アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
真夜中の_2にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
真夜中の_2
-
抱え上げられたまま、僕は優也さんの部屋に運ばれた。
何度も降ろしてください。と頼んだものの、全力でスルーされてお姫様抱っこされたまま連れてこられたのだ。
ほんの数軒先、とはいえ深夜でよかったと真剣に思った。
のに、優也さんのマンション1階にはコンシェルジュがこんな真夜中にも関わらず常駐していた。
「こんばんわ。先日お話した新しい住人です。秘書室のメンバーですので、これに伴って警備の強化をお願いする事になると思います。その際にはどうぞよろしくお願いします。」
こんな格好で人に会いたくなんてなかったけど、奏介さんが挨拶をするので、仕方なく僕も倣って頭を下げた。
「宅配、郵便は必ずここを経由して受け取る事。部屋にいる間の呼び鈴はコンシェルジュからの呼び出し以外は応じる必要はない。外から直接鳴らされたものに、間違っても応対するなよ。」
「は、い。」
こんな体勢で日常生活の注意をされる男をどんな目で見ているだろうか…。
不安でたまらなかったけど、対応してくれた男性はとても優しい目でこちらを見ていた。
「南野愁さまですね。私このマンションの保守を担当しております末永。と申します。何かご心配がありましたら、お部屋からご連絡ください。私どもが24時間警備させていただきます」
にっこりと柔らかく微笑む男性には見覚えがあった。
多分あの外の藤棚を手入れしている人。
そうか、このマンションの住人ではなくて…
「よろしくお願いします。こんな格好ですみません…」
申し訳なくて深々と頭を下げる。
「お気遣いなく。深夜ですのでゆっくりお休みくださいませ」
エレベーターに向かおうとした優也さんの腕から身を乗り出して再び声をかける。
「あのっ、藤棚、毎年とても見事ですね。僕、あんなに綺麗な藤棚をこんな身近で見られると思っていなくて、感動しました。ありがとうございますっ」
…
し、しまった。
これは、空気を読めない発言?
立ち止まってしまった優也さん、驚いた顔をしている奏介さん。
「す、すみません。つい…」
「い、いえ。ほとんど趣味のような物ですのでそんな言葉をかけていただけるとは光栄です。もうすぐ見頃が終わってしまいますが、屋上の方にも色違いを栽培しておりますのでよろしければご覧になってください。」
いい人だなぁ。
「お、おやすみなさい」
こんな時間に自分の父親くらいの年齢の人を働かせておいていいのだろうか。
エレベーターに乗った途端にため息をつく2人。
「すみません。あの…どうしてもお礼が言いたくて。藤棚に何度も癒されたので…」
ぽんぽん、と頭を撫でる優也さん
「お前のな、その天性の…いや、何でも無い」
「こんなにかわいいんじゃ、ゆうくんじゃなくても心配だね。とりあえず体調が万全になるまで2人ともしばらくお家で仕事してもらうよ。ゆうくんも、いいよね。愁くんには覚えてもらう事が色々あるから今日の所はこのままゆっくり休んでね。」
僕はダンボール2つと通勤用の鞄1つだけ持って、取りあえずのお引っ越しをしてしまった。
部屋について、ようやくその腕から降ろしてもらった僕は奏介さんに運んでもらった荷物を受け取る。
「あの、奏介さん…すみませんでした。明日からも、よろしくお願いします」
「このくらい、どうって事ないんだよ。もう少し気楽にやっていこうね」
奏介さんがそう言って爽やかに立ち去った瞬間に気付いた。
ゆらりと不機嫌な気配をたてる優也さんに…。
あれ、おかしいな。
いつの間にこんな不機嫌になってしまったんだろうか。
僕はにっこり笑って優也さんに向き合った。
「優也さん、ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします。」
同居人として最低限の挨拶を今更ながらしておこうと思ったのだ。
が…
ドン
壁に追いつめられる。
視線を外す事も、壁についた両腕から逃れる事もできない。
ええーっ?
えっと、これが噂の壁ドン…
って、そうじゃなくて、何でこんなに怒ってるの。
「愁、本当にこれでよかったのか?」
「ゆうや、さん?」
降ってきた熱い唇が、何を言おうとしているのかわからなくて途方に暮れる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 155