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No.12/モテ男にしおりをはさみました!
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No.12/モテ男
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「はぁ…。」
俺は多分ふられた、ため息が出る。隣を歩く桜井を見た。昨日は桜井の家に泊まったから、そのまま一緒に登校してる。
でも、全然口を利いてくれない。辛うじて、朝の挨拶をしてくれたけど。
「加賀ーっ。お早う。」
げ。うぜえのが来た。
能戸が当然のように俺の隣りに並ぶ。俺を挟んで、珍しく無口な桜井を見る。
「んーと、誰だっけ?」
能戸が聞いてくるけど、俺は教えたくなくて無視する。
「なあ、同じクラスなった事ねーよな。俺は、能戸儀一。名前教えて、」
「桜井真琴。」
桜井が短く答える。でも、なんか元気ない。どうしたんだ…。
「桜井、大丈夫か。具合でも悪いのか?」
無言で首を振って、下を向く。もう気が気じゃなくなって、その腕を掴んで顔を覗き込む。
「なんで、喋ってくんねーの!」
俺をちらりと見た桜井は、目をそらした。…おい、なんだよ。イラっとする。
「言いたい事あんなら、言わねーと分かんねえよ!」
あ、やべ!イライラがこもった刺々しい言い方になってしまった。
覗いてた桜井の口がへの字に曲がる。目にじわじわと涙が浮かんだ。
「えっ、どうして泣くんだ…ごめん。腕痛かったか、言い方がキツかったよな…。」
慌てて掴んでた腕を離す。桜井がグズっと鼻をすすり、手の甲で涙を拭う。
胸がきゅうぅとなる、…抱き締めたい。
俺はふらふら手を伸ばしそうになって、まずいまずいと引っ込めた。登校中だから周りに同じ学校の奴とかいるし。
「桜井、ちゃんと話してくれ。」
「…加賀が…やっぱりイヤ、…言わねー。」
ぷいっと顔を反らす。ええっ、言いかけて止めるとか、桜井の奴…何が何でも聞き出さねえと。
「…じゃあ、学校終わったら昨日泊まったお礼におごるから、一緒に帰ろう。」
「…うん。」
食べ物につられたのか、桜井が頷く。ほっとした。
「へえ。いいなー、俺もおごってよ。」
その言葉にハッとした。俺は間抜けにも、桜井に夢中で、すっかり能戸の存在を忘れていた。
迂闊だった。
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