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172.✩タイミングにしおりをはさみました!
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172.✩タイミング
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✩✩✩✩
夕食の時も寝る前にリビングで寛いでいる時も、俺はいつバイトのことを言おうか、と今日に限っては楓さんとの距離を測りかねていた。
柚里が言うに、楓さんはバイトに反対らしいからここは慎重にいきたいところだ。
桜さんがいれば何かと話題が尽きないけど、俺と楓さんはずっと会話しているわけじゃない。話のネタがなかったり遠慮してるんじゃなくて、話さなくても通じ合えるっていうか……会話がなくても居心地が良いというか、まあ、そんな感じだ。
同じ空間に楓さんがいるだけで幸せだから、特にアクションも起こさないでいた。
楓さんはテレビドラマを見ながら、ラグに座って桜さんの雑誌を読んでいる俺の髪を黙々と弄っている。
雑誌に載っている桜さんはキリッとしていて俺の知っている桜さんとは真逆のイメージだ。こういうのを仕事の顔っていうんだろう。
「…………楓さん」
「んー?どうしたの?」
「くすぐったいんだけど……」
時折耳やうなじを掠めていた指先が、ドラマが終盤に差し掛かるにつれて何度もそこを触るようになっていた。楓さんは俺の弱いところを知ってるから、きっとわざとやってるんだ……。
振り返って楓さんを見上げると、しれっとした態度を取られた後にっこりと微笑まれた。その笑顔にキュンときたけど、俺はふいっと雑誌に向き直る。
ここで構ったら確実に楓さんに流されると思った。抱かれる前に話さないと……。
そうこうしている間に、楓さんの手がニットの中に入ってきた。
「ひゃっ!……楓さん、やめてって……!くすぐった………」
「……本当にやめてほしい?」
「…………は、話したいこと、あるから……やめて……」
「話したいこと?」
今切り出すしかないと思ってそう言うと、楓さんは肌をひと撫でしてニットから手を出した。ちゃんと話を聞いてくれるみたいで、俺はほっとして楓さんの隣に座った。
「なに?話したいことって」
「その……俺、バイトしたいんだけど……」
「バイト?」
一気に声色に不機嫌さが出て、楓さんの眉間に皺が寄った。え、やっぱりこの話、地雷だった?
「…………なんで?遊ぶ金が足りないの?旭の一人や二人くらい、養っていくつもりだけど」
「ちがっ、そうじゃなくてっ!……とにかく、バイトしちゃダメ?楓さんに迷惑はかけないから!」
「……………………」
楓さんは険しい顔をして目を瞑って考え込んだ。どうしてここまで渋るんだろうと思っていると、しばらくしてから、はあ、と大きなため息が聞こえた。
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