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全てのハジマリにしおりをはさみました!
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全てのハジマリ
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腕時計を見れば、チャイムが鳴り終わってから既に十五分が過ぎていた
ちらりと新山を見れば、先程から変わらずただ俯いたまま動かないでいる。
(さっさと要件を言えよ……)
俺から言葉をかけ話を聞こうにも、新山は俯いたまま何も喋らない。
取りあえず距離を詰めようかと一歩踏み出せば、新山は肩をビクッと震わせ、俺が近づいた分一歩下がった。
これでは…まるで俺が新山をいじめているかの様ではないか
(これでは埒が明かないな)
「あの、新山君…」
声をかければ新山はビクッと肩を震わせた。だがそれには気が付かない振りをして続ける。
「済みません、新山君。僕これから用事がありまして…本当に申し訳ないのですが、また今度にしてもらえないでしょうか?」
「あっ………」
「本当に済みません。新山君が良ければ明日にでも…駄目でしょうか?」
すると新山は考える様な素振りを見せた後、小さく頷いた
その肯定に思わずほっとする。
「ありがとうございます、新山君」
では、と俺は新山に済まなそうな表情(かお)で頭を下げた。
?
廊下を歩けば様々な人に声をかけらる。
「秋山先生、こんにちは」
「おぉ、日向君、この前のテストでまた学年トップだったそうじゃないか」
「えっと…あのテストで秋山先生に教えてもらった問題が出題されたんです。一番が取れたのは秋山先生が教えて下さったからです」
また聞きに行っても良いですか?と尋ねれば、いつでも来なさいと秋山先生は顔を綻(ほこ)ろぼせた。
「「日向様っ、さようなら」」
「米田(よねだ)君、安原(やすはら)君、さようなら。」
けれど帰る際はお気を付けて帰って下さいね?、お二人とも可愛いいのですから。
二人そろって声をあわせる彼らに俺は優しい微笑み浮かべながら、けれど同時に心配の言葉をかける。
すると二人は自分達が心配された事に驚いた様な顔で見合わせると、嬉しそうな表情で俺を見てありがとうございますっ!!と。声を挙げた。
「あっ、日向ちゃんっ、また今度で良いから部活見に来てよっ!」
「はい、笹原君。今度行かせてもらいますね」
「ほんとっ!!絶対だよっっ!!」
サッカー部のエースである笹原の言葉に頷けば、「待ってるよっ!!」と笑顔で言われ駆けて行った、と思えば、再び戻って来る。今度はどうした。
「あ、ねぇ日向ちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「もし良ければなんだけど、またゼリーを作ってきてくれない?」
凄く美味しかったんだ。笹原は軽く頬を染めて、ポリポリと指でかく。
ゼリー…あぁ、この前試合を見に行った時に作ったゼリーか。
試合で疲れているならあっさりとした冷たい物が美味しいかななんて思ってレモンゼリーを作ってみたのだけど…思ったより好評だったみたいだ。
ま、ゼリーなんて作るのもそんな大変じゃないし。
「あんなので良ければ喜んで」
「マジっ!?やった―!」
ガッツポーズをつくる笹原。
けど笹原。俺のゼリーなんかより食堂のシェフが作ってくれたゼリーの方が絶対美味しいと思うのだが?
…ま、どうでもいいか。
なんて思っていても、褒められて恥ずかしいという表情を作っておく。
声をかけられれば、言葉を返す
手を振られれば、手を振り返す
笑顔を向けられれば、微笑みを返す
まるで鏡の様だと、我ながら思う
(本当にめんどくさい…)
けれどあいつが望む限り、あいつが思い描く日向奏はそうでなければいけないのだ。
ゆっくりとした足取りで廊下を進んで行く内に、だんだんと人の姿が消えて行く。
まぁ、このエレベーターはある生徒もしくはそれに関係する者しか利用できないのだから、当たり前だ。
その為、エレベーターの前に来た時には、辺りには俺一人。
(利用者が少ないんじゃぁ、このエレベータ無駄だろうに)
さすが金持ち学校と心の中で嫌味を言いながら、俺はエレベーターに乗り込むと、迷う事無く最上階へのボタンを押した
?
『生徒会室』と書かれている扉の前で、俺は再度時間を確認する。
確認すればあいつが指定してきた時間の約三分前
まぁ、これ位なら許容範囲だろう思い、俺は扉の脇にあるインターホンを押した。
『…はい、生徒会室です』
「お忙しい所済みません。僕は二年S組の日向奏と申しますが…」
『ご用件は?』
「今日生徒会室に来るようにと若槻(わかつき)副会長に言われているのですが…若槻副会長はいらっしゃいますか?」
『確認致しますので、少々お持ち下さっ……』
『あぁ、奏?ちょっと待っててね!今開けるから~』
聞き覚えのある声が聞こえると同時に、ぶちっ、と通話を切る音が聞こえた。
そして暫くすると、扉の中からバタバタと走ってくる音が聞こえてきた。
俺が扉から数歩下がると同時に、中から見知った顔がひょこっと顔を出す。
「良く来たね、奏」
俺を呼んだ若槻副会長…若槻(わかつき) 朋宏(ともひろ)は俺を見てにっこりと笑うと、俺の手を無理やり掴み中へと招きいれた。
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