アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
俺×佐藤孝介にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
俺×佐藤孝介
-
「……あの、大丈夫ですか?」
「あっ、はい!いや、何もされてないんで!」
「え、でも……下半身出して近寄ってましたよね……あれ、もしかしてそういうプレイ、とか?」
「誰がそんな社会的ハードプレイするか!」
「あ、ですよね……」
ハッ、つい強めに突っ込んでしまった。
というか、そもそも暗い夜道、性別の変わった俺自身、向こうからしたら赤の他人だ。再会したからって何がどうなるでもないし、気づくはずもない。それならさっさと退散してしまおう。二度と会いたくない。
「ありがとうございました、それじゃ、俺はこれで失礼します」
「いや、送りますよ」
「大丈夫です!俺男ですし!」
「でも今、絡まれてたし……」
「家すぐそこなんで!」
何でこんなしつこいの!?!?
ま、まさかこいつホモだったのか……!?そういやクソほどモテるくせに彼女いる話聞いたことなかったな。
それとも、まさかこいつにも薬の効果があるのか?
「それでは!」
「待って、」
掴まれた腕、昔と変わらない手のひら。
以前もこんなことがあったのを覚えてる。
「ちょっと、聞きたいことがあって……人を探してるんです」
「はあ?」
「人気が嫌いだから、夜中によく出歩くんですけど……えっと、身長がこれくらいの女性なんですけど……ご存知、ないですか?」
「……それぐらいの身長の女性なんて、大勢いるじゃないですか」
「ああ……えーっと……館上左々、っていうんですけど」
ばっ、と腕を振り払った。
びっくりした佐藤孝介と目が合う。堪らず俺は走り出した。明らかに間違った判断だったけど、耐えられなかった。
俺は、私は、あいつが苦手だ。
「え……左々?」
佐藤孝介。
俺、いや、私の幼なじみ。
家が隣で、両親同士仲が良く、生まれた時から兄弟同然に育ってきた、というなんともコテコテな幼なじみ。
幼稚園、小学校、中学校、高校と一緒で、クラスもなんの陰謀かずっと同じ。
基本はぼんやりしていて口数はそんなに多くはないけど面倒見は良く、運動神経も良かったし勉強もできた。決断力もあり、協調性もある。今世紀最大の最高傑作、スーパーハイスペック男子、それが佐藤孝介。
私はこいつが苦手だ。
嫌いなんじゃない。苦手だ。
良心で動いてるのは分かってるし、なじみもあるから無下に扱うことは出来ない。
でも苦手だ。
なぜなら。
こいつが、どう考えても『タチキャラ』だからだ。
ドSキャラすらも懐柔してしまう圧倒的包容力!
ゲスキャラの歪んだ愛を受け止め、さらには諭してしまう倫理観!
クズキャラを更生させ真人間にしてしまう慈悲深さ!
弱点がない。
強いて言うなら「弱点がない」ことが弱点かもしれないけど、違うそういうことじゃない。
どう頑張ってもタチなのだ。
どんなに妄想を働かせてもヤツをひんひん言わせるに至る道が見つからない。
いや、可能っちゃ可能なんだけどでもさ、誘い受けとか、余裕受けみたいな感じになっちゃうじゃん?
俺は!!主導権を握りたいの!!!命運は我が手に欲しいの!!!
単純に言ってしまえば俺が独りよがりわがまま野郎、って事なんですけど。
とにかく、俺はあいつが苦手だ。
こんな状況を知られてみろ、「金がなかったらなぜ相談しない」だの「そんな怪しいアルバイトなんで受けた」だの「みだらな生活をやめろ」だの言ってきそうだ。いや、絶対言う。
もう二度と会いませんように、と心の中で一万回ぐらい願いながら俺は家へと帰った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 27