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正木の出張 １にしおりをはさみました!
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正木の出張 １
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移動で１日潰れますね」
「日本は小さいっていうけど、充分広いわよ」
鈴木さんと俺は会場開発と媒体のリサーチをするために、とある都市に移動した。目的の都市の周辺にある空港は千歳からの直行便がない。一番近い（充分遠い）空港を利用すると、到着するのは夕方。そこからバスで駅に向かい新幹線に乗った。
「乗り換え案内に掲載されている「所要時間」を見ないようにしています」
「それ正解」
平気で１０時間なんて表示が出てくる。北海道は何処にいくにも時間がかかる、そしてお金も。
「この経路だと営業も搬入日の前日入りしないとどうしようもないですよね」
「そこは考えないと。私と正木二人で搬入日前日入り。翌日の搬入を朝から二人でする。その日の夜に営業到着。会場チェックしてもらって翌日オープン。これがパターン１」
メモメモメモ！
「パターン２。全員オープンの前日に移動。初日はオープンを午後からにして午前中でイッキ搬入。
パターン３。私と正木で搬入。営業の半分は搬入日の夜に到着。翌日は半分で会場を回す。夜に残りが合流。二日目から全員体制」
「いずれにしても通常のパターンでは難しいということですね」
「移動コストと人件費。この都市規模でペイできるラインを考えたら多くは望めないよね。レギュラーとしてカウントできないエリアだから初回の刈り取りが大事。５日間の開催は無理でしょう？」
「『コミニティセンターぱるん』は会場費が安いから選ぶ会場によってもスケジューリングが変わりますね。もう一つの『流通センター』は安くないですし」
「計算細かくやってね。搬入日と営業日で会場費が違うから。冷房費込かどうかの確認もしておいて。今日は候補の会場を見るには遅すぎるから明日まとめて確認ね」
俺はパターン３のメモを読み返し、ウゲエとなる。言われた３パターンのみの計算表を作って渡してＯＫを貰える段階はとうに過ぎた。これ以外に策はないか？他のルートは？全部潰していかないと。
実はパターン５まであるのに俺に言わなかった可能性だってある。言われたことだけをやって褒められるのはペーペーの頃だけだ。常に考えて「他」の可能性を追う。この思考が日常化したレベルまで漕ぎつけた俺だけど、鈴木さんの背中はまだまだ遠い。
格好いいデキル上司。俺の憧れで尊敬できる人。これで性格と容姿が申し分なしって、神様はどれだけ盛ったのかって話じゃないか。時々狡いな～とひがみ根性が顔をだすことがあるけれど、ギュウとひねりつぶす。パッケージやスペックは自分でビルドアップ。メンテナンスを怠らずハイクオリティーを目指すのみ。こういうポジティブな思考回路も鈴木さんから教わった。
ホテルにチェックインしたのは２０：００を少し回った時間。今晩はコンビニ飯だな～なんて考えながらルームキーを受け取る。
「荷物置いたらロビーに集合」
「え？」
「まだ仕事は終わっていないよ」
そんな笑顔で言われても。俺のエネルギーはスッカラカンだというのに、まだ仕事するってこと？
「会場のリサーチしなくちゃね」
「……はい」
年齢は俺のほうがずっと若いというのに、なんだろうこの差は。やはり神様はズルすぎる。下がりまくったテンションをなんとか引っ張りあげながらエレベーターに乗り込んだ。
シャワーを浴びて着替えたあとにビールの缶をプシュウ！はお預け。
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