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「涼しい顔してるけどさー、龍広くんも実はほしいんでしょ、彼女!」
彼は肘で俺の脇腹をつついてきた。
「絶対ご利益あるよ! もしできたらさ、今度、Wデートしよっ」
浮かれたようにそんなことを言う。
その気の抜けた顔を見ていると喉の奥がグッと詰まるようだった。
「……バカが」
やっとの思いで口から出たのは、そんな悪態だった。
それ以外、何も言えなかった。
「はいはい! バカで結構!」
響は最後に賽銭箱へ小銭を放りこみ、最後の柏手を打った。
作法もへったくれもない。めちゃくちゃの参拝だった。
俺は茫然としたまま、何も願えずに立ち尽くすしかなかった。
胸の奥底が治りかけの傷のようにじくじくと痛んだ。
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