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the same
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「……やべえな。」
思わずそう口にしてから、言霊なんてものを思い出してまたやばいと思った。
正直、化け物がいるこの空間でも俺は言霊なんてものはあんまり信じていない。
でもこの1年半、特に仲間が次々と死んでいく時には藁にもすがる思いで願っていた。
大丈夫、きっとなんとかなる。
なんとかなって、また全員で笑い合うあの日が来る。
そう願ってでもいないと、俺の方がもうダメだった。
ま、一人になってしばらく経つとメンタルもガッチガチになってきたんだけどなw
それでも、今ここにはあの頃とは違う仲間がいる。
失うって怖いんだよ。
結果から言うと、二階にも青峰はいなかった。
そのまま三階に上がって探し始めてもう半周はいった。
それでも青峰はいない。
というか、化け物もいない。
そこで考えられるのは二つ。
一つ目は俺が運よく化け物と微妙な距離で歩いていた説。
二つ目は、青峰が引き寄せてしまった説。
俺としては一つ目を願いたいところだけど、やっぱり二つ目の方が可能性として高い。
走って出ていったと桃井さんが言っていたし、一階にいたあの聴力やばい化け物もいつも比較的ホールの近くにいた。
直線の道じゃ勝てないと思った青峰がエスカレーターで上の階に上がっていくのも頷ける。
そんで、逃げながら他の階の化け物も引き寄せちゃったとか。
じゃあなに、青峰今化け物の引率みたいな感じ?ww
急いで半周分探して四階に上がるエスカレーターを駆け上がった。もちろん静かに。
四階には確か、大型の電気屋とかがあった気がする。
かく言う俺も、一人では一回しか行ったことがない。
ここには嫌な思い出がありすぎる。
感傷に浸りかけたその時、何かが俺の耳に届いた気がして顔を上げた。
「… … ……」
聞こえた。
今確かに誰かの叫び声がした。
…なりふりなんて、構ってられっか。
全速力で走る。もう音も気にしてる場合じゃねえ。
少しずつ見えてきた化け物集団。それの先頭を走る、海のような髪の…
「っ、青峰ぇ!」
バッと振り向いたいくつかの化け物が、獲物を俺に変えて方向転換してくる。
大きいやつに混じって、子供くらいの小さいやつがちらほら。
それをバットで殴り飛ばしてほかの化け物に当てる。
「高尾!」
少し遠くなった場所から青峰の声が聞こえた。
声からして、だいぶ疲労が溜まってんな。
「とにかく走れ!すぐにそっちに行くからそれまで捕まるなよ!」
大きいやつは倒してる暇がない。なるべく小さいやつをフルスイングで大きいやつに当てまくる。ついでに銃で足を撃つ。
動きが鈍くなった瞬間を狙って足にバットでフルスイング。
なんかやけに体が軽い。もしかして、強くてニューゲームでもしたか!?w
足を潰し終わったと確認してすぐに青峰の方に向かう。
俺の方に来たやつらよりも数が多い。
「悪い!遅くなった!」
青峰と並走する形で走りながら顔を見ると、泣いてはないもののちょっと必死な形相になっていた。そしてガングロもいつもより黒い。
「てか何でこんなに化け物引率してんの!?w」
「引率なんて死んでもしたくねえよ!一階の化け物から逃げてたらいつの間にか増えてたんだよ!」
「マジかー!これお前のバット!」
やっぱり予想当たってたかーと思いつつバットを譲渡。素直に受け取ってることから別に死にたいわけじゃねえんだなと確認。
「なんで出てったんだとか、なんか知ってんのかとか、とりあえず聞かないでやるから赤司んとこ戻ろうぜ!」
「…っ」
あれ、なんで答えねえの?
もう一度問いかけようと青峰の方を向いた時、キュッという音と一緒に青峰が止まった。そのまま、化け物の方へ突っ込んでいく。
「っおい!!青峰!!!」
何やってんだあのガングロ馬鹿!?
上からバット振り下ろして化け物を潰した青峰。
ぅゎ、脳筋こゎぃ。ww
続けざまに二体、三体と化け物を潰したり吹っ飛ばしたりする青峰に加勢する。
「青峰!お前がなかなかに強いのはわかったから!でもこの数じゃ流石に無理だ!引き返そうぜ!」
「無理に決まってんだろ!」
い や な ん で だ よ !!!
何が決まってんだ!?流石の高尾くんも怒るぞ!おこだぞ!
「この俺が、帰れるわけ…っ!」
ほんの少し動きを止めた青峰に、ここぞとばかりに迫る化け物。
咄嗟に突き飛ばしてから俺も攻撃を避ける。わずかに左腕をかすったけど気にせず乱射。
やばい、囲まれそうw
「とりあえずコイツら撒かないと話にならねえ!お前靴脱げ!」
なんでローファーとか履かなそうなのに履いてんのこのガングロ!!おかげでコツコツうるさいわ!
すぐにポイポイと靴を脱いだ青峰はそれをそのまま化け物にぶつける。目にクリンヒット。
…臭そう。
まぁ、臭いかどうかは置いといて、効果はばつぐんだったらしい。
ついでに走る音も小さくなり化け物の動きが鈍くなる。
「青峰、何かいらねえもん持ってない?」
「さつきから貰ったアメなら持ってる。」
桃井さんからの飴とかいらなくないんですがwww
でも、この状況ではそれくらいしかない。
「それ、ちょーだい。」
受け取ったアメを、中央に差し掛かった時を見計らって橋の向こうに投げた。
ぎょっとする青峰wwすまん桃井さん。
カツン、と響いた音に半分くらいの化け物が反応して走っていく。残りの半分も、動きが遅くなって音の方を見つめる。
その隙に道を曲がって非常階段に走る。息を殺して、物音一つ立てないように。
ベタベタ、ぐしゃ、ぼとっ。
足音がだんだん遠くなるのを聞き届けてからドアを開けて中に体を滑り込ませた。
完全にドアを閉めたのを確認してから、ドッと息を吐く。
「はぁ〜〜、なんとかなったか…」
軽く10年は寿命縮んだっつうのw
青峰も青峰でしゃがみこみながら荒い息を整えてる。
…さて。
「んじゃ、理由をお聞かせ願おうか、青峰。」
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