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先輩にしおりをはさみました!
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先輩
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「…あの、黒尾さんって、どこ行ったんですか……?」
「言うなって言われてる」
その言葉を聞いて、嫌な予感は的中したと確信を持つ。
教えてください。
僕のその言葉にむっとしたように、だから教えられないって、と言葉が返ってきた。
「黒尾さんが心配じゃないんですか!?
先輩がたとえ『あの人なら大丈夫』って心配してなくても、僕は黒尾さんが心配なんです、だから、」
「うるさいな。クロなら絶対帰ってくる」
その瞬間に通知が鳴る。僕の携帯。
恐る恐る開くと、あいつらのアドレスから。
『蛍くん〜?早く来ないとクロオサンが大変だよ〜笑』
頬も目も赤黒く腫れた顔。地面と白いTシャツに落ちている黒尾さんの血。
血の気が引いた。
それを横から覗いた孤爪さんの表情が一変して、
持っていた端末が投げられる。
地図機能が表示されたその画面には、クロと書かれた位置情報が載せてあった。
「っ、ありがとうございます……っ」
「…いいから早く行きなよ。
俺はクロとの約束を破ることになるから、ここからは動けないけど」
きっとそれは口下手で僕と少し似ている先輩からのアドバイスで、だから僕はそれをありがたく受けとった。
痛い。走ると体がきしむ。
それでも走りながら、覚悟を決めて通話ボタンを押した。
「っ黒尾さん!」
叫びながら中に入ると、その人からは悲痛な声が返ってきた。
「何で来たんだよ! お前が来たら意味ねーだろ!」
僕がここに来ても、意味なんてない。
今この人はこう言った。
なんでそんなことあなたに決められるんだ。
僕の方が身長だって高くてれっきとした男で、黒尾さんほどじゃないけどちゃんと筋肉だってついてる。
助ける方法だって考えられるのに、彼は僕を弱いものとして扱う。
守られるだけの関係は、いつかなくなりそうでこわいのに。
「……何で俺の言うこと聞いてくれないんだよ………」
悲しげな声。悔やんでも悔やみきれないみたいに。
そんな声に嗚咽が漏れそうになる。
必死に隠してきた想いが口から出そうになって、それをも押さえつけようとした結果、僕の口からは怒りをまじえた言葉がこぼれた。
「っ、だって、だって、黒尾さん何も言ってくれないじゃないですか!! これは僕の問題のはずで、なのに黒尾さんが、僕なんかのために、動いたり、っ、ひっ、く……動いたり、するから……っ」
涙が止まらない。
なんで出てくるのかもなんで止まらないのかも分からないけど、でも僕は黒尾さんを安心させてあげたかった。
僕は大丈夫だよって言いたかった。
「あー、感動の再開してるとこ悪いんだけど、そこの、何だっけ、クロオサンのこと助けたかったらちょっとこっち来てくれるかなー蛍くん?」
だから、こんなやつらには屈しない。
絶対戻ってきて、黒尾さんに言いたい。
男に掘られてよがってるやつなんて嫌だろうけど、そんなやつの告白なんて受けたくないだろうけど、でも、逃げないでちゃんと言いたい。
あなたが好きです。
ああ、僕はちゃんと笑えてるのかな。
この人のことを安心させてあげられてるのかな。
「……大丈夫だから」
「へー今日はえらく素直じゃん?やっぱり気持ちいこと好きなんだね」
「っ」
気づいてないみたいだけど、黒尾さんの息が反抗を示すように詰まった。
僕とおんなじタイミングだ。なんか安心するな。
「……じゃあ始めようか。」
服に手をかけられて、再びあの悪夢が襲ってきた。
「っあ゙、あ゙ぁ、っ、ーーっ、」
慣らしもせずに突っ込まれた後ろが引きつっていて、 無理な体勢に腰が悲鳴を上げる。
それでも媚薬を使われた体はそこに快楽を見いだして、血とともにそこから白濁をあふれさせた。
もう自分の腹にも臀部にもかぴかぴしたそれがついている。イキすぎて頭が痛いしそろそろイケなくなるんじゃないかとも思う。
「だいじょーぶ、月島くん?」
首を横に振ると、でもあと何回か頑張ろうねーと声をかけられる。
「ゃ、も、むり…………」
かすかに出た声にひとりの男が「じゃあ代わりにクロオサン犯していい?」と言ってきた。
「らめ、だめ、くろぉさ、らめ……」
「なら『くろーさ』のためにも頑張ろうね?」
泣きそうになりながら小さく頷く。
だって、黒尾さんにだけは何もして欲しくないから。
黒尾さんが何かされたら、僕がここにいる意味もここに来た意味もなくなってしまう。
だから、その人だけは傷つけないでほしい。
もってくれ、僕の体。
あと、あともう少しだから。
「そこで何をしている!!」
尻に打ちつけられる痛みが唐突に止まり、中の質量が抜けていく。
「警察……?
おいおい月島くん、こーゆー事しちゃう?」
男のひとりが冷や汗を浮かべながら問うてきた。
だから言ったじゃないか。
「……ぼく、は、泣き寝入りなん、か、しない……」
「だからって、自分が犯されるのを人に見られて大丈夫とか……真性の変態なんじゃないの?」
ギリ、と歯ぎしりが聞こえた。
「今すぐ殺してやろうかこのクソ野郎が……っ」
痛いほど握りしめられた拳。それは今にも動き出そうとするのを押さえつけるように震えている。
そんなの、こっちの方が痛いよ。
軋みで涙が溢れてくる体を必死に動かす。
黒尾さん、ねえ、好きなんです。
だから、そんな顔をしないでください。
僕のせいで、そんな顔しないで。
不意に後ろから抱きつかれて揺らめいたその暖かい背中は、僕の腕を解いて強く抱きしめた。
「くろ、さ……」
「…………ばかやろう……」
とめどなく涙がこぼれてくる。
なんで、なんで。
こんなに好きなのに、僕が汚くなったせいで一緒にいられない。
こんなに好きなのに、この人の近くにはいちゃいけないんだ。
「……っ、ぁ……く、ろお、さん……」
僕の目を見て首をかしげる彼に、ひとつの大きな想いを告げた。
「……好きです…………」
その後のことは覚えていない。
あまりの重圧に意識を手放した僕が目覚めたのは黒尾さんの部屋で、でもそこに、部屋の主の姿はなかった。
代わりに孤爪さんがいて、クロは出かけてるけどあと10分くらいで帰ってくるなんて言うから、ただ逃げ出すために荷物を手に取って、
そして、僕は逃げ出した。
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