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have a fit(発作)にしおりをはさみました!
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have a fit(発作)
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帰りの車の中。ホテルを出ると小雨が降り出していた。
「今回は特に何もすることが無かったが、まあそういう日もある」
押し黙ったまま窓の向こうの景色を眺めるテルに、同じくフロントガラスを拭うワイパーを見ながら白島は呟く。
テルの様子がおかしいのはこんな理由じゃないと分かっていたが、声をかけて何か一言でも喋らせたかった。
ぼそり、と少年は口を開くがガラスを叩く雨音にかき消され声は運転席まで届かない。
そうとも知らず白島はまったく頑固なクソガキだな、と内心で悪態をつきハンドルを回す。暫く走行し、信号が赤に変わると車はゆるやかに止まった。
突然、助手席に座る影がもぞりと動いた。
「っ」
空気のつっかえるような音。なんだ、と今まで大人しく座っていたはずのテルに視線を移せば、彼は前屈みになり胸を押え苦しんでいる所だった。
「おい?」
「っ……っ、」
返答が無い。少年は全身をぶるぶると痙攣させ片手で胸元を服の上から強く握りながらもう片方の手でポンチョの下を探っている。
急な異変に白島は戸惑ったがテルに気を取られていたら後方からクラクションが鳴った。信号は既に青に変わっている。
ひとまず車を発進させ大通りから小道へ入り、一旦脇へ停めた。テルを見ればどこからかピルケースを取り出している。
呼吸を荒げたまま手のひらに薬らしきものを2、3個転がしそのまま口に入れた。肩を震わせながら飲み込む。車内は暗くハッキリとは確認できないが、そのような行動をしていたことは間違いない。
「おい、大丈夫か?」
見る限り大丈夫でないのは確かだ。白島は急いで車を降り、雨の中自販機を探しに行った。
水を買って戻ってきた頃には少年は先ほどより大分落ち着いていたが、ゼーハーと呼吸は荒いままだ。車内灯をつけ、キャップをひねりペットボトルを差し出す。
テルはそれを受け取ると、待ってましたと水を一気に飲み始めた。4分の1程飲んだところで蓋を閉め、そのままパタリと背もたれへ倒れるその額には汗が滲み肌は土気色をしている。
目を閉じふうふうと息を整えるテルに一先ず安心した。
「お前…病気なのか?なんなら医者の所に連れていくぞ?」
その言葉にテルは気怠げに首を振る。余計な事はしないでくれ、と言いたげな表情だ。
彼が薬を飲んでいるところを見るのは今回が始めてだった。しかし、ピルケースを持ち合わせているということは何か持病でも患っているのか?発作だったのか?
先程の苦しみ方は尋常ではない。
そう考えだして一つ思い当たることがあった。しかし、今の状態では問いただすのは酷だろうと判断する。
ようやく少年が落ち着きを取り戻したところで車のエンジンをかけた。
先程より雨脚は強まっていた。
はたしてこのまま連れて帰ってもいいのか悩む所だが、病院に行けば本人が嫌がることは間違いない。いざとなったら拘束してでも連行するか、と白島は自己完結しテルに問いかける。
「晩飯、どこかで食って帰るか?」
その提案にテルは小さく唸ってから声を絞り出した。
「家が…いい」
「…はいよ」
2人が乗ったセダン車は再び大通りへと引き返した。
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