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失敗
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「……あれ?」
麻理子に伝えられた商品に、龍希は何か覚えがあるな、と言う疑問が生まれた。
「このシャツ……確か……」
言葉に出す事で思い出そうとしたが、自力で思い出すより先にすぐに飛び込んできた麻理子の台詞で全て理解をした。
「はい……発注日の時間内に間に合わなくて、店長に引き継いだ分です。」
飛び込んできた麻理子のその台詞から、数秒も考えてないかもしれない。
すぐにそれが何故入荷していないかが、明白になり、
同時に自分の犯したミスに気付かされ、龍希は声を詰まらせた。
そう、麻理子に頼まれ、すぐに発注書をFAXするはずだった。
しかし、その日の自分は、それをしていないようだった。
慌てて見返したその日の発注書には、
追加の文字の下に、その商品ナンバー。
そこには、FAX済みのマークはされていなかった。
「……店長…FAXしてない…ですか?」
麻理子の息を呑む問いに、龍希何を口にするよりも先に彼女の眼を見て真っ直ぐに謝罪をする
「……うん、ごめん、オレのミスだ。」
しかし、沈黙を続ける事なく、龍希はすぐさま本社へ連絡を入れ、本社内にはすでに在庫が無い事を確認しつつ、その電話の合間にすでにパソコンで、他店の在庫を虱潰しに調べはじめた。
数秒でも「どうしよう!」となる時間が生じると思っていた麻理子は、そのスピードについて行けないまま、それを見守るだけとなった。
「まぁこ、これお客様オーダーだね?」
「…!え、あ、…」
突然の問いにすらついて行けず、答えに遅れる麻理子を気にとめる事もなく、
「お客様のお名前は?いつもの人?」
その問いにようやく答えた麻理子に、
ありがと、大丈夫だよ。
と、伝えると、その商品が残っていたのであろう店舗に連絡を取り出した。
商品は常連客の中でも、何かと気難しく、クレームに繋がる事の多い客からのオーダーで、
明日の朝には取りに来る。と言われているものだった。
在庫が有った店舗には新幹線で行けばその店舗の閉店までには着く。と、いった距離だ。
連絡をして、今すぐ取りに向かう他ない。
幸い仲のよい店長仲間の店だ…と、胸をなで下ろしていた龍希の耳に電話越しに飛び込んだのは、
最も苦手とする者の多い本社勤めの上司の声だった。
偶然、その店にヘルプにでも来ていたのだろう。
何の不運だ…。
とは言うものの、事情を話さず店長に代われとはいかず、全ての事情を話すと、
「…あのさぁ、龍希ちゃん……」
いつもは「日尾」と苗字で呼ぶはずの男のこの言葉に、その後に続く罵声の覚悟を決めた。
案の定、
想定通りに続いたのは、当たりの強い言葉のオンパレードである。
繰り出す言葉は悪いが、この男の強みは、理不尽に間違いは言っていないところだ。
やや、言い方に問題があるのだが。
こうなると、もう何度でも電話越しに頭を下げ続けるしかない。
過ぎ去った嵐の後、変わって電話に出た、その店舗の店長に、
「いいよ、いいよ、待ってるから。」
と宥められ、さらに申し訳ない気持ちになり、
龍希は、溜め息と共に電話を切った。
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