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危機回避にしおりをはさみました!
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危機回避
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「牧野?」
なぜ、涙が出るのだろう。なぜ、牧野を見ただけでこんなにもホッとしてしまうのだろう。
「くっそ、根暗!」
俺から除けられた明が牧野を睨んでいる。一方、牧野の方を見れば今までに見たことがないくらいの冷たい目で明を見ている。
「悪いけど、俺、日坂に用があるんだ。ちょっと、ここから退いてくれないか?」
淡々と紡がれた言葉。声はとても冷めていて、怖い。
明もその様子に気づいたようで、舌打ちをした後直ぐに屋上から出て行った。
「あ、ありがとう、牧野。」
明が屋上の扉奥へと消えていくのを見届けたあと、恐る恐る礼を述べる。牧野は、俺の方へと振り返り「どういたしまして。」と答えた。
そこには、牧野が先程明に対して向けていた冷たさがなかったため、俺は安堵した。
「隣、いいか?」
牧野が俺の返事を聞く前に、隣に座ってきた。
しばらく、沈黙が続く。
助けてもらったとは言え、明にされそうになったあの出来事を目撃されてしまったことと、俺が屋上に来るはめになった原因である牧野に教室でされたこととで気まずかったからだ。
キス、されたんだ。
それを思い出して、牧野の感触をも思い出して……
ああ、俺はどうしたらいいんだよ! てか、牧野も何か話せよ!
一人悶える俺。
沈黙にしびれを切らせた俺は、口を開いた。
「牧野、朝のホームルームは?」
空を仰ぎながら牧野は答える。
「サボった。」
「お前でも、サボるんだな。」
ちらりと向く、黒目。
「日坂が、気になったから。」
それだけ言うと、また黒目が上へと戻る。
「お、俺?」
「そうだ。キスしたら、逃げた。そうだろ?」
状況を、分かっている。俺も、牧野も。
「日坂は俺から逃げていったけど、嫌われた気がしなかった。だから、俺はあとを追ったんだ。」
気づかなかった……
「そしたら、お友達に引っ張られて屋上へ向かう姿が見えた。俺はとりあえず尾行した。」
「それじゃ、一部始終見られてたっことね。」
苦笑混じりに言うと、淡々と「ああ、そうだ。」と答えられる。
なんだ、全て見られてたのか。
まあ、そんなことは
もうどうでもいいや。
俺も牧野と一緒に、空を仰ぐ。
今日も晴れていて綺麗な青空をしている。
「日坂は、あいつのことが好きなのか?」
「へ?」
いつの間にか牧野が俺をじっと見つめていた。
「お、俺は明のことは友達だとしか思ってない。それに……」
近くにある牧野の顔をちらりと一目見る。
嗚呼、さっき牧野にキスされたときは大丈夫だったのにな。
「それに、さっき明からキスされかかったとき嫌だと思ったんだ。」
「……そっか。」
ゆっくりと、雲が流れていく。
「牧野、そろそろホームルーム終わるぜ。教室に行こう。」
立ち上がって牧野に手を差し伸べる。
「そうだな。」
俺たちは教室へと戻る。
深くは聞いてこない牧野に、俺は救われた。
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