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すれ違い 9にしおりをはさみました!
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すれ違い 9
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「だったら、何だ。それが俺とこいつとの間に何の関係がある。」
牧野は、無表情だった。けれども、その時の目はひどく冷たかった。
「お前も、いつかは日坂に捨てられるかもしれねーぞ? 俺みたいに。」
俺が……牧野を捨てる?
「まあ、俺みたいに一度見捨てられてても日坂にふさわしい人間になれば、そうはならないのかもしれないけれどな。日坂の恋人にふさわしいのはこの俺だ。だからさ、日坂を俺に頂戴。」
ちょっと待てよ。
井成のその自信がどこからやって来ているものなのかは不明だが、ピリっとした空気のせいか俺は何も言えない。牧野はふっと笑い出した。
「髪を染めて、多少話せるようになって、制服を着崩すことが、日坂にふさわしいと思っているのか? だとしたら、井成は日坂のことを分かってないな。」
牧野の自信もどこから来ているのか。
分からなかったが、牧野をじっと見つめて続きを待つ。
「形だけ合わせようとしてもダメだ。それに、井成がお前自身を失っているというのに魅力があるとでも思っているのか? 俺も自分自身に魅力があるかは分からないが、自分というものは常に持っているつもりだ。井成はそれをも放棄したんじゃないのか?」
無表情に、淡々と言葉を連ねる牧野。
井成の方は、さっきまであった余裕が消え去っている。
そして、止めの一言。
「日坂は、お前にやらない。生憎俺も、独占欲が強いものでね。」
その瞬間、井成の顔つきは険しいものになり、俺をチラリと見ると舌打ちをして荷物を持って出て行ってしまった。
ガタン
玄関の扉が締まる音が牧野の部屋まで聞こえた。
「……。」
「……。」
取り残された俺と牧野。お互いにお互いを見つめる。
牧野の鋭い視線に、目が離せない。
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