うちらさ、速水くんと仲良くなりたいんだけど…友達にならない?」
「…え?」
「いろいろ相談したいこともあるし!」
ニコリと笑顔を向ける相手に対して、聡は嬉しく思えない。
恐らくは自分を経由して、成美に近付きたいのであろう事は察しがついた。
「あ…いや…えっと…」
「…速水くん?」
「ご、ごめん!」
ギュッと目をつぶり、勢いで相手に伝えると、逃げるようにしてその場を去る。
後ろから呼び止めるような声が聞こえたが、聡は振り向くことは無かった。
体育館裏に着くと、珍しく成美が先に到着していた。
少しだけ息を乱している聡へ、怪訝そうに視線を送る。
目が合うと、気まずそうに聡は視線を逸らして、息を整える為に息を吐き出した。
成美に背を向けて座ると、弁当を開ける。
自分の好きなメニューにも関わらず、今一テンションが上がらない。
会話も無く黙々と昼食をとり、いつもよりも早く食べ終わってしまった。
「…あのさ」
沈黙を破ったのは聡だった。
「俺…明日から…教室で食べるから…」
何も答えない成美の横に、スッと傘を差し出す。
「傘…ありがとう…」
掠れた声で伝える。この傘を渡せば、きっと成美との関係性も途絶えるだろう。
唇を噛み締め、右手から消えるであろう重さに覚悟を決めた。
しかし、右手から傘が離れる事は無かった。
代わりに、成美の声が静かに響く。
「なんつー顔してんだよ」
「え…?」
「傘、面倒くせぇから帰りに返せ」
成美はそう告げながら立ち上がり、足早にその場を去る。
「は!?おい、ちょ、ちょっと…!」
聡の制止の声が虚しく響く中、成美の背中はどんどん遠退いていくのであった。
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