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足りないもの 2にしおりをはさみました!
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足りないもの 2
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画面には、先ほどアドレスを交換したばかりの井成の名前が表示されていた。メールの内容に目を通した俺は困惑した。
”さっそくメールしてみた(笑)
明日、一緒に学校行こうぜ!”
冗談じゃない。朝早く誰も来ていない時間に学校へ行って、牧野と二人っきりでいることが俺にとっての楽しみなのに。それをも奪おうというのか。こういう時、どんな返事をすればいいだろうか。断るにしても、口実なんかない。牧野と二人だけにしてくれなんて言える訳ないし。
もともと、牧野とは待ち合わせしている訳でもない。ただ俺が、牧野に会いたくてやっていたことだ。
井成は俺とも友達になってくれる気らしい。けれども、その心遣いが逆に俺の胸を締め付ける。今まで牧野が他の奴と話している姿を見たことがなかったから、まるで自分だけのもののように思っていたのかもしれない。牧野だって人間なのだ。俺だけのものではない。
3人でいると、時々悲しくなる。苦しくなる。
牧野が井成と話しているのを見るだけで、俺が邪魔な存在なんじゃないかって思えてしまう。
「――っ」
なぜだろう。
涙が頬を濡らしていた。
震える手で、返信を打つ。
”俺朝早いし、一緒に行くと早起きすることになるぞ?”
感情とは裏腹に、明るく笑った顔文字も添える。
送信した後、きっぱりと断ることができなかった自分の性格を恨んだ。牧野なら、きっとはっきりと断るんだろうな。
皮肉にも、井成の返事は速かった。
”大丈夫。俺、朝強いから(笑)
じゃ、一緒に行こう。今日俺たちが別れたあのパン屋の近くで待ってるから。”
気が進まなかったが、俺は分かったと返事をしてしまう。
明日、また牧野とあまり話せないのかと思うと憂鬱だ。
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