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February.14.2016 St. Valentine's Dayにしおりをはさみました!
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February.14.2016 St. Valentine's Day
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「うお~うまそう!」
相変わらずの表現。テーブルの上はそれほど豪華ではない。なんてことのないホワイトクリームシチューが2皿。焼いたフランスパンとリーフレタスと紫玉ねぎのサラダ。あとはお決まりのワイン。
シチューには大粒のマッシュルームをふんだんにいれた。緑鮮やかなインゲンも入っているから色が綺麗だ。鶏肉でもよかったけれど、大ぶりのさいの目にカットした鮭をムニエルにしたものをいれてみた。一応記念日だから、いつもと違う具にしたが、これといって手のかかるものじゃない。
グラスにワインを満たして準備完了。
「おつかれ~。」
「記念日おめでとう。」
「クリスマス&バレンタイン&ホワイトデー万歳。」
「随分つっこんだな。」
「いいの、いいの。いっただっきま~~す。」
アツアツのシチューをぱくついている顔は幸せそうだ。理的に「普通のシチュー」になるホワイトシチューはバレンタインの日に俺が持って行ったあの日から特別な一品になった。時々思い出すとこれが食べたくなるらしい(俺は出来れば忘れたい失態の日でもある。)
今の季節には嬉しいシチュー。真夏にリクエストされることもある。汗だくで食べるのも悪くない。そして大目に作ったシチューの残りはグラタンに変身させる。コーンクリーム缶を加えて味をととのえてからたっぷりのチーズをのせて焼く。ワインがすすむ休日にぴったりの料理だ。明日はさらに茹でたマカロニをいれてみることにした。大きなキャセロールにたっぷり作ろう。
「うまい!うまい!俺、鮭が気にいった。」
「タラも考えたけど、身が崩れてしまうから。」
「なんか食べごたえあっていい。鮭とクリームって合うんだな。へえ~。」
雪まつりは無事に終わり、平穏な日々が戻ってきた。祭り期間中、足が遠のいていた常連さんも顔をだしてくれるようになり、いつもの雰囲気になったような気がする。
雪像はあっさり崩された。毎年必ずニュースに映る動画はショベルカーが豪快に雪像にショベルを突き刺すシーン。それをみると何となくもったいないなんて思ってしまうから不思議だ、たいして興味もないくせに。
自衛隊さんも御苦労様なことだ。
「チョコレート、結局誰が一番だった?」
今日はバレンタインデーだ。去年より働き手が増えたから数が分散して各々の獲得数は減るだろう。これが全員の予測だった。
しかし・・・なんと総数が増えていた。村崎は働き手の数しか考えなかったけれど、客数が増えているから当然の結果なのかもしれないと言っていた。たしかに去年に比べて、日々の仕込み量も増えているし、客数があがっているのは納得だ。ホワイトデーにはいくつのココットを用意すればいいだろう。去年のデータは残っているだろうから、村崎に確認することを頭の中にメモ。
ああ、獲得数の話しだったか。
「一番か?村崎だった。」
「やっぱりね~。ミネに嵌まると抜け出せない感じ、俺なんとなくわかる、」
若干気分が悪いが、いちいち目くじらたてるのも男らしくないから何も言わないでおく。
「トアのチョコレートのラッピングはなんだか黒が多かった。」
「そうそう、甥っこにあげるって喜んでいた。」
「子供なら北川がもらったようなカラフルな方が喜びそうだけどな。」
「ミネと衛と俺は、なんか似たり寄ったりな感じだね。俺は正明に全部あげたよ?クランキーが今年もやってきた。14日に14枚だってさ。大事な日に大事なアイテムって書いてあった。」
「俺はトアに渡したよ。食べないまま放置されるより、甥っこや義姉さんが食べるほうがチョコレートも嬉しいはずだ。」
「それは言えてるね。」
記念日とはいえ、なんらいつもと変わらない休日前の夜だ。特別な事は何もない。 交換されるプレゼントもないしチョコレートも存在しない。
外国では花や本を贈る日らしいが、俺達は特に花に興味がないし、本に関しては意見の一致をみていない。どちらもチョコレートの代わりにならないだろう。
『いつもとかわらない』
きっとそれが一番大事なことで、この形があるからこそ平穏無事に暮らしていることを実感した。共に働き、寝起きを共にする。言葉を交わして相手の存在に寄り添う。
とてもシンプルで、これ以上の答えはないだろうという思い。
同僚として会社で働き、週末を過ごす日々も懐かしくはある。でもあの頃は安心や安定とは無縁だったから、時々懐かしむぐらいで丁度いい。
俺がいて理がいる。
「記念日っていっても、いつもの夜だ。でもなんかそれでいいかなって。シチューは旨いし、明日は休みだ。」
「6日働いたご褒美。シチューはグラタンにするから。昼ごろまでグズグズしたりゴロゴロしたりもいいな。いっそのこと一日中ベッドの中にいようか?」
「・・・なんだよ、それ。」
顔を赤くした理が横を向く。照れている顔はかわいいからついついこういう事を言いたくなる。
「他意はない。そのままズバリだ。」
「むっき~。なんかむかつく。」
テーブルの上の皿はとっくに空だ。ワインもグラスに残っただけしかない。休みを前にした夜にへべれけになる必要はないだろう。グラスを呷って皿を片付けはじめる。
理は風呂の準備のために浴室に行った。
手早く皿を洗い、そのままにしておくことにする。どうせ朝には乾いているだろうから放置しておこう。
リビングにもどりソファに座ると理の足音がペタペタと聞こえてきた。
「衛~。」
「んん?」
首をひねって後ろを見ると・・・理がいた。いるのは当たり前だ。
俺はぎょっとしてソファから立ち上がる。
理は裸だった・・・。
「なに!」
「なにって・・・風呂入るわけだし。」
「いや、わかるけど・・・なんで、っていうか。」
なんだか恥ずかしくなってきた。寝室や浴室じゃない場所で理の裸・・・電気だってついている!
ペタペタペタ
自分の顔は赤いだろう。
両肩に理の手のひらが置かれた。
裸足の足が乗った場所、それは俺の足の甲。
触れるだけのキスが落され、ゆっくり離れていく。
「明日は休みだ。風呂一緒にはいろう。俺間違った?」
「・・・間違って・・・ない。」
一年前と少しだけ変わったやりとり。
胸にせりあがってくる愛おしさを伝えたくて力いっぱい理を抱き締めた。
「理とずっと一緒にいたい。」
「うん、俺も。」
俺達の記念日は始まったばかり。
いつもと変わらない夜が「特別な夜」に。
お互いの存在に安心しよう。そして想いを交換する。
そう、一緒に。
ずっと一緒に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
理の「むっき~」のお返し、全裸攻撃でした(笑)
帰ってきた時に靴の上に理が乗るシチュエーションも考えたんですけど、一年前にもうそれはしているから、違うほうがいいな、と理さんが言うもので。
結果・・・こうなりましたw
相変わらず二人は仲良しです。
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